「ウォンバット」が保護されるまで
自治体によっては、保護しても犬の人馴れがうまくいかず、譲渡会などに出ることができないまま猶予期限がきて、殺処分されてしまうワンコが数多くいます。
そんなことがあってはならないと、堺市動物指導センターが始めたのが“犬の馴化ボランティア”という制度。なかなか人に馴れない保護犬を、審査を経たボランティアに預けてトレーニングを行い、ある程度人馴れが進んだ段階で再び動物指導センターに戻してもらい、譲渡に繋げるという制度です。
特筆すべき点は、多くの人が殺処分を行う施設としてイメージされがちな「動物指導センター」「愛護センター」が、新たに「保護した犬を譲渡に出すための施設」に生まれ変わることを高らかに宣言したこと。そして、この制度のスタートに、ピースワンコは大きく関わることになりました。
ワンコの名は、「ウォンバット」。推定13歳。4年前に多頭飼育崩壊の現場から命を救われ、堺市動物指導センターに保護されました。すでにシニアを迎えていたウォンバットは、人を全く信用せず、触ろうとすれば逃げ回り、時には歯を見せることも。
堺市動物指導センターでは、保護犬を譲渡に繋げるために、これまで保護活動と同時にワンコたちの人馴れトレーニングも進めてきましたが、忙しい仕事の合間に行うトレーニングには限界がありました。
そこで白羽の矢が立ったのが、ピースワンコでした。不思議なご縁で結ばれた堺市とのタッグで、全国でも珍しい“馴化トレーニングボランティア“制度を立ち上げることになったのです。
保護犬の譲渡を進める新たな形。堺市×ピースワンコ”で仕掛ける新しい取り組みとは
ピースワンコが今回の堺市とタッグを組むことになった発端は、昨年、堺市に住むピースワンコの支援者からのお申し出でした。
「譲渡会をこちらで開きませんか?」
ピースワンコでは、保護犬を里親様に繋ぐため、様々な場所で譲渡会を開催しています。その会場探しは決して容易ではなく、今回お申し出のあった堺市は生駒譲渡センターからも近いことから、とてもありがたいお話しでした。
譲渡会は、5月に行われる市主催のイベントに決定。その打ち合わせを続けるうちに、堺市の職員の方が「せっかくなら、堺市動物指導センターと一緒にイベントに参加しませんか?」とお声がけいただき、動物指導センターの職員の方々とお会いすることに。そこで相談されたのが、なかなか人馴れが進まないワンコたちのことでした。
「堺市動物指導センターは、命の期限は設けない」と、大橋獣医師は言います。
「今は、老朽化している施設だが、近い将来、建て替えのときには、市民の方が、気軽に保護している犬や猫を見学に来て、触れ合えて、里親になりたいと希望してくださるような、オープンな施設にする」とのこと。
「保健所は、処分するところ、と思われているが、そうではない新たな形を示したい」
「最近は、飼い主が亡くなるなどして、行き場がなくなった犬、特にシニア犬を引き取ることが多いが、市民の方々に譲渡するために、尽力したい」
「現在、人馴れを全くしないシニアのワンコが3頭いる。このままでは、譲渡に繋げることができない。この子たちをなんとかしてあげたい。ご協力いただけないか?」
そうした思いを伺い、ピースワンコは全国殺処分ゼロを目指すための新たな取り組みとして、馴化トレーニングのためにウォンバットをお預かりすることになったのです。
ピースワンコは、広島県愛護センターから引き出した元野犬の人馴れトレーニングを行い、里親さんのもとへと命を繋いでいます。そこで経験を積んだ譲渡センターのスタッフたちも多く、全国8箇所あるセンターで、日々、ワンコたちのお世話とトレーニングを続けています。
今回、生駒譲渡センターのスタッフが、人馴れトレーニングを通して堺市に協力し、譲渡に繋げるお手伝いをすることは、ピースワンコにとっても新たな挑戦です。
ピースワンコで譲渡促進を担うマネージャー上谷祐実は、「お互いの得意分野を活かしながら、新たな行政との連携で、殺処分ゼロへ引き続き取り組んでいきたい」と話します。
「ウォンバット」トレーニングの成果は?
そして、ついにウォンバットは、4年間暮らした堺市動物指導センターを離れ、生駒譲渡センターへ移動することに。聞けば、健康チェックと共に、毛刈りもしたそう。果たして……
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