2023年10月26日

【遺贈寄付】故人の想いが込められた浜松譲渡センター

ひとりからみんなで

イギリスの音楽家のジョン・レノンは
「ひとりで見る夢はただの夢、みんなで見る夢は現実になる」という言葉を残した。
今回は、まさに彼の名言を体現したような話を綴りたい。

ピースワンコ・ジャパンは、全国で8か所目となる譲渡センター「ピースワンコ・ジャパン浜松譲渡センター」を、
静岡県浜松市に11月3日よりオープンする。
これは、犬を想う故人からの遺贈寄付で建てられた。
多くの選択肢があるなか、どのような理由でピースワンコ・ジャパンの譲渡センターに遺贈されたのか。
また、新しい施設での取り組みや今後の展望について、お話をうかがってみた。

 

犬のぬいぐるみと一緒に

昨今において、遺贈寄付先に犬を選ぶ愛犬家は少しずつ増えている。
子どもがおらず、相続先に悩んだ結果、たくさんの幸せをくれた犬という存在にできることをしたいと思う。
今回、ピースワンコ・ジャパンに遺贈寄付をした塩﨑さんも、きっと同じ気持ちだったのだろう。

彼女の遺言執行を担当した司法書士の鈴木敏弘さんは、言葉をひとつひとつ丁寧に選びながら、こう話してくれた。

「塩﨑さんは2022年に93歳でお亡くなりになりました。
認知症の症状もあったので、晩年は施設に入られていたんです。

そこでいつも持っていたのが、犬のぬいぐるみです。
ご病気の影響で気持ちが昂ってしまったときも、そのぬいぐるみを抱きしめると気持ちが落ち着いたそうです。
どんなときも肌身離さず一緒にいるくらい、塩﨑さんは犬が好きだったのでしょうね」

犬のぬいぐるみとともに施設での生活を送っていた塩﨑さん。
腕の中の「犬」という存在が、彼女の心の支えになっていたのだろう。

 

犬たちにできること

「塩﨑さんはお子さまがいらっしゃらなかったので、遺贈先に悩まれていました。
ご親族とも相談した結果、犬のために使うことを希望されたのです。
具体的な遺贈先は私がお調べし、ピースワンコさんが目に留まりました」

広島での小さな一歩から始まったピースワンコ・ジャパンの取り組み。
目の前の犬を救い続け、諦めずに世に発信してきた。
その結果、懸命な活動が多くのひとに注目されるようになり、今回のご縁に繋がったのだ。

「遺贈寄付による『浜松譲渡センター』で、救われる犬の命が増えると思うと、
少なからず塩﨑さんのお気持ちは反映できたのかなと思います」

鈴木さんは謙遜しながらも、ご自身の選択に納得した様子で話してくれた。
犬を愛する塩﨑さんの想いは、こうしてピースワンコ・ジャパンへと届き、
これからたくさんの犬たちを救っていくことになる。

 

東海で最大の取り組みを

そんな浜松譲渡センターの準備を早くから手掛けてきたのは、
譲渡センター全体を統括するマネージャーの上谷さん。
お住まいの岡山と浜松を毎週のように往復しながら、準備に明け暮れているそうだ。

「ピースワンコの譲渡センターは、これまで西日本と東日本がメインでした。
中間地点の東海にできるのは今回の浜松がはじめて。
今後は東海にお住まいの里親希望者さんとのご縁も繋がりやすくなります。
また、浜松市は、政令指定都市としては犬の飼育率が全国1位だそうで、
お散歩中、すれ違う時に優しく微笑みかけて下さる方が多く、
浜松譲渡センターのワンコも安心して過ごせると思うんです」

くわえて今回の浜松は、ピースワンコの譲渡センターのなかでも最大規模になるそう。

「土地が広いので施設内容も充実しています。たとえば、他にはない『室内ドッグラン』があるんです。
当施設のワンコ同士で遊んだり、人と触れ合うことで、コミュニケーションを学ぶことができます。
もちろん、見学者や里親希望者さんも、そこで一緒に触れ合ったり出来ますし、
里親希望の方の先住犬と、お迎え予定の保護犬との相性を見るときも使用可能です。

また、他の譲渡センターの収容頭数は多くても10数頭ですが、浜松は最大30頭ほど入れます。
そのほかにも、広島から関東にワンコが移動する時の中継地点として、彼らが休憩できる場所も用意していますよ。
実は、浜松の施設はもともとカラオケボックスだったので、防音設備がすでにできているんです。
そのため、犬たちも安心してより良い暮らしができるだろうと」

ピースワンコ・ジャパンが救う犬の数は実に多く、どうしても大きな土地が必要になってくる。
新しい浜松譲渡センターはその広さゆえに、今までできなかったことや悩みを払拭できる仕組みになっているのだ。

 

「静岡のワンコたちも救う」

浜松での新しい取り組みは、「犬の全国殺処分ゼロ」への新たな一歩だ。

「私たちの譲渡センターは全国にありますが、そこにいるのはすべて広島出身のワンコです。
広島で保護されたワンコは、お散歩トレーニングや人馴れトレーニングを経て譲渡センターに行き、新しい家族に出会っていきます。
本当はそれぞれのエリアのワンコも救いたいのですが、なにせ広島は殺処分数が全国ワースト1位だった県。
とにかく数が多いので、今までは広島のワンコだけで手一杯でした。
ワンコを救うには人の手やお金、場所も必要です。

しかし、今回の浜松は大きな施設ですし、私たちの活動の幅も広がってきました。
まずは、私たちができる範囲のことになりますが、広島県のワンコだけでなく、
静岡県で保護された子たちも、浜松譲渡センターでご縁を繋いでいく取り組みを考えています。
これは、私たちが目指す『犬の全国殺処分ゼロ』という目標に一歩近づいたということ。
ゆくゆくは日本全国にも手を広げられるよう、まずは、着実に取り組んでいきたいです」

 

苦労も超える

犬を救いたいという気持ちが言葉の節々に表れている上谷さん。
今後の活動に期待が高まる一方で、やはり苦労もあるのではないか。

「オープンに向けての周知活動は大変ですね。
東海にピースワンコが進出するのははじめてなので、
まずは私たちのことや譲渡センターについて、東海の方々に知ってもらうところから始める必要があります。
具体的には、SNSでの発信を積極的にしたり、フリーペーパーに広告を出したりしています。

ただ、最近は保護犬自体に関心を持たれる人が増えてきている印象ですね。
テレビで保護犬が取り上げられることもありますし、ピースワンコへのお問合せも少しずつ増えてきています。
とはいえ、まだ、『もう飼えないから引き取ってくれないか』という残念な連絡をもらうこともありますので、
家族として迎え入れた命は、飼い主が最期まで責任を持ってお世話することが当たり前になるよう、啓蒙活動ももっとがんばりたいです」

 

オープンに向けて

遺贈寄付をした塩﨑さん、そしてピースワンコ・ジャパンの想い。
さまざまな希望が込められた浜松譲渡センターのオープンはもうすぐだ。

「保護施設というとハードルが高く感じるひとは多いと思いますが、
浜松の施設は、『譲渡センター』です。
ここは、保護犬と里親さんを繋ぐ場所のこと。
ワンコにふれ合いに来るだけでも大歓迎なので、ぜひ気軽にお越しください。
外から人が来てくれるだけで、ワンコにとっては良い刺激になるんです。

譲渡専用の施設を持っている保護団体はピースワンコ・ジャパン以外ほとんどないそうだ。

「犬の保護事業は、個人や小規模で活動をされているか、シェルターと譲渡施設が一緒であることが多いと思います。
今後はこういった他の団体とも協力し合いたいと考えています。お互いに得意不得意を補いながら、日本全国殺処分ゼロという目標に向かって進んでいきたいですね」

かつて数万頭だった殺処分の犬の数は、現在約2700頭になった(環境省2021年度)。
ピースワンコ・ジャパンのゴールは確実に近づいている。

「ひとりひとりの想いが重なって、みんなの夢が叶う」

浜松譲渡センターのご案内

取材・執筆:青木桃子
ライター、編集者。愛犬はフレンチブルドッグのかわいい女の子。
製薬会社に勤務後、現在は雑誌やWebを中心に執筆活動をおこなう。
主に犬やからだ関係の記事を手がけている。

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