殺処分とは
環境省自然環境局の「動物愛護管理行政事務提要の「殺処分件数」の分類」によると、日本における殺処分の分類には、大きく分けて「譲渡することが適切ではない」ケースと、「それ以外」のケースの2つがあります。
まず、この見出しでは、それぞれのケースについて詳しく見ていきましょう。
譲渡することが適切ではないケース
譲渡することが適切ではないケースには、主に以下に挙げるものがあります。
- 負傷や病気等による苦痛が著しく、治療の継続が困難だと判断された
- 狂犬病予防法に基づく殺処分
- 収容中および譲渡後にほかの動物に危害を及ぼす恐れが高いと判断された
- 動物衛生又は公衆衛生上問題となる感染症等にかかっている場合
- 重篤な病気や著しい障害などがある場合
- 闘犬として訓練されていた犬でほかの動物や人に危害を及ぼす可能性があると判断された
何らかの事情により、譲渡することが「適切ではない」と、判断された場合に行われる殺処分です。
主に、病気やケガ、衛生上の問題などが理由として挙げられています。
また、飼い主などをよく咬んだ履歴を持つなど、攻撃性が高いと判断された場合でも殺処分されることがあるようです。
それ以外のケース
それ以外のケースとは、「譲渡することが適切ではないケース」には当てはまらないが、保管や譲渡が困難であると判断された場合に行われる殺処分です。
例として、以下に挙げるものがあります。
- 適切な譲渡先が見つからない場合
- 施設の収容制限など、物理的制限により飼育が困難な場合
- 大型などの理由により、適切な飼育管理ができない場合
よい飼い主が見つからない、施設で飼育ができないなどの理由により行われる殺処分です。
予算や人員などの制約により、1週間程度で殺処分を行うところもあれば、原則殺処分は行わない保護センターもあり、場所によって対応はさまざまなのが現状です。
殺処分の行われ方
現状行われている殺処分の方法は、注射による安楽殺や炭酸ガスによる窒息死です。
炭酸ガスの濃度調整が難しい場合は麻酔薬を使用とありますが、麻酔薬には安全確保が図りづらいなどの問題点があります。
また、経口投与麻酔薬も一部自治体で使用されていますが、動物用医薬品として認められていません。殺処分は、環境省の「動物の殺処分方法に関する指針」に従い、できる限り動物に苦痛を与えない方法で行うことが決められています。
しかし、殺処分の対象となる動物が多ければ、コストの観点からも炭酸ガスを利用せざるを得ない自治体が多くあります。
動物保護センターに収容される動物の数自体減少すれば、殺処分方法も見直されるかもしれません。
日本の殺処分件数はどれくらい?
日本では実際に、どれくらいの犬や猫が殺処分されているのでしょうか。
この見出しでは、環境省自然環境局の統計資料「犬・猫の引取り及び負傷動物等の収容並びに処分の状況」を参考に、犬の殺処分件数や保健所に引き取られる理由を見ていきましょう。
犬の殺処分件数は2,434件、猫の殺処分件数は9,472件
令和4年度の犬の引取り数は22,392件、そのうち返還・譲渡数は19,658件であり、殺処分件数は2,434件です。約10頭につき1頭の割合で殺処分が行われています。
しかし、平成16年度の場合、犬の引取り数は181,167件、そのうち返還・譲渡数は25,297件で殺処分件数は155,870件と、昔は殺処分件数のほうが多いことがわかりました。数字だけを見れば、今は殺処分件数が少ないように思えます。
しかし、昔は引取り数自体が多く、令和4年度と比べると158,775件もの差があります。
年々引取り数、殺処分件数は減ってきていますが、それでもまだ多くの犬が殺処分されている現状があることがわかりました。
なお、猫の令和4年度の引取り数は30,401件、うち殺処分件数は9,472件と、犬よりも猫のほうが引取り数・殺処分件数が多いことも、統計資料によりわかりました。
犬が保健所に引き取られる理由
次に、1年間で22,392頭もの犬が、保健所に引き取られる理由について見ていきましょう。
22,392件中、2,576件が飼い主からの引き取りであり、残りの10,870件が所有者不明のための引き取りであることから、約1割の犬が飼い主からの引き取りであることがわかりました。
「引越しがあるから」「仕事が忙しくなったから」など、飼い主による飼育放棄や迷子、所有者がいないなどの理由で、多くの犬が保健所に引き取られます。
犬をペットショップで購入するときは、「かわいい!」と思うかもしれません。ですが、購入前に必ず、「本当に飼えるのか?」どうか考えて、犬を飼うことの重要性や責務を正しく理解する必要があるでしょう。
殺処分を減らすために日本で行われている取り組みとは
日本では犬の殺処分件数を減らすために、多くの取り組みが行われています。処分件数には年々減少している傾向が見られますが、それでも毎年多くの犬が殺処分されていることに変わりはありません。
この見出しでは、自治体とピースワンコ・ジャパンで行われている、殺処分を減らすための取り組みを紹介します。
自治体の取り組み
神奈川県動物保護センターでは、「動物ふれあい教室」など、動物と多く触れ合える機会を設けることで、情操教育に取り組んでいます。
また、マイクロチップの普及啓発を行っているボランティアと協力することで、「犬の所有者」をできる限りわかるようにしているのも、殺処分件数を減らすことに繋がっています。
動物の返還率を上げるためには、動物たちに「所有者を明示」してもらうことが重要であると考えており、所有者明示の義務付けがない猫にも利用を促しています。
次に、東京都では、2016年に東京都知事に就任した小池百合子氏が「東京都での殺処分ゼロ」を掲げています。それにより、千代田区では「TNTA活動」を民間団体と協力して進めています。
※TNTAとは、Trap:捕獲/Neuter不妊・去勢手術/Tame人に慣らす/Adopt譲渡するの略です。
ピースワンコ・ジャパンの取り組み
ピースワンコ・ジャパンは2016年4月に、広島県で殺処分対象になった犬の「全頭引き取り」を行いました。
保護犬を収容するための土地は70,000平方メートル以上あり、なかには犬舎施設やドッグラン、老犬用施設や診療所などが完備されています。犬を安全に管理するために、充実した施設だけではなく、医療体制や人員体制など、多くのシステムを整えているのが特徴的です。
引き取った犬に対しては、シェルター内にある検疫施設に入れて健康管理を数週間行い、必要な予防接種を行ったあとマイクロチップを埋め込みます。すべての犬に対してカルテを作成し、予防接種やワクチン、投薬歴などの情報を詳細に記録することで、犬たちの健康管理に努めています。
保護した犬たちの新しい家族の募集を、ホームページ上で行っていますので、気になる人はぜひ一度内容を確認してみてください。
犬の殺処分件数は年々減少傾向にあるがゼロではない
犬の殺処分件数は、令和4年度の調査によると、引取り数22,392件に対して2,434件です。年々減少している傾向にはありますが、それでも年間引取り数に対して約2割の犬が殺処分されているのが現状です。
日本の殺処分件数を減らすために、各自治体や動物保護センターで、独自の取り組みを行っていることを知っておいてください。
ピースワンコ・ジャパンでは、殺処分のない世界をつくるために、犬たちの命を守る「ワンだふるサポーター」を募集しています。
1日約30円(月1,000円)から支援できて、ご支援いただいたお金は「新しい家族が見つかるための飼育」や「保護施設の拡充」「災害救助犬の育成」などに活用させていただきます。
1頭でも多くの命を救うために、ぜひご支援をお願いいたします。