ピースワンコのシンボルともいえる災害救助犬・夢之丞の成長を描いた初のコミックエッセイ「ゆめのすけが見た空」が、三栄書房から1月末に発売された。著者は漫画家の七色虹子さん。柔らかく生き生きとしたタッチで、動物愛護センターで殺処分されかけた夢之丞がビビりな性格を克服し、救助犬として活躍するまでの「奇跡」を描く。
夢之丞を主人公にした本は、過去にも3冊が出版された。最初は広島土砂災害をきっかけに書かれたノンフィクション「命を救われた捨て犬夢之丞」(2015年4月発売、金の星社)、2冊目が天国にいる猫の視点で語られる「いのちをつなぐ犬夢之丞物語」(2016年4月発売、静山社)、そして3冊目が300枚近い写真を中心に構成された「夢YUMENOSUKE」(2016年7月発売、双葉社)だ。ピースウィンズ・ジャパン(PWJ)は、いずれも取材協力や写真提供などの形でかかわった。
殺処分をなくす取り組みのなかで、私たちが長い目で見て特に重視しているのが子供の教育だ。三つ子の魂百までというように、小さいころに命の大切さや思いやりの心を知れば、長じて犬や猫を捨ててしまうような人間にはならないと考えるからだ。
ただし、年間の殺処分が何万頭という数字を出しても、人と動物の共生が大切だと教訓めいたことを話しても、それだけでは子供の心に染み込まない。一方、殺処分から生還して「人の命を救う」という使命を背負った夢之丞は、自らのストーリーを通して何よりもわかりやすく、大切なことを伝えてくれる。
今回の企画は昨年春に持ち込まれた。8月には著者が広島県神石高原町へ取材に訪れ、以後はシナリオづくりから作画まで順調に進んだ。漫画だけでなく、ピースワンコの活動や災害救助犬の訓練などについて紹介する7本のコラム、保護犬譲渡センターの情報なども盛り込まれている。
今は世界史や伝記などの硬派な話も、まずは漫画が関心の入り口になる時代。コミックエッセイという形式は親しみやすく、人の感情に強く訴えかけてくる。私自身、デフォルメされた自分の姿に気恥ずかしさを覚えつつ、恐怖に怯えていた夢之丞が少しずつ普通の犬らしさを取り戻す過程をあらためて読むと、思わず涙ぐみそうになった。
「ゆめのすけが見た空」は、定価1080円(税込)。印税の一部がピースワンコの活動に寄付される。PWJのオンラインショップなどで購入できるほか、今後、電子書籍としての販売も予定されている。ぜひ多くの方に読んでいただきたい。
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捨て犬から災害救助犬に 夢之丞の物語がコミックに
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