「シュン」は2021年の8月に動物愛護センターから保護されてピースワンコにやってきました。
当時、推定2歳位だった「シュン」は、神石高原シェルターで健康状態を整えて人馴れトレーニングを経た後、家族を探すために2022年の1月に生駒譲渡センターへ移動してきました。
移動してきて間もない頃、スタッフが「シュン」を散歩に連れ出すと、リードをグイグイ引っ張りながら楽しそうに歩きました。でも突然振り返ってスタッフを見て、「おまえは誰だ!なんでオレのリードを持って引っ張るんだ!?」と言っているかのように、警戒心むき出しで逃げようとすることがありました。また、ハーネスを着ける際に頭や手を持つとき、嫌がって歯を当てようとしたこともありました。
スタッフは少しでも「シュン」に嫌なイメージを植え付けないように、オヤツを使ったり、手を持たなくて良いハーネスを使ったり、色んな工夫をしながらお世話を続けました。
ある日、センターの真ん中のリビングと呼ばれる広い部屋で数頭の犬と過ごしているとき、スタッフが「シュン」を撫でていた手にふいに擦り寄ってきてくれた事がありました。そのまま撫でていると。「シュン」は体重を掛けるように甘えて来てくれ、そこから私たちの距離は一気に縮まりました。
犬同士遊んでいても、そこにスタッフが入ると犬より人に寄って来たり、スタッフ同士で話していると絶妙なタイミングで「フゥン…」と鼻を鳴らし相槌を入れてみたり、散歩中もしつこいくらい笑顔でアイコンタクト!撫でているとお腹を出したり、犬舎に入ると人にぴったりくっついて顎を乗せて寝るようになったりと、どんどん「シュン」の甘えん坊で可愛いところが見えるようになりました。
ただ、人が好きすぎて逆に困ったことも起こりました。我慢できるはずの排泄を部屋でしてみたり、執拗に手足を舐めて一か所だけハゲてしまったり…。全て人の気を引くための行為であり、愛情不足のサインでした。スタッフも「シュン」のことは大好きだけどセンターのみんなのお世話もあり、ずっと「シュン」だけを構うことが出来ない。早く「シュン」だけの家族を見つけてやりたいという気持ちがより一層強くなりました。
そんな時にセンターの見学に来られたのがシュンの未来のご家族でした。一度は帰られたもののやはり「シュン」が気になって再度会いに来てくださり、「シュン」も最初からお散歩も上手に歩けて、手からオヤツももらったり、撫でてもらうことも出来ており、めでたくご家族に迎えてくださることとなりました。
とはいえ元々は怖がり野犬の子。里親様にも環境が変わることでまた少し神経質になってしまったり、人に対しての警戒心は出てしまうだろう…とお話していました。そんなスタッフの目に飛び込んできたのは、譲渡後2日目にして床に座っている里親様に自ら寄っていき気持ち良さそうに撫でられる「シュン」の安心しきった寝顔が映った動画でした。
これは正真正銘、「シュン」自身の「成長」です。
場所が変わってまだあまり馴れなていないはずの家族に、こんな風に甘えられる事が出来るなんてスタッフが思っていた以上の成長でした。
里親様も譲渡までに「シュン」が少しでも早く馴れるようにと、お家の匂いのついた毛布やたくさんのぬいぐるみを持ってきてくださったり、何度も会いに来て触れ合ってくださり「シュン」に寄り添ってくださいました。本当にシュンを想い寄り添ってくださる、まさに理想のご家族に巡り合うことが出来ました。
「シュン」に限らず他の卒業したワンコ達も、スタッフが聞いて驚くような成長を遂げる子はたくさんいます。
いつも思うのは、どの子も成長出来る可能性は無限大だと言うこと!
「成犬だから懐かない」「この子は一生人を好きになることはない」時々、元野犬の子を見てそんな言葉を聞くことがあります。ですが、決してそんなことはありません!
「シュン」の場合は成長のペースが少し速かったですが、ペースがゆっくりな子もたくさんいます。「シュン」は小さい時に保護されていたこともあって甘える方法を知っていましたが、そもそも「人に甘える」という表現方法を知らないだけの子もたくさんいます。
スタッフは日々のお世話を通してワンコが人に対して少しでも、良いものだ、好きだ、と思ってもらえるよう愛情たっぷりに接しています。
それでも私たちがいつも思うのは、本当の家族の愛情に勝るものはないということ。
だからこそ、どのワンコも一生涯家族の一員として大切にされるように、そして最期の時までずっと一緒に居てもらえるようにと、心から願って送り出しています。
全てのワンコとそのご家族が幸せになれるよう願いながら、私たちは今日も、そしてこれからも頑張って活動し続けます!