「殺処分が多い国はどこなのか」「殺処分が少ない国はあるのだろうか」と疑問を抱く方もいるのではないでしょうか。
日本にも動物愛護法が定められていますが、動物保護先進国と言われる国と比較すると日本は遅れているのが現状です。
しかし、一人ひとりが動物愛護を意識することで、殺処分の減少に貢献できます。
本記事では、日本の殺処分の現状や、動物保護先進国と言われる国々の保護活動の内容を解説します。
また、殺処分から犬を救う方法もご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
殺処分が多い国?日本の現状
日本にも動物愛護法が定められており、人間と動物が共存できる社会を目指し、定期的に改正が行われています。
2019年6月の法改正では、以下の内容に改正されました(注1)。
- マイクロチップ装着の義務化
- 生後8週未満の子犬や子猫の販売禁止
- 動物虐待の罰則の引き上げ
日本が殺処分の多い国なのかを知るために、まず日本の現状を把握しましょう。
(注1) 動物の愛護及び管理に関する法律等の一部を改正する法律の概要|環境省
ペットの殺処分数の推移【日本】
全国の保健所や動物保護センターで収容されている犬や猫は、飼い主が見つかれば返還や譲渡をされますが、それ以外は殺処分の対象です。
環境省が令和3年度に発表した調査によると、日本で引き取られた犬は約2万4000頭。そのうち殺処分となった犬が約2700頭います(注2)。
(出典:全国の犬・猫の引取り数の推移|環境省)
年々減少傾向で推移していますが、いまだ殺処分はなくなっていません。
(注2) 犬・猫の引取り及び負傷動物等の収容並びに処分の状況|環境省
殺処分の行われ方
日本の保健所に収容されている犬や猫には、保護する期間が決められています。
それは収容できる施設に限りがあるため、保護数を制限しなければならないからです。
保護期間内に引き取り手が見つからなかった犬や猫、また病気や攻撃性があるなど譲渡することが適切ではない場合も、殺処分の対象です(注3)。
日本で行われている殺処分の方法は、主に炭酸ガスによる窒息死や薬による安楽死です。
環境省はできる限り動物に苦痛を与えない方法を求めており、それにより殺処分の方法を検討する自治体も増えています。
日本の殺処分の現状を知りたい方は、こちらをご覧ください。
➤ 日本の犬の殺処分の現状とは?殺処分ゼロを目指す対策など解説
(注3) 動物愛護管理行政事務提要の「殺処分数」の分類|環境省
殺処分が多い県ランキング3県
環境省が発表した令和3年度のデータによると、殺処分が多い都道府県のランキングは以下のとおりです(注4)。
犬 | 猫 | 犬と猫の合計 | |
1 | 長崎県(341頭) | 福島県(760頭) | 福島県(868頭) |
2 | 愛媛県(260頭) | 奈良県(557頭) | 長崎県(826頭) |
3 | 香川県(238頭) | 長崎県(485頭) | 愛媛県(659頭) |
殺処分ゼロの自治体を増やすためには、各自治体や保護団体などの積極的な取り組みが必要です。
また、ペットの飼い主やペットを飼いたい人はもちろん、各々が動物愛護に対する理解を深めることも重要でしょう。
(注4) 犬・猫の引取り及び負傷動物等の収容並びに処分の状況|環境省
殺処分が多い国の理由とは
ペットを保有している人が多いと「生活状況が変わった」「自分で飼育することが困難になった」など、さまざまな理由でペットを手放す人の数も増えてしまいます。
それに伴い、保護施設では手放されたペットを収容するスペースを確保するために、一定期間で殺処分を行っていく必要があるのです。
日本でも以前と比較すると減少傾向ですが、今でも捨て犬や迷い犬が保健所に収容される現状は続いています。
殺処分数の多い国ランキング
海外では殺処分数を公表していない国が多く、明確な殺処分数の多い国ランキングが存在しません。
2013年度のアメリカの殺処分数は約270万頭とされています(注5)。
ただ、2016年の犬の飼育頭数を比較すると、日本は約987万頭に対して、アメリカは約8970万頭と、日本の約9倍の犬が飼育されています(注6)(注7)。
先ほどのペットの保有数と殺処分数の関係からすると、ペットの保有数が多いアメリカのほうが殺処分数が多いといえるでしょう。
(注5) 諸外国における犬猫殺処分をめぐる状況|国立国会図書館
(注6) 平成28年(2016年)全国犬猫飼育実態調査結果|一般社団法人 ペットフード協会
(注7) 各国の動物の飼養及び管理に関する法規則等の概要|環境省
動物保護先進国とは
動物保護先進国とは、動物に関する法律や動物と一緒に暮らせる環境が整っている国のことです。
動物先進国の取り組みには、以下の共通点があります。
- 動物を守るための法整備
- 動物と一緒に快適に暮らすための生活様式の構築
- 子犬の販売ルートや飼育環境
- 公共施設での扱い
- アニマルポリスと呼ばれる動物の警察官が存在
先進国では動物は人間の都合に合わせて飼うのではなく、動物の権利を尊重したうえで、人間と同等に扱うことが重視されています。
そのため、日本の動物愛護法では法的に禁止されていないことまで定められているのです。
また、動物保護団体の活動が盛んであり、団体・個人合わせて多くの人がボランティアに参加しています。
日本も、一人ひとりが動物愛護に関する意識をもっと高める必要があるでしょう。
殺処分が少ない国の犬を保護する活動
殺処分が少ない国として、以下の7か国をご紹介します。
- ドイツ
- イギリス
- オーストラリア
- スウェーデン
- デンマーク
- ニュージーランド
- スイス
これらの国は動物先進国と呼ばれており、動物の権利や人間と共存するための法律を定めています。
犬や猫を飼う際も、日本ではペットショップから迎えることが多いですが、動物先進国ではブリーダーか動物保護施設から迎えるのが一般的と考えられています。
各国の取り組みを見ていきましょう。
ドイツ
ドイツは「ティアハイム」と呼ばれる保護施設が多く存在する国です。
ティアハイムでは1頭につき1部屋が与えられ、施設内には訓練場や病院なども併設されているため、犬の健康と安全がしっかりと守られています。
啓蒙やPR活動が盛んなことから、多くの動物たちが新しい飼い主に引き取られているのです。
基本的には殺処分を行わないことを定めていますが、治癒の見込みがない傷病で苦痛を感じていると獣医師が判断した場合には、安楽死させることもあります。
ドイツには以下の法律があり、飼い主が法律に違反し改善が見られない場合には、犬は強制的に没収され、保護施設に引き取られます。
- 犬の大きさや犬種によって、ケージやサークルの大きさが定められている
- 犬だけを長時間留守番させてはいけない
- 外気温が21度を超える場合、車内に犬を置き去りにしてはいけない
- 1日最低2回、合計3時間以上、屋外へ連れていかなければいけない
ドイツと日本の殺処分の違いに興味がある方は、こちらをご覧ください。
➤ ドイツでは犬の殺処分をしない?日本との対応の違いについて紹介
イギリス
イギリスはヨーロッパのなかでも特に動物愛護が進んでおり、動物の飼育や販売に関する厳しい法律が定められている国です。
- 8週未満の子犬や子猫は絶対に購入してはならない
- ペットにしつけ以外で不必要な苦痛を与えてはならない
- 飼い主は十分な食事や水、運動の機会を与え、脱走防止に配慮しなければならない
- ペットを遺棄してはならない
また、飼育に関する内容だけではなく、ブリーダーや販売業者のルールも定められています。
- ペットショップで犬や猫を販売してはいけない
- 子犬の売買はブリーダーの元で対面式で行わなければならない
- ブリーダーは購入者に母犬と子犬を一緒に見せなければならない
さらにペットショップも法律により完全許可制で、ライセンスを持っていないペットショップでは店頭販売が禁止されています。
オーストラリア
オーストラリアは動物の権利を守る法律を定めている国です。
法律の内容は州によって異なり、動物愛護の意識が高いものもあります。
- マイクロチップを装着すること
- 去勢/避妊手術をすること
- ペットは必ず登録すること
- 犬猫ともに各家庭に最大2匹まで
- ペットショップで犬や猫の販売をしてはいけない
- ドーベルマンのしっぽを切ってはいけない
- サーカスに野生動物を出演させてはいけない
- 鶏を狭いケージで飼ってはいけない
- 牛をロープできつく縛ってはいけない
オーストラリアには動物を殺処分する施設がなく、多くのアニマルシェルター(動物保護施設)があるため、飼い主のいない動物はアニマルシェルターに収容されます。
スウェーデン
スウェーデンは、人間と同様に動物も自然な行動をとれる環境作りを意識した独自の動物保護法を持つ国です。
- ケージ内で飼育しないこと(車移動の際は例外で、一定時間の休憩を取る)
- 室内で飼育する際は、部屋の大きさ・光が入る窓・空気の清浄度を確保すること
- 室外で飼育する際は、体高や頭数に合わせた犬小屋にすること
- 6時間に一回は散歩させること
- 留守番の時間は6時間までにすること
- マイクロチップを装着すること
- 社会的な接触を与えること
また、スウェーデンでは人間と動物が共存しやすい環境が整っています。
- どの物件でもペットと一緒に暮らせる
- 犬・猫が乗車可能な公共交通機関がある
- 犬を預けられる幼稚園のような場所がある
ちなみに、ペット保険を初めて導入したのがスウェーデンであり、加入率は世界一です。
デンマーク
デンマークも動物の立場にたった法律を持つ国です。
- 犬を外で飼育しないこと
- やむを得ず外で飼育する場合は、強い日差しや悪天候に対応できる犬小屋を設置すること(犬が窮屈に感じない十分な広さが必要)
- 子犬は最低8週間、母犬や兄弟のそばで過ごすこと
- 新しい飼い主は子犬が心身ともに健康的に成長できるような環境を維持すること
- 飼い主は子犬が生後8週になる前に、その犬がデンマークの犬登録に登録・タグ付けされているかを確認すること
デンマークの動物福祉法では、飼い主は動物に苦痛を与えない生活環境を提供することが求められています。
ニュージーランド
ニュージーランドは動物先進国のなかでも特に飼育率が高い国です。
- 排泄物は飼い主が必ず処理をすること
- マイクロチップを装着すること
- 十分な食事、水、住まいを与え、常に監視下に置くこと
- 必要なだけの運動をさせること
- 歩道や子供の遊び場などでは犬をリードにつなぐこと
- 飼い主は自治体に犬を登録し、転居時は転居先で再度申請すること
動物が健康的な暮らしができることに加え、人間と動物が共存するために守る必要があることも定められています。
スイス
スイスは動物先進国のなかでも、最も厳しい動物保護法を定めている国です。
- マイクロチップを装着すること
- 犬を販売する際は販売者の名前や住所、犬の血統などの詳細を明記すること
- 小動物(モルモット、ウサギ、インコなど)を飼う際は2匹・羽以上で飼育すること
- 猫を飼う際は毎日接する時間を確保すること
動物を守るために繰り返し議論や国民投票が行われ、定期的に法律が見直されることで、規制の強化につながっています。
殺処分から犬を救うためにできること
殺処分から犬を救うためにできることは、以下のとおりです。
- ペットショップからの購入をしない
- 動物保護団体を支援する
動物先進国にもペットショップはありますが、主にペット用品やペットフードなどの販売として機能しています。
また、動物保護団体の活動が盛んなため「譲渡会」が活発に行われており、団体・個人合わせて多くの人がボランティアに参加しています。
自分にもできる取り組みの一つとして、ぜひ参考にしてください。
ペットショップからの購入をしない
犬を迎える際はペットショップから購入するのではなく、保護される期間が決められている保護犬を引き取ることで、殺処分の対象となる犬を減らせます。
日本でも里親制度が広がりつつあるものの、まだペットショップからの購入が多いのが現状です。
ペットショップからの購入以外に犬を迎える方法には、以下ものが挙げられます。
- 動物保護施設から保護犬を迎える
- 専門のブリーダーから迎える
- 友人や知人から譲り受ける
犬を迎えたいと考えた際は、このような方法を検討してみてはいかがでしょうか。
動物保護団体を支援する
殺処分から犬を救うためには、動物保護団体の活動が欠かせません。
しかし保護犬の飼育には、里親が見つかるまでの食費や医療費、施設の維持費、災害救助犬の育成、啓発活動など、さまざまな運営費用がかかります。
そのため、動物保護団体の活動を支えるためには、寄付が求められるのです。
ピースワンコ・ジャパンでもさまざまな活動に取り組んでおり、里親として引き取りが難しい場合でも以下の方法で保護犬を支援できます。
内容 | 料金 | |
ワンだふるサポーター | 月額で寄付を行い、継続的に保護犬の飼育をサポートし、犬たちの命を守れるシステム | 1日約30円(月1000円)から |
ワンだふるファミリー | 高齢や病気、障害などの理由で家族に恵まれない犬を遠方から支援できるシステム | 一口(1パウ)=月3000円 ※犬1頭が1ヶ月暮らすためには最低10パウが必要 |
また、ピースワンコ・ジャパンを運営するピースウィンズ・ジャパンは「認定NPO法人」であるため、寄付は税制優遇の対象です。
控除額は所得やお住まいの地域によって異なるため、詳しくは税務署や自治体にお問い合わせください。
ワンだふるサポーターに興味がある方は、こちらをご覧ください。
➤ ワンだふるサポーター特設ページ
ワンだふるファミリーに興味がある方は、こちらをご覧ください。
➤ ワンだふるファミリーとは
殺処分が多い現状から脱却するためには支援が必要
殺処分が多い現状から脱却するためには、動物の権利を守り、人間と動物が共存できる社会作りが求められます。
動物先進国では当たり前に取り入れられていることも、日本ではまだ浸透しきれていないことが多くあります。
自分にもできることの一つとして、殺処分から動物の命を守るために支援を始めてはいかがでしょうか。
ピースワンコ・ジャパンでは、里親や寄付も受け付けております。
興味のある方は、ぜひご検討ください。