2024年3月11日

避難所でペットと一緒に過ごすには?同伴避難の受け入れ状況と課題

令和6年能登半島地震の発災後、ピースワンコ・ジャパンは、ペットを連れている方のための避難所を開設しました。
本記事では、ペットと一緒に避難所で過ごす「同伴避難」について、珠洲市での受け入れの状況、ピースワンコ・ジャパンでの取り組み、同伴避難のための備えについてご紹介します。

また、ペット同伴避難所の様子についてまとめた動画もありますので、ぜひご覧ください。

 

ペット同伴避難とは

そもそもペット同伴避難とは、”飼い主がペットと一緒に避難生活を送ること”を指します。
災害によって家屋が倒壊し避難所への避難が必要になった場合に、ペットも同じ避難所の中で暮らすことができます。

同行避難とは|似ているが異なる言葉

同伴避難と関連する用語としてペットの「同行避難」があります。
同行避難は、”ペットを連れて避難所まで一緒に移動する”という、避難行動を指します。
避難所内に一緒に入ることは意味していないという点で、同伴避難とは異なります。

環境省の人とペットの災害対策ガイドラインには、同行避難を促す文言があります。
ペットが原因で避難が遅れてしまうことを避けるため、政府としても、ペットを連れて避難所に向かうことを推奨しています。

ペット同伴避難の現状

令和6年能登半島地震においては、同行避難をされる方は多くいらっしゃいました。
どのご家族も、ペットだけを連れて着の身着のままで避難されていました。

しかし、避難所の中でもペットと一緒に過ごす同伴避難は、まだまだ実施されていない状況がありました。

同伴避難が可能とされている避難所でも、飼い主の方が周囲の方々に気を遣い、苦労されている場面が多く見られました。
他の被災者やペットに対して吠えてしまう、動物が苦手な方・アレルギーを持っている方がいらっしゃるなどのリスクがあるためです。

ペットを連れた方は、避難所の玄関などの狭くて寒いスペースで暮らしたり、中には、周囲への気遣いが負担となったため車中泊を選択した方もいました。

同伴避難の可否は市区町村や避難所の決定に委ねられていますが、多くの避難所で曖昧な判断がされており、被害状況や避難所に訪れている方々の様子によって左右されていました。

そのため、ある避難所では、同伴避難をされていた方が退去するよう指示されたケースもありました。
はじめは同伴避難を許可していた避難所が後から禁止に変更したことで、路頭に迷う飼い主の方々もいらっしゃいました。

ペット同伴専用の避難所を開設

このような状況を受け、ピースワンコ・ジャパンでは、石川県珠洲市指定避難所の一部に「ペットを連れている方専用の避難所」を開設しました。
珠洲市・日本レスキュー協会と共同で取り組み、計画開始から約10日で開設に至りました。

建物の中に複数のテントを建て、それぞれのテントの中に毛布、布団、クレートやケージを設置しています。
テントで仕切られているため、通常の避難所と比べてプライバシーが守られる作りになっています。

飼い主の方にペット専用の避難所を利用してもらうことのメリットを、今回の事例をまじえてご紹介します。

周囲に気を遣わず過ごせる

一番のメリットは、周囲の方々に気を遣わずリラックスして過ごせる点です。
ペット同伴避難所にはペットを連れた方のみが宿泊しているため、ペットの吠え声やにおいなどを気にせずに過ごすことができます。

寒さや狭さも軽減できるほか、ペットもテントの周辺をある程度自由に移動できるため、ペットのストレス軽減にも役立っています。

大型犬も安心して暮らせる

小型犬と比べて同伴避難が受け入れられづらい大型犬を連れていても、問題なく暮らせることもメリットです。

ペット同伴避難所には現在(2024年2月26日時点)約6世帯が入られ、飼い主さんとそのご家族の方々10名と、各ご家庭のペットたちが暮らしています。

ペットの種類はバラバラですが、ワンちゃんの場合はラブラドールレトリーバーやダルメシアン、ゴールデンレトリバーなど、大型犬を連れた方が多くなっています。
また、もちろん猫ちゃんを連れた方もいらっしゃいます。

ペットフードやおもちゃなどの物資も充実

また、ペットとの暮らしに必要な物資を手に入れやすい環境でもあります。

一般的な避難所ではペットのための物資は後回しにされてしまうことが多く、なかなか物資が届かない、十分な数量がないというケースが見受けられます。

ペット同伴避難所では、支援品として複数種類のペットフード、おやつ、おもちゃ、トイレシートなどを用意。
少しでも暮らしが楽になるようサポートを行っています。

日頃から同伴避難に備える

今回はペット同伴避難所を開設することができましたが、今後の災害発生時に必ず開設できるとは限りません。
現地でペット同伴避難の様子を見てきたスタッフから聞いた、ペットとの避難に必要な備えについてご説明します。

ケージ・クレートに入れるよう習慣づける

災害発生後は、避難所での暮らしや移動のためにペットをケージやクレートに入れなければいけない場面が多くあります。
いざというときにペットがスムーズにケージに入れるよう、日頃から慣れさせておくようにしましょう。

特に、外で飼われているワンちゃん、屋内で自由に動き回るネコちゃんはいきなり狭いスペースに入れてしまうと嫌がり、それがケガや脱走に繋がってしまうこともあるため注意が必要です。

物資を準備しておく

ペットフードやお水、リード、首輪など、最低限暮らしに必要なものの準備は欠かさないようにしましょう。
前述している通り、ペットに関する物資の提供は人間のための物資よりも遅くなることが多いため、それぞれ1週間分は用意しておけると安心です。

また、ペットが持病を持っている場合は日頃から薬を多くもらっておく・療法食を多めに用意しておくと良いです。

事前に避難所に問い合わせる

近隣の指定緊急避難場所・指定避難所が同伴避難を可能としているかどうか、前もって確認をしておくことも重要です。
いざというときに慌てなくて済むよう、もしHPなどに記載がない場合は事前に問い合わせておきましょう。

今後も現地のニーズに合った支援を

ピースワンコ・ジャパンでは、今後も現地の飼い主さんなどから状況を伺い、以下を含め必要な支援を行っていく予定です。

ペットの日中預かりを実施

ペット同伴避難所と合わせて、日中の時間帯にペットを専用のケージに預けておける仕組みである”日中預かり”も行なっています。
珠洲市では「わんにゃんデイケアハウス珠洲」を開設しました。

被災者の方のうち、日中は学校や仕事のために外に出られる方や、家の片付けや役所での手続きを行う必要がある方などを対象に実施しています。

わんにゃんデイケアハウス珠洲について紹介している記事もご覧ください。

同伴避難をされていない方でも物資を取りに来られるように

また、ペット同伴避難所で配布している物資は、避難所を利用されていない方でも取りに来ていただけるよう、市のHPなどでもお知らせしています。
近隣で在宅避難をされている方でも、ペットフードや、消耗品である猫砂を受け取ることができます。

自治体や他の支援団体との連携

また中長期的な備えとして、各自治体や、ピースワンコ・ジャパン以外の動物保護団体との連携も一層強化していきます。

今回の地震でもあったように、自治体の取り組みだけではペットの支援まで手が回らない・ニーズを把握しきれないといった状況が今後も想定されます。
いざというときにペットや飼い主の方が少しでも安全・快適に過ごせるよう、避難所の開設や物資支援などについて、意見交換や体制準備を進めてまいります。

終わりに

今回の地震でわかったように、ペット同伴避難が可能な避難所はまだまだ少ない状況です。
また、ペット同伴専用の避難所もほとんど事例がなく、今後の災害発生時に都度開設されるとは限りません。

同伴避難を含め、ペットを連れて避難するための備えを日頃から忘れないようにしましょう。

※2024年2月26日時点の情報をもとに作成しています。

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▽Readyfor支援ページ(カード決済での支援)▽
https://readyfor.jp/projects/helpnoto_for_animals

▽Yahoo!ネット募金ページ(Tポイント寄付も可能)▽
https://donation.yahoo.co.jp/detail/925073


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