ピースワンコが能登半島地震で被災した石川県珠洲市と連携して開設したペット同伴避難所。現在も6世帯が避難生活を続け、最近では2次避難から家の後片付けをするために、一時的に珠洲に戻られる方が短期で滞在するケースも見られるようになりました。
また、日中にペットを預かる「わんにゃんデイケアハウス珠洲」では、ワンコとニャンコを合わせて7〜8頭くらいのペットが毎日集まっています。仕事や家の片付けでお出かけする際に預けらる方をはじめ、なかには今後の仮設住宅での暮らしを見据えてケージでの生活に慣れさせるためにペットを預けられる方もいました。それぞれに事情や思いを抱えながら、被災者の方々は少しずつ前へと進んでいます。
このペット同伴避難所と「わんにゃんデイケアハウス珠洲」に、「りく・なつ同室避難推進プロジェクト」のアンバサダーを務める、歌手の伍代夏子さんが来訪されました。
「犬は避難所に入れないから。だからここで生活するしかない」
伍代さんが「りく・なつ同室避難推進プロジェクト」をはじめた原点は、13年前の東日本大震災のこと。孤立集落での炊き出しボランティアを行った際に出会った、ある若い女性との会話だったといいます。まだ4月の肌寒い日だったにも関わらず、服装はゴム草履に短パン。その横には、ゴールデンレトリーバーがいました。
話を聞いてみると、犬を洗っていたら地震に遭い、さらに津波に襲われて必死に山に向かって避難。その後は30人くらいの被災者と一緒に、集落の家で避難生活を続けていたそうです。「なんで避難所には行かないの?」と聞くと、女性はこう答えました。
「犬は避難所に入れないから。だからここで生活するしかない」
伍代さんはこの言葉を忘れることができず、災害が起きる度に被災地の方々と、一緒に暮らすペットたちはどうしているのだろうと考えるようになったといいます。そしてご自身が20数年ぶりに犬を飼い始めたことをきっかけに、伍代さんは本格的に「ペット同室避難」を推進していく活動を始めることになりました。
プロジェクトは、昨年7月にスタート。13年前に直面した「犬は避難所に入れない」という現実に対し、「犬と一緒に入れる避難所」の開設を推進していくためにはどうすればよいのか、模索していた段階でした。そうした活動のさなかに起きた今回の能登半島地震。思い描いていたペット同伴避難所の実態を見てみたいと、今回の来訪が実現しました。
「人とペットが安心して、同じ室内に避難できる社会へ」
大規模災害では、発災直後はなんとか避難し、せっかくつないだ命を、その後の長引く避難生活の負担が原因で死に至ってしまう「災害関連死」が大きな問題になっています。ペットを飼っている方にとっては、ペットと一緒に暮らせない状況は大きな不安となり、それはペットにとっても同じことです。
また、ペットは避難所に入れないことから、余震で二次被害のリスクのある半壊した家に残り、避難生活を続けている方や、車中泊で生活する方も少なくありません。なかには、本当にやむなくペットを放してしまう方も。
伍代さんは、そうしたニュースを聞く度に、こころを痛めていました。ペット同室避難所の必要性について、伍代さんは次のように答えています。
「動物アレルギーを持っている方や、そもそも犬や猫が苦手という方もいます。その方々にとっては、もしも犬が避難所にいたら大きなストレスになるでしょう。でも、ペットを飼っている方にとっては家族の一員ですから……。ただでさえ先行きの見えない不安のなかで避難生活をしなければいけないときに、家族と一緒に暮らせないことはもっと深い不安を抱えることになります。最初から通常の避難所とは別に、小さくてもペットと一緒に暮らせる避難所があれば、両方の方にとって安心できるはずです」
すべての被災者が少しでも安心して避難生活を続けられるように。この願いを込めて、伍代さんは、積極的に自治体を訪問して話し合いの場を設け、もしも災害が起きた有事には、ペットも一緒に入れる避難所を開設することを訴えてきました。
同時に伍代さんは、飼い主に向けて、プロジェクトのサイトを通じて日頃から災害に対して備えることの大切さと、実際に災害に遭ったときにどうすればよいのか、防災や避難する際に具体的に取るべき行動といった情報なども発信しています。
突如訪れる災害に備えて
人とペットが安心して、同じ室内に避難できる社会へ
これは、「りく・なつ同室避難推進プロジェクト」のサイトのトップページに書かれたメッセージです。伍代さんは今回、被災地への訪問を通して倒壊した家屋や、液状化で地盤が隆起した道路などを目の当たりにし、炊き出しで被災者に触れ、あらためてこの想いを強く感じたそうです。
ピースワンコは、“人もペットも誰一人取り残さない支援”を理念に、2016年4月に起きた熊本地震に続き、今回の能登半島地震の被災地でもペット同伴避難所の開設と、デイケアのペット預かり支援を続けてきました。
伍代さんのプロジェクトはまだスタートしたばかりですが、その想いは強く、ピースワンコの願いと共通しています。被災地で人もペットも安心して過ごせる場所をつくるために、ピースワンコはこれからも被災者に寄り添い、できる限りの支援を続けていきます。
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