2024年4月26日

【令和6年能登半島地震ペット支援】メイちゃん、避難所から3ヵ月ぶりに我が家に帰る

1月28日、珠洲市に開設されたペット専用同伴避難所にやってきたラブラドールのメイちゃんとご家族。4月に入り避難所を訪ねると「家に戻ることになりました」との報告がありました。我が家への“引っ越し”は、桜が満開を迎えた4月13日。少しずつ家を片づけながら準備を進め、避難所での最後の掃除を終えた飼い主さまに、メイちゃんと離れることなく一緒に暮らした避難所生活について、お話を伺いました。

めいちゃんとお母さんとワンコスタッフ

本当は長い夢の中にいて、いつか目が覚めたら全部夢なのではないか

メイちゃんとご家族

「これまで災害のニュースをみても、どこか他人事で、自分には起きないことだと思っていました。起きてほしくないからこそ、そうした考えになるのでしょうけれど、でも本当にこんなことが現実に起きるなんて……本当は長い夢の中にいて、いつか目が覚めたら全部夢なのではないかと、未だにそう思っています」

震災を振り返り、飼い主さまはそう話してくれました。

ペット同伴の避難所に来る前は、小学校の避難所で生活。明確にペット禁止といわれたわけではなく、ただ「犬が苦手な人もいるのではないか」「アレルギーの人がいたらどうしよう」と想像してしまって避難所に入ることができず、周囲の目を気にしながらも玄関先の隅っこに場所を借りて暮らしていました。

特に発災直後はどの避難所も混乱し、常に人が行き交う玄関先で、ご家族もメイちゃんも落ち着いて寝ることはほとんどできなかったといいます。その後、学校も再開して子どもたちも頻繁に通る玄関先はいづらくなり、空き家を探しても「ペットはだめ」と断られ、どうすればよいか、途方に暮れていたときにこのペット同伴避難所が開設されました。

断水は続き、ほかの避難者の方々との共同生活など、多くの不自由があることに変わりはありません。しかし、同じ悩みを抱えていた仲間が集まるペット同伴避難所の生活は心地よく、少しずつご家族もメイちゃんも安心して眠れるようになったといいます。

避難所でのメイちゃん

飼い主さまのご自宅は「半壊」。全壊は免れたものの2階は雨漏りするため、屋根にはブルーシートを敷き、必要なものはすべて1階に避難。1階の床も所々損傷して不安定なため、修理する必要があります。

週末の時間を利用して少しずつ家のなかを片づけるたびに、「家を建て直すか、修理して家に戻るべきか」悩み続けましたが、4月に入ってようやく水が通るようになったことを機に、家族でじっくり話し合った結果、家に戻ることを決めました。

メイにとってもいろいろなことがあったこの避難所には、たくさんの思い出が詰まっている

メイちゃんとまるちゃん

「ワンコ仲間同士、気兼ねなく、いろいろ情報交換などもしながらお互いに助けあって生活してきました。メイが手術したときにも、いろいろな方が一緒に心配してくれて支えていただき……家でひとりでいたらどうしていいか分からず、ただオロオロしていたと思うので、この環境にめぐり合えたことに、本当に感謝しています」

飼い主さまがいなくなると鳴いていたメイは、避難生活中なかなか入ることができなかったゲージにも入れるようになり、「わんにゃんデイケアハウス珠洲」でお留守番もできるように。

このとき、ピースワンコスタッフがメイの体に“しこり”があることを発見。念のため検査をするために腫瘍部分を病院で摘出する手術をしてもらったことがありました。

お母さんは、涙が止まらないほど心配で仕方がなかったのですが、避難所のペット仲間をはじめ、いろいろな方から励まされ、「麻酔から起きたらおしっこをもらすかもしれないから、タオルを敷いておいたほうがいいよ」「手術したところをメイは舐めたりかいたりしてしまうかもしれないから、いらなくなったTシャツを着せてあげるといいよ」など、術後のアドバイスもたくさんもらいながら、気持ちを落ち着かせることができたそうです。

おねだりをするメイちゃん

「メイもこの3ヵ月でだいぶ変わりました。トレーナーの方にみていただいて無駄吠えが減ったり、言うことをきくようにもなったり、なによりいろいろな人にかわいがっていただいて、社交的になりましたね。メイにとっても、本当にいろいろなことがあったので、家に帰れるのは嬉しい反面、離れるのが少し寂しい気もしています。ここには、本当にたくさんの思い出が詰まっています」

メイちゃんは、発災当時パニックに陥ったため、息子が抱きかかえて避難。そのトラウマが残っていたのか、最初は家に入りたがらず、躊躇していました。しかし、足の踏み場もないほど散乱していた部屋は片づけられ、恐る恐るにおいをかぎながら思い出したのか、少しずつ、ゆっくりと我が家に入っていったそうです。

この街は本当に復興できるのか、営みが消えてしまうのではないか

隆起したマンホール(珠洲市)

家に帰れることはとても幸せなことのはずですが、不安も大きいといいます。

「このペット同伴の避難所に来たとき、生活は劇的に変化しました。けれどそれからはというと、正直、ほとんど変わっていません。むしろ避難所を管理されていた行政の方も撤退して避難所は自分たちで運用することになったり、自衛隊の支援も含めて炊き出しなども少しずつ回数が減ってきたり、どちらかというとマイナスの変化のほうが大きかったかなという印象です」

主要な道路は修復された一方で、大きな道路から少し横に入るとマンホールは地面から飛び出したように隆起し、倒壊した家屋の多くはそのままの状態で、まるで時が止まったかのように震災の傷跡が残っています。何よりも水道インフラの被害は壊滅的で、4月に入ってもほとんどの家で水がまだ使えない状況が続いています。ご家族は、破壊された街の光景を見ると、「もし時間を戻せるのならば戻ってほしい、戻りたい」と、今でも願うそうです。

しかし、失ったものがたくさんある一方で、被災したことで知り得た良いこともあったといいます。

瓦礫の集積所前で咲き乱れる満開の桜(珠洲市)

「家族だけだったら悲しくてつらくて、露頭に迷っていたかもしれません。この3ヵ月を振り返って一番に思うのは、本当にいろいろな方に助けられたこと。人って本当に温かいなとさまざまな場面で感じました。もうひとつ、自然から怖い思いはしましたけれど、ふと海を見ても山を見ても、珠洲は美しいところだということに、あらためて気づきました。おだやかな空気がながれ、四季のうつろいがあります。被災して、普通ではなくなったからこそ、ゆっくり考えたり、まわりを見たりすることができ、珠洲の良さを再発見できたように思います」

この街は、本当に復興できるのか。人がいなくなって、営みがなくなってしまうときが来るのではないか。次、地震が起きたら、我が家は耐えられるのだろうか。不安は尽きません。それでもメイちゃんのご家族は、この愛おしい故郷で生活を再建していく「覚悟」を決めました。

「メイと一緒に過ごせる場所があったことで、私たち家族は本当に救われました。この3ヵ月間は、震災のショックから立ち直り、生活を再建するための準備期間だったような気がします。その立ち直るきっかけと、前を向く覚悟を、周囲の人々とこの避難所がやさしく支えてくれました。メイと一緒に我が家に帰って、少しずつ、ゆっくり、日常を取り戻していきたいと思います」

最後に、飼い主さまはこう話してくれました。

\能登半島地震 ペット支援へのご寄付にご協力お願いいたします/

幸いめいちゃん一家はご自宅に戻ることができましたが、家が全壊してしまい、避難所生活が続く方もいます。ペット専用避難所は、そうした被災者の生活の場としてこれからも提供され、ピースワンコが運営するわんにゃんデイケアハウスの支援も、もうしばらく継続することになりました。ピースワンコは、これからも被災者に寄り添い、できる限りの支援を続けていきます。

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