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念願の九州初拠点
2024年7月13日(土)、ピースワンコ初の九州拠点となる「福岡譲渡センター」が、福岡県大野城市にオープンする。
現在、ピースワンコの譲渡センターが展開しているのは、広島、岡山、奈良、静岡、東京、神奈川の6都県8ヶ所。
9ヶ所目となる福岡譲渡センターを拠点に、ピースワンコはどのような活動を展開していくのか。
また、そこは実際にどのような施設で、どのような人が働いていくのか。
プロジェクトリーダーの安倍誠さん、同センター店長の本川咲子さんに、お話をうかがった。
九州以西の窓口として
「福岡に譲渡センターをと構想し始めたのは、数年前から。同地での譲渡がようやく可能になり、いよいよ九州での活動がスタートできます。まずは広島のシェルター出身の犬たちの譲渡活動が中心になりますが、徐々に福岡で保護した犬たちも増やしていきたいですね」
そう話すのは、ピースワンコ全体の活動を取りしきる、プロジェクト・リーダーの安倍さん。
「これまで九州各地からも、里親希望の問い合わせを多くいただいてきました。ただ、広島から遠く、譲渡を迅速に進められない現状があったんです。九州にまず一つ拠点ができれば、全7県で効率的に譲渡活動が進められる。また、福岡県はいわば九州の窓口で、人口も最大。この地で活動することによって、さらに多くの人に保護犬という存在を認知してもらえるのではと考えています」
殺処分の多い地で
令和4年度の九州での殺処分頭数は、環境省の発表によれば500頭を超える。
県による偏りはあるが、全国での頭数が2434頭であることを考えれば、非常に多い。
まず目指すのは、福岡県での「殺処分ゼロ」。
さらに目指すのは、九州全体での「殺処分ゼロ」。
そのための活動は、すでに動き出している。
「3月、4月に福岡県動物愛護センターから1頭ずつ保護し、広島のシェルターでトレーニングを行いました。1頭はすでに広島譲渡センターで里親さんに迎えられて卒業。もう1頭も福山市の譲渡センターで譲渡活動中です。この子たちの保護は、福岡の保護団体『ハッピースマイル』さんと連携し、引き出しを行ってもらう形で実現しました。殺処分ゼロを実現するためには、その地域で活動を続けてこられた保護団体や個人の方、自治体との協力が不可欠。福岡では、そういった方々と協力して、譲渡会などのイベントも行っていく予定です」
福岡の子を引き出し、福岡で譲渡を
さらに7月4日には、ピースワンコが直接、福岡市東部動物愛護管理センターから1頭のワンコを引き出し、福岡譲渡センターでトレーニングと譲渡活動を行っていく。
「ガウガウ噛もうとする気性難の子ですが、これから確実に変わっていけます。人が大好きな甘えん坊になって、譲渡センターから卒業し、幸せになれるはず。「全国殺処分ゼロ」と言うと、すごく大きな話に聞こえますが、それを実現するのは、こういった1頭に対しての活動の積み重ねなんです」
福岡譲渡センター案内
では実際に、福岡譲渡センターは、どのような施設なのだろう。
同センターの店長を務めるのは、本川咲子さん。
神石高原の検疫シェルターにチーフとして勤務した後、一度ピースワンコを離れ、福岡譲渡センターのオープンを機に復職した。
ここからは施設の概要と、店長を務める本川さんのストーリーをご紹介していこう。
好アクセスで、散歩環境も良好
同センターが位置するのは、高速道路と御笠川に挟まれた商工業地域。
太宰府IC、水城出入り口にも近く、西鉄天神大牟田線「白木原」駅からも徒歩圏内と、県内外から好アクセスの立地だ。
2階建ての建物の1階には、犬舎に加え、里親希望者さんや先住ワンコが保護犬と過ごせる触れ合いスペースとなる室内ドッグラン、2階にもワンコたちが休む犬舎などを備える。
「犬舎数は16。オープン時には、福岡県の愛護センターから引き出したワンコも含めた10頭ほどのワンコが、ここで家族を探し始めます。歩いてすぐの御笠川の河川敷は、ワンコたちとのいいお散歩コースになりそうですよね」
屈託ない笑顔で、センターの紹介をしてくれる本川さん。
オープンに向け、準備に勤しむ真最中だ。
「13(土)〜15日(月・祝)の3連休には、オープニングイベントとして『保護犬ふれあい会』を開催します。まずは『保護犬』について知ってもらえることが大事なので、何か催しをやっているな、くらいのお気持ちで、ぜひ気軽に足を運んでいただけたら嬉しいです」
風通しのいいセンターに
皆さんが足を運びやすいセンターにしていきたい。
本川さんは明るい表情で、そう続ける。
「里親さんたちが引き取ってくださった後も、しっかりアフターフォローができ、何かあればすぐ相談してもらえるような場所にしたいんです。一緒に働くスタッフにとっても風通しのいい、働きやすい環境を作っていきたいですね」
思わず訪れたくなる、温かく開かれた場所。
福岡譲渡センターは、きっとそんな施設になる。
オープン前ながら、そう想像してしまうのは、本川さんの柔らかな雰囲気と、静かにみなぎる保護犬への情熱ゆえ。
そう思わせてくれる本川さんだが、出身は動物関連の学校ではなく、福祉系の大学なのだそう。
福祉の道と、保護犬への想い
幼い頃から補助犬の訓練士を目指していた本川さんは、盲導犬の歩行指導員に必要な資格のため、福祉系の大学に入学。
卒業後、ピースワンコに入職した。
「実家で、野犬から生まれた子を飼っていたんです。でも、ピースワンコで関わるワンコたちは、その子とも、抱いていた『人懐こい犬』のイメージとも全く違って驚きました。それでも、怯えていた子が徐々に人に慣れて、甘えられるようになって、家族を見つけて卒業していく。それが本当に嬉しくて、奥深さとやりがいを感じたんです」
本川さんが勤務していた検疫シェルターは、保護された犬たちを最初に受け入れ、病気や怪我の検査や治療をする施設だ。
「野生動物のように人慣れしていない子や、病気の子、妊娠している子、高齢で介護が必要な子もいるシェルター。健康管理や日々のお世話、介護、チーフとしてのスタッフの業務管理などが、主な仕事でしたね」
高齢者福祉の現場で
充実した日々を送っていた本川さんだが、ある気持ちが高まり、ピースワンコを一度退職する。
「大学の実習で経験した高齢者福祉の仕事に従事してみたいと、3年ほど前にピースワンコを退職し、デイサービスでの仕事に携わってきました。ただ、保護犬との触れ合いが次第に恋しくなってしまって……。そのタイミングで、福岡譲渡センター店長のお話をいただいたんです。やはり保護犬に向き合う仕事がしたい! と思い、復職を決めました」
コミュニケーションの人
トレーニングや里親さんへの対応を、これからさらに磨いていきたい。
そう語る本川さんのお話をうかがいながら、まさに適職なのではないかという感情が、ふと湧きあがる。
シェルターでもデイサービスでも、本川さんはずっと、相手に対して丁寧に、じっくりと向き合ってきたのだ。
「福祉の仕事は、利用者さんと深いコミュニケーションが取れていないと、うまくいかないんです。譲渡センターでも、里親候補さんとのコミュニケーションはとても重要。心から信頼していただける存在になっていきたいです」
その姿勢は、犬たちに対しても、スタッフに対しても、通ずるもの。
犬たちが家族に巡り合い、幸せになれるように。
保護犬を迎えるという選択肢が、当たり前になるように。
ワンコやそこで働く人々に会いに、譲渡センターへ足を運ぶ。
その一歩がきっと、犬たちの未来を変えていくのだ。
取材・執筆:林りん
ライター、編集者、イラストレーター。シニアの愛犬が相棒。インバウンド向け情報メディアの編集部に勤務後、フリーに。雑誌やライフスタイル系WEBマガジンでの編集・執筆、企業オウンドメディアのデレクション、コピーライティング等を行う。近年はイラストレーターとして、出版物の挿絵やノベルティグッズのイラスト等も手がける。
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