全国の保健所(動物愛護センター)には犬や猫がたくさん収容されており、飼い主が見つからなければ殺処分されてしまう現状があります。今回この記事では、殺処分とは何か、ドイツと日本の殺処分の違いについてなどを詳しく解説します。犬の殺処分を減らすために、私たちが知っておくべきことやできることを、ぜひ本記事で参考にしてください。
犬の殺処分とは
全国の保健所には、たくさんの犬が収容されています。飼い主が見つかれば「返還」され、新しい飼い主が見つかれば「譲渡」されますが、それ以外は殺処分されます。犬が殺処分されないために、1匹でも多くの命を救うべく返還や譲渡につとめていますが、日本ではまだ殺処分数が多いのが現状です。
保健所に犬が収容される理由は、飼い主から世話ができなくなったというものもあれば、捨てられてしまった犬が近隣住民に迷惑をかけている、野犬が人間の生活圏に出てきて捕獲されるなどさまざまです。動物の対処に困っているという捕獲依頼などを受けて、保健所が犬や猫の引き取り業務を行っています。
ドイツが行っている殺処分ゼロの施策
日本の現状を見ると、殺処分ゼロという目標は決して簡単ではありません。しかし、殺処分ゼロを国単位で達成している国があります。
ドイツで行われている「ティアハイム」とはどんな施策なのか、詳しく見ていきましょう。
ティアハイムとは
「ティアハイム」は、ドイツ語で「保護施設」という意味です。民間の動物保護協会が運営している施策であり、ドイツ国内に500ヵ所以上存在しています。
ドイツ動物保護連盟は、ティアハイムの運営において、基本的に殺処分してはならないと定めています。年間で約1.5万頭ものさまざまな動物がティアハイムに保護されており、そのほとんどの動物たちが、殺処分されることなく新しい飼い主に引き取られているのです。
なお、動物福祉の観点から、治る見込みのない傷病に苦しんでいる場合は獣医師の診断のもと、安楽死させる場合もあります。
日本の犬の殺処分の実態
2019年度の年間殺処分数は、犬5,635頭・猫27,108頭です。過去10年間の推移をみれば、殺処分数は減少していますが、それでもまだ多くの動物たちが殺処分されている現状があります。
では、日本ではどのように殺処分が行われているのでしょうか。
日本の殺処分の行われ方
現状、日本で行われている殺処分の方法は、注射による安楽死か炭酸ガスによる窒息死が主です。環境省の「動物の殺処分方法に関する指針」に基づき、可能な限り化学的・物理的方法を用いて、動物に苦痛を与えない方法で殺処分することが定められています。
環境省の「犬・猫の引取り及び負傷動物等の収容並びに処分の状況」の、保健所に来る前のペットの所在の内訳を見ると、飼い主からが占める割合は犬10%。残り約90%は所有者がわからない現状があることから、迷子犬や捨て犬そして野犬が大半を占めていることがわかります。
過去10年を見ると殺処分数は減少している
殺処分は、ペットに関するもっとも深刻な社会問題の1つとして取り上げられています。
しかし、2019年度の年間殺処分数は、犬と猫を合わせると約3.3万頭もの動物たちが殺処分されていますが、10年前の2008年の年間殺処分数は約27万6千頭。現在は、約24万件も殺処分数が減っています。
過去と比較すれば、殺処分数は大きく減っていますが、依然として年間4万頭もの動物たちが殺処分されている事実は受け止めなくてはいけません。
犬の殺処分が減少している背景とは
現在と比較して犬や猫の殺処分数が大きく減っている背景には、2012年より随時改正されている「動物愛護管理法」が挙げられます。動物愛護管理法とは、すべての人が「動物は命あるもの」であることを認識し、人間と動物がともに生きていける社会を目指すために作られた法律です。
保健所に多くの犬が収容される理由の1つに、「引越し先で動物が飼えない」や「飼ってみたら大変だった」などの飼い主の身勝手な理由があります。しかし、動物愛護管理法の改正により、飼い主の安易な理由での申し出は拒否できるようになりました。
さらに行政と、ピースワンコのような民間団体の協力が進んだことも大きく影響しています。地方自治体が運営する保健所は、引き取った動物を保護し続けることは困難です。民間の保護団体と協力し、保護した動物をトレーニングし譲渡に繋げる、譲渡会を共同で開催するなどの取り組みが進みました。 これらの結果により、日本における殺処分数が減少してきたといえるでしょう。
日本が犬の殺処分で今後取り組むべき課題
日本が今後、さらなる殺処分数の減少に向けて取り組むべき課題は、下記で挙げる2点がポイントです。
1:引き取られるペット、野犬の数を減少させること
2:引き取られたペット、野犬を殺処分させないこと
ペットや野犬が保健所に引き取られる原因は、飼育放棄や飼い主が高齢で飼育しきれなくなった、野犬が山から下りてきて怖いという通報があった、などさまざまです。
ただ可愛いからという理由だけで気軽に犬を飼うのではなく、責任をもってペットを飼うことが大切であることをしっかりと伝えていかないと、飼育放棄につながる恐れがあります。
また、結果として保健所に引き取られたペットが殺処分されないためにも、より行政と民間団体が連携し積極的な返還・譲渡活動ができる環境を整えることが大切です。
まとめ
日本では現状、年間32,743頭もの殺処分が行われています。過去に比べると殺処分数は減ってきてはいますが、今後もっと殺処分数を減らすための施策を講じる必要があります。
ピースワンコ・ジャパンでは、日本全国から犬の殺処分ゼロを目指すべく、保護犬の人馴れトレーニング、そして里親を探す活動などを行っています。殺処分ゼロを実現するためには、みなさまからのご支援が必要です。また、殺処分数は、保護犬を家族に迎えることでも減ります。ペットを飼いたいと思ったときに、少しでも保護犬を迎える選択肢を持っていただければ幸いです。