保護犬を迎えるとき、「保護犬を飼うのは難しそう」「元野犬でも馴れてくれるのかな」等といった不安を持たれる方は少なくありません。
面会にお越しいただいても、緊張して犬舎や触れ合いスペースの隅で固まってしまうワンコも多く、ビビりな子は緊張しすぎて脱糞してしまうこともしばしばあります。馴れたら甘えん坊になってくれる、と分かっていても怖がっている姿を見ると「本当に大丈夫かな…」と不安になるお気持ちは、私たちスタッフもとてもよくわかります。保護犬を迎えていただいたあとも、ワンコが里親様や新しい環境に慣れるのには時間がかかります。
福山譲渡センターから卒業した「ムクロ」もそんな怖がりなワンコの一頭でした。「ムクロ」の性格やペースを受け入れて可愛いとおっしゃって家族に迎えてくださり、楽しみながら信頼関係を築いてくださっている里親様と「ムクロ」をご紹介したいと思います。
「ムクロ」は2019年7月に推定6ヶ月の時に保護され、ピースワンコにやってきました。神石高原シェルターでの人馴れトレーニング経て、福山譲渡センターへ里親募集のために2021年7月16日に移動してきました。初めはスタッフにもなかなか心を開かず、クールで落ち着いた子なのかな?と思っていると、急に尻尾を振って遊びに誘ってくる、甘えん坊な男の子でした。
福山譲渡センターのInstagram で「ムクロ」を見て一目惚れして、福山譲渡センターへお問い合わせをくださったのが今の里親様です。「ムクロ」と面会していただき、人見知りをして固まっている姿や、お散歩のときに出会う人や車など様々なものに怖がりながら一生懸命に歩いている姿、「ムクロ」のどんな姿を見ても「可愛い!」と仰ってくださいました。
ご家庭の事情で、すぐに「ムクロ」を迎えることが出来なかった里親様は、少しでも「ムクロ」に馴れて欲しいとの思いから、お散歩ボランティアに登録してくださり、週に一度、福山譲渡センターでボランティアをしていただくことになりました。そしてご自身が迎えられるようになるまでの間に、もし他の方からお声がかかったらそれはご縁なので仕方ない、と仰ってくださいました。
「ムクロ」は、毎日お世話しているスタッフでさえも馴れてくれるまで少し時間がかかった子です。週に一度のペースでボランティアに来てくださる里親様に馴れるまでかなり時間がかかりそうでした。でも「ムクロ」がスタッフに甘える様子を見ていた里親様は、「いつか自分にも甘えてほしい」と仰って、いつも笑顔いっぱいでお越しくださり、めげずに「ムクロ」と向き合い続けてくださいました。
里親様と一緒にお散歩する「ムクロ」。少し尻尾が上がったり、表情が柔らかくなったり、段々と緊張せずにお散歩ができるようになっていきました。里親様は「ムクロ」の少しの変化でも嬉しそうに話してくださるので、私達スタッフも喜びを一緒に体験させていただけて嬉しかったです。
そして、2022年7月13日。約5ヶ月のボランティア期間を経て里親様の迎える環境が整い、「ムクロ」は里親様の元へ卒業していきました!
「ムクロ」は里親様の家族になって半年経った今でもクレートが自分の落ち着ける場所のようで、お部屋ではほとんどクレートに引きこもっているそうです。でも、ボランティア時代に苦戦していたお散歩は、いまでは「ムクロ」から里親様とコミュニケーションを取りながら、尻尾を上げて楽しそうに歩いているそうです。
「ムクロ」を迎えることを最後まで諦めず、怖がりな「ムクロ」に向き合ってくださった里親様に簡単なQ&Aにお答えいただきました。
A.当時はペット禁止の賃貸住宅に住んでいたのですが引越しの可能性が出てきたので、保護犬を迎えることを夫婦で話し合って問い合わせました。ピースワンコさんのオンライン譲渡会のファンだったので、お迎えするならピースワンコさん!と決めていました。
Q2.なかなか心を開かない「ムクロ」を諦めず、ずっとボランティアで通い続けてくださったのはなぜですか?
A.緊張したり怖いことがあると地蔵モードでじっと耐える「ムクロ」が可愛かったし、「ムクロ」を触りまくれるのが嬉しかったし楽しかったんです。他の子とお散歩できるのも楽しかったです。
Q3.ボランティアで「ムクロ」に接する時、心が折れそうになることはなかったですか?
A.なかったです。デレてはくれなくても楽しい片思いでした(笑)
Q4.お迎えしてから心境や生活の変化はありましたか?
A.とにかく可愛いです。ワンコを迎えたらしっかり主導権を握らねばと思っていましたが、散歩時間は「ムクロ」に合わせてどんどん延長しているし、ご飯やオヤツの予算も右肩上がりです(笑)
Q5.今1番気をつけていることはなんですか?
A.お迎えから5ヶ月ですが、まだまだ信頼関係構築中なので、慎重派な「ムクロ」のペースや思考してる時間を待ってあげられるように気をつけています。「ムクロ」には、のびのび生活してほしいなと思っているのでこちらもおおらかに接していきたいと思っています。
Q6.これから保護犬を迎えたいと考えられている方にお伝えしたいことはありますか?
A.保護に携わった方々が愛情をたくさんかけてくれた子たちです。養子やお婿さん、お嫁さんを迎えるつもりで、受け止めてください。どんな境遇から保護された子でも、愛情を受けた子はみんな天使ですよ。
ワンコ一頭一頭の性格や個性によって、接し方や生活スタイルは変わります。でも、どの子もきちんと向き合えば必ず応えてくれます。不安なことや大変なことは勿論あるかと思いますが、それも含めて保護犬を迎えて良かったと思っていただけるよう、私達スタッフもしっかりサポートしていきたいと思います。保護犬と暮らしてみたいなと思ったら、是非シェルターや譲渡センターに足を運んでみてくださいね。