寄付をいただくということ

活動のため、不可欠なもの

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行き場のない犬たちを全頭保護し、ケアとトレーニングを施して、家族を見つける。
その活動を積み重ね、他の団体や個人と連携し、日本全体での殺処分ゼロを達成する。
ピースワンコ・ジャパンの活動と目標は、きっと「善い行い」だ。
そのビジョンが清廉と思えるからこそ、気になりつつ、聞きづらいこともある。
それは活動を支えるため、ビジョンを達成するため、現実として必要不可欠なもの。
そう、ピースワンコ・ジャパンにとってのお金について、お話をうかがってみたい。

 

叶える力を集める

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現在ピースワンコ・ジャパンの活動はすべて、会員費や単発支援、
ふるさと納税等による寄付金でまかなわれている。
それらを集めるための業務、いわゆるファンドレイジングを担当しているのが、コミュニケーション部だ。
2019年よりその部長を務めるイ・チャンウさんは、温かい表情を湛えつつも、迷いのない口調でこう話す。

「社会にとってどんないい事業でも、資金がなくては達成させることも、持続させることもできません。
私たちコミュニケーション部の中心となる役割は、活動に共感しご寄付をいただけるよう広く働きかけ、
できるだけ多くの支援を集めて、現場に届けることだと思っています」

 

寄付への第一歩として

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コミュニケーション部では、寄付を募るための広報活動から問い合わせ窓口、
寄付の決済ツール管理など、寄付金に関するすべての活動を担当している。
その中でもイさんが特に重要視しているのは、SNSやYouTube、
ホームページをはじめとする広報だ。

「私たちにとっての広報は、単に寄付を募るための広告ではなく、
殺処分の実態やワンコたちの置かれた状況を知ってもらうための周知活動でもあると考えています。
まずは現場の様子や、殺処分の実態を知ってもらうこと。
それによって問題に気づいた方が、初めてピースワンコに寄付をしてくださったり、
あるいは地元の団体を応援したいと思われて、そちらを支援されるケースもあるかもしれません。
もちろん、ピースワンコを支援していただけるとありがたいですが、
いずれにしても、日本全体としての殺処分ゼロを目指す、
何らかの活動に繋がればという気持ちで取り組んでいます」

 

問題に社会の目が向くように

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ボランティア精神というよりはプロフェッショナルとして、
資金を集めて現場に届け、且つ殺処分ゼロというアジェンダを社会の目立つところにまで押し上げる。
それが大切なミッションなんです、とイさん。

「広報において最も注目しているのは、二つの数字です。
ひとつは、皆さまからのご寄付がどのくらい集まっているか。
もうひとつは、SNSやYouTubeでのサイト滞在時間です。
投稿に興味を持って見続けてくれる方が多いと、比例して寄付も集まりやすい傾向があるんですね。
ですから、この数字をできるだけ上げていけるよう努めています」

 

苦い経験

数字を重要視するのには、経験に基づく理由がある。
2011年から2017年まで、イさんはピースウィンズ・ジャパンのスタッフとして、
国内外の難民支援や緊急支援に奔走してきた。
その中で、資金を持続的に確保することの重要性を目の当たりにしてきたという。

「緊急支援から中長期の支援事業に移行した場合、
資金が続かないと、どれほど良い事業でも続けられないと、10年間ずっと痛感してきました。
東日本大震災でも、現場に資金が届かなければ、どんなに有効な活動でも持続できなかったんです。
『この事業は、あと1、2年は続いた方がいいのに…』と思いながら諦めざるを得ないのは、本当に苦しかった。
それならば自分で資金を集めようと、ファンドレイジングの担当になったんです」

 

支援の成果を可視化する

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2018年、ピースワンコ事業の維持のためには
広報の充実と資金確保の制度補強が不可欠と感じ、イさんは、参画に手を挙げる。
翌年、正式に着任してまず取り組んだのは、支援者の方への報告とサービス拡充だ。

「貴重なご寄付をいただいているわけですから、
どのような活動ができているかを、具体的にお見せしなくてはいけないと感じました。
やはり現場の様子がわかって、働くスタッフの顔が見えると、支援者さんは安心されると思うんです。
いただいた寄付金のおかげでどんなことができているかをお知らせして、
満足していただくこと。それによって、引き続き応援しようと思っていただけること。
結果的には、それが事業の持続可能性に繋がっています」

多くの支援者の方に恵まれ、幸いなことに、寄付金は年々増加している。

「社会課題の解決が目的でも、事業体になれば、ボランティアの力だけで運営していくことは難しくなります。
適切な人材を募集し、育成し、その人材が安定して生活できる環境を維持していかなくてはいけません。
その状況が整ってはじめて、犬たちのケアの質も保っていけるのではないでしょうか。
「ワンだふるサポーター」などの会員制度は、毎月の寄付金額があらかじめ把握できますから、
事業の維持や拡大、スタッフの生活保障といったあらゆる点で、大きく支えられています。
それ以外でも、その方に合った方法で少しずつでも支援を続けていただけることは、
団体の安定性という点で本当にありがたいんです。
実は現場スタッフは、支援の金額よりも、支援者さんの数に非常に励まされるのだそうですよ。
これだけの方が応援してくださっている、だから頑張ろうと、元気をもらっているんです」

 

ターニングポイント

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2021年にピースワンコジャパンは、重要なターニングポイントを迎えた。
それまでは、いわば事業の立ち上げ期。
初期の設備投資の支出が大きく、寄付金も今ほどの額には達していなかったため、
母体であるピースウィンズに資本の一部を頼らざるを得なかった。

「2021年からはピースワンコ単体で、寄付のみで運営していけるようになりました。
事業成長モデルとして、いよいよ全国殺処分ゼロに向けて、
活動を拡大していける体制が整ったんです」

 

新たな展開も見据えて

まず目指すのは、犬の全国殺処分ゼロの達成と、その維持。
その先の目標についても、「支援者の方のご理解がいただけるならですが」
と前置きしながら、イさんは教えてくれた。

「現在は国内の犬に限定して活動していますが、
将来的には、猫など他の動物の保護、
さらに、ピースワンコとしてだけではなく、ピースウィンズとして、
国内外の動物や自然環境の保護に取り組むプロジェクトを立ち上げられたら
と考えています。
気候変動などによって、不幸な状況に置かれつつある動物を救えればと。
我々が蓄積してきたノウハウや人材を使い、
助けたい想いを持つ方から支援をいただいて、活動を行えたらと構想しています」

 

伝えることは、大切な課題

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取材を通し、イさんは度々、ご自身の「二つの視点」について話してくれた。
ファンドレイジングの責任者として、
事業を持続可能にしていくための寄付を集めるという視点。
そして、支援者の方への感謝を純粋に伝えたいという視点だ。

「一つの行動にも、立場上、二つの意味を込めてしまうのですが…」
と、丁寧に言葉を選びながら、こう続けてくれた。

「支援者の方が、利他性の高い寄付という行動を続けてくださるありがたさを
実感しています。ワンコたちを助けるため、対価としての商品も、
換金制もない贈与として、お金を提供してくださっているわけです。
その応援がなくては、ピースワンコの活動を続けることはできません。
どうすればこの感謝をお伝えできるのか。これはずっと私たちにとっての課題です」

取材・執筆:林りん
ライター、編集者、イラストレーター。シニアの愛犬が相棒。
インバウンド向け情報メディアの編集部に勤務後、フリーに。
雑誌やライフスタイル系WEBマガジンでの編集・執筆、企業オウンドメディアのデレクション、コピーライティング等を行う。
近年はイラストレーターとして、出版物の挿絵やノベルティグッズのイラスト等も手がける。

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