「介護することって自然なことなのよ、人も犬も同じ」
お尻に腫瘍があり、甲状腺を患う13歳のチワワ犬、“えだまめ”の里親様となってくださった鈴木さんご夫婦。これまで2頭のチワワを最期まで看取った経験をお持ちです。
えだまめが保護された時、人も殆ど通らない山の中にポツンと座り、見つけられた時は途方に暮れていたそうです。イノシシや野生動物も沢山生息する山奥に、そして翌日は梅雨の大雨。こんな小さなえだまめを元飼い主様はどの様な気持ちで置いていかれたのでしょうか。えだまめの下半身には大きな腫瘍がありました。もしかするとそれが理由だったのかもしれません。
鈴木さんご夫婦は、先住犬の介護が終わり、偶然施設へ立ち寄りました。そしてピースワンコに保護されていたえだまめとの出会いを果たしました。
「先住犬チワワ2頭を看取り、えだまめと出会う」
先住犬は17歳と12歳で亡くなりました。17歳のワンコは老衰で亡くなり、12歳まで生きたワンコは、ペットショップから来てすぐに “器官虚脱”という病気があることが分かったといいます。治療をしながらずっと世話をして、12歳まで生きることが出来ました。
ご夫婦も年齢を重ね、シニア世代になりました。犬がいない生活は考えられなかったが、子犬から飼うとなるとどうしてもその子を後に残してしまう可能性もあることを考えて踏み切れずにいました。そんなある日、何気なく立ち寄ったピースワンコ で、「病気があるシニア犬ですが前日保護されたチワワがいますよ」と紹介され、運命的な出会いを感じたそうです。
まだお尻には出血の止まらない腫瘍がある状況でした。でも、最後まで見守ってあげたいと躊躇なくえだまめを引き取ることを決断したといいます。
えだまめには甲状腺機能低下と、肛門周囲腫瘍がありました。最初の頃は出血が止まらず抗生剤と止血剤、腫瘍を焼く治療を繰り返しました。腫瘍を取ってしまうと排便障害を引き起こす可能性があり、QOLを下げる可能性があるからです。
病気持ちということよりも、噛み癖があるというほうが心配でした・・
目の前のえだまめは鈴木様の胸元で大人しく抱かれています。噛み癖があるとは思えない、可愛らしい顔つきです。
「“まめ”がどんな環境で育っていたのかはわかりませんが、最初は怖がり、イライラして吠えて噛むことで身を守ろうとしていました。毎日容赦無く噛まれていましたが、朝晩2回、散歩に行き、ご飯をたっぷりあげ、噛まれても抱き上げ、静かに触ってあげました。
そうやってずっと一緒にいるうちに“まめ”もこちらに委ねてくれるようになりました。足元に潜り込んできたり、時にはお布団に入ってきたりするようになりました。
今も時々、噛まれますが、“あ、お母さんを噛んじゃった”と申し訳なさそうにしています。穏やかな顔になり、普通の“家犬”になりましたよ。スタッフさんにも動物病院の先生にも変わったね、可愛くなったねと言われて嬉しいです。」
犬を看取ること―自らの将来に思いを馳せる
2頭目の先住犬を看取る時、呼吸が次第に弱まるなか、酸素室に入れるかどうか思い悩んだそうです。
「呼吸は楽になるが、隔離されて愛犬は不安になってしまう。結局、頻繁に入れたり出したりして、最期は自然にまかせました。この子が寂しくないように、腕の温もりの中で逝かせてあげたい。そばに誰もいない状況がないように、温もりを感じさせてあげたい。」
その看取りの経験から、えだまめも最期は施設ではなく、家で看取ってあげたいと思われたそうです。
「私たちは微力で、出来ることは少ないですが、温もりの中で最期まで暮らせるワンコが増えればいいなと思います。温もりを感じながら家で暮らす、って大事なことだと思います。若い頃から犬を飼っていますが、以前は働き盛りで落ち着かず、一方的にこちらが癒してもらうだけでした。自分達が年を重ねた今、犬との向き合い方が変わってきました。
シニア世代になってシニア犬と暮らすことは、若い頃より丁寧に犬と向き合えるし生活のハリになります。犬との相性はありますが、シニア犬を飼うことで1頭でも家犬として犬生を送ることができれば私たちでも役に立てる。
介護も身構えるものではなくて、人として自然なことですよ。自分もこうなっていくのだな、って思わされます。」
穏やかにご夫妻は目を見合わせ、笑いました。腕の中には変わらず穏やかなえだまめが。ご夫婦のまとうゆったりした空気が伝わるのか、安心して身を委ねていることがわかる。
好きなものを食べ、散歩をして、病があっても、一緒に日々を重ねていくこと。人と犬との幸せな暮らしーこれからのまた一つの家族のカタチがありました。
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