ピースワンコが保護したワンコたちは、譲渡できるようになるまで本部がある広島県の神石高原シェルターで暮らしています。大半は元野犬の保護犬ですが、飼い主に棄てられた元飼い犬や怪我や病気をしている子たちもいます。警戒心が強く怖がりな子が多いので、人間は怖くないんだよ、と分かってもらえるように一頭一頭の状態に合わせながらスタッフは優しくお世話をしています。ワンコがシェルターの環境やスタッフに慣れてくると、人馴れトレーニングやお散歩トレーニングが始まります。
トレーニングが始まったワンコの中には、神石高原シェルターから譲渡センターに移動して、里親募集をしながら環境を変えてトレーニングをする「トレーニング犬」と呼ばれるワンコもいます。2021年7月に岡山譲渡センターにやってきたクラトルちゃんもその一頭でした。
クラトルちゃんは、2021年2月9日に保護された推定1歳の女の子。トレーニング犬だけあり、岡山譲渡センターに来た当初はスタッフが近づくだけでウンチを漏らしたり、ガルガル!と威嚇をしながら逃げ惑うほど警戒心の強い子でした。お散歩練習もまだしたことがなく、リードで引っ張られると怖くてリードを噛みちぎろうとすることも多々ありました。
でも、クラトルちゃんは他のワンコと遊ぶことが大好き!先輩ワンコや同年代のワンコと遊びながら、人は怖くないということを少しずつ学んでいきました。
食べることも大好きだったので、ゴハンを手からあげたり、美味しいオヤツを人の手から与えて少しずつ人との距離を縮めていきました。
犬生で初めてのお散歩のときは、スタッフも不安でいっぱいでしたが、先輩ワンコについて歩くとなんと初日から尻尾をあげて歩くことができました!
ちょっとしゃくれた愛嬌のある可愛い顔、たまにしまい忘れるペロッと出した舌、嬉しくて吠える太い声…。クラトルちゃんは、時間とともに少しずついろいろな一面を出してくれるようになりました。そして、みるみるうちに急成長を遂げていったクラトルちゃんに、あるご家族が目を止めてくださいました。
クラトルに面会!?大丈夫かな?
スタッフみんなで心配をしていましたが、ご家族がゆっくりとクラトルちゃんのペースに合わせて接してくださったこともあり、手からオヤツをもらえたり、ペロッと手を舐めたりする仕草も見られました。
「もしかしたらお家では怖くて噛んでしまうこともあるかもしれません」
「馴れるまでとても時間がかかると思います」
ご家族は、クラトルちゃんのすべてを受け入れてくださり、おうちの子として迎えることを決心してくださいました。卒業までの間、少しでもクラトルちゃんが馴れるようにと何度もご家族で足を運んでくださいました。
そして2021年10月、クラトルが卒業しました!
卒業後も心配していたスタッフでしたが、私たちの想像をはるかに超えるクラトルちゃんの様子が里親様から送られてきました。初めてのおうちの環境では緊張してお水は飲めませんでしたが、早速ご家族のそばでくつろぐ姿もあったそうです。卒業して3か月後にはご家族と寄り添って眠る姿、おもちゃで遊んでもらう姿、笑顔で楽しそうにお散歩をする姿…ご家族もクラトルちゃんもとっても幸せそうでした。
そして卒業からもうすぐ半年。オテができるようになったり、おうちでの行動範囲が広くなったり、ご家族の手やお顔を舐めるようになったり、お腹を見せて無防備にゴロゴロしたり。岡山譲渡センターで初めて会ったクラトルちゃんからは全く想像ができない姿を見せてくれているそうです。
私たちスタッフは、クラトルちゃんから驚きと大きな感動を教えてもらいました。ワンコの可能性は無限大です。これからもワンコ全頭の幸せを願って、保護犬たちと一緒に素敵なご縁を探していきたいと思います。