愛護センターには様々なワンコがいます。広島県の場合、野犬が9割、元飼い犬が1割ぐらいの割合です。今回はピースワンコで野犬の子犬がどんな風に成長し、家族ができたかをお伝えできたらと思います。今回は、広島譲渡センターから6月27日に卒業した「ニコタン」です。
ニコタンは、2020年11月に愛護センターからピースワンコの検疫シェルターに保護されました。「ニコタンは愛護センターの犬舎では怖さから隅で小さく固まっていた。移動中の車内では、じっとこちらを見つめていた。」と、当時の様子を安倍は懐かしそうに教えてくれました。
野良の子犬の場合、警戒心が強いワンコが多く、怖さから部屋などの隅で固まってしまう子が多いです。ニコタンも最初はじっとこちらの様子を伺い、人の動きに敏感に反応するワンコでした。
今回、広島譲渡センタースタッフの小松は、保護から1ヶ月後、検疫シェルターへ迎えに行き、二コタンの心のケアを努めながら、家族をみつけることを決心しました。
検疫シェルターから小松の自宅へ移動する際のニコタンは、とにかく逃げたい様子だったそうです。
最初の数日は緊張が解けず、人が同じ空間にいるとニコタンはご飯を食べる事もできません。
抱っこはもちろん、撫でる事もできませんでした。
広島譲渡センターで、先輩ワンコの成犬と触れ合う時間をつくろうにも、最初は犬舎から出る事すらできませんでした。しかし時間の経過とともに、少しずつ先輩ワンコと挨拶ができるようになり、興味を持ち始めた姿を見た時には、スタッフたちは希望に胸をおどらせ、とても喜んだそうです。
時間をかけて成長していく中で、どうやら本来のニコタンは、“元気一杯!たくさん笑顔を見せてくれるとても明るい子女の子だ”ということがわかってきました。
広島譲渡センターで家族を探すこと175日、ついにニコタンに里親希望者様からの連絡がありました。今回、連絡をくださったのは、かつて一緒に過ごしたマラカス(現:ケビンくん)の里親様でした。
「最近、ケビンが他のワンコを求めているような気がするんです」と、ご相談をいただいた事をきっかけに、久しぶりにニコタンとの再会を果たしたケビンくん。その時のとても嬉しそうな様子を見た時、“ニコタンもうちの子に”と考えてくださいました。また、お母様がご実家で一緒に過ごされた先代のワンコにニコタンがそっくりでずっと気になっていたとの事で、怖がりな二コタンの全てを受け止め、家族の一員として迎えようと決心してくださいました。
トライアルを経て、正式に家族になったニコタン。ケビンくんがお家で堂々と生活をしている様子や、幸せそうに撫でられている姿を見て安心したのか、あっという間にご家族の一員になれたそうです。
最初にケビンくんをご希望された時に里親様が、「野犬として生まれ育った子を迎えるのが初めてなんです。私たちでも迎えることはできますか?」とご質問されたのを今でも鮮明に覚えていると小松は言います。“野犬”とよばれるワンコたちは、元々警戒心と怖がりな性格をもっており、その強弱は個体によって様々です。
保護犬の里親になりたいと思い、不安な事を素直に聞いてくださった里親様。ご家族の皆様のお優しい雰囲気にケビンくんもニコタンも必ず幸せになれると、小松を含め広島譲渡センタースタッフは確信しているそうです。
ニコタンもケビンくんも、幼い頃から怖がりな気質が強く出ていましたが、今ではとても幸せに暮らしています。
ニコタン、卒業おめでとう。ケビンくんといつまでも幸せにね。
愛護センターから引き出したワンコたちに、人から愛される事の喜びや幸せ、一緒に暮らす安心感などを伝えることは、人からしか教える事ができません。“誰にも愛されることのなかった命”を“これから愛される命”にするために、スタッフたちは日々ワンコたちに向き合っています。
保護犬たちの心のトレーニングから、家族として暮らせるようなお世話、また迎えてくださったあとのケアまで、私たちは全力で取り組んで参ります。
家族にワンコを迎えようと考えた時に、保護犬を選択肢に考えていただけるよう、これからもワンコたちと成長していきたいと思います。