保健所で処分されるペットの数!個人でできる動物愛護支援も解説

日本では毎年多くの犬や猫が保健所で処分されています。その中には飼い主の事情により飼えなくなり、処分されるペットも存在します。保健所や動物愛護センターなどで引き取られた犬猫の処分方法は主に3つです。本記事では、日本で処分される犬猫の数や諸外国との違い、処分方法の内容、個人でできる動物愛護支援について解説します。

保健所によるペット処分の実態

はじめに、保健所や動物愛護センターによるペット処分の実態を解説します。どのくらいの数のペットが引き取られ、処分されているのかを知っておきましょう。

犬猫の引き取りと処分の状況

環境省自然環境局では、定期的に各自治体(都道府県・指定都市・中核市)に引き取られた犬猫の数や処分数を調査しています。2019年4月1日~2020年3月31日に行われた調査結果は以下の通りです。

【飼い主からの引き取り数】
・犬:3,087頭(成熟個体)、213頭(幼齢の個体)
・猫:6,936頭(成熟個体)、3,467頭(幼齢の個体)

【所有者不明からの引き取り数】
・犬:23,664頭(成熟個体)、5,591頭(幼齢の個体)
・猫:10,629頭(成熟個体)、32,310頭(幼齢の個体)

1年間で引き取られる犬猫の数は飼い主・所有者不明を合わせると、犬32,555頭、猫53,342頭になります。処分数は以下の通りです。

【処分数】
・返還:犬10,814頭、猫:305頭
・譲渡:犬16,312頭、猫:25,636頭
・殺処分:犬5,635頭、猫:27,108頭

返還や譲渡されず殺処分となった犬猫は32,743頭に及びます。かなり多くの数が殺処分されているのが現状です。

動物愛護法の改正により年々処分数は減少しているが…

2012年に改正された動物愛護管理法により、犬猫などのペットを飼う人に終生飼養(命を終えるまで適切に飼養すること)の責務が課せられるようになりました。それにより、保健所は安易な理由で手放す犬猫の引き取りの拒否が可能に。また、民間の動物愛護団体に直接引き取ってもらうことで、保健所の引き取り数が年々減少しています。昭和49年(1974年)から令和1年(2019年)の45年間に行われた調査では、犬猫の引き取り数にかなり開きがあることがわかります。

【犬猫の引き取り数の推移】
・昭和49年:約125万頭
・平成11年:約58.8万頭
・平成21年:約27.2万頭
・令和1年:約8.6万頭

年々減少しているのは事実ですが、自治体や動物愛護団体、支援施設が掲げる「殺処分ゼロ」には程遠いのが実情です。

日本と諸外国の殺処分の割合

日本やイギリス、ドイツ、アメリカの犬猫の殺処分状況はどうなっているのかを見てみましょう。

■日本
2014年の殺処分数は以下の通りです。
・犬約2.2万頭
・猫約8万頭

■イギリス
2010年に行われた動物保護団体に対する調査の殺処分数は以下の通りです。
・犬約1~1.3万頭
・猫約1.7~2万頭

■ドイツ
ドイツ動物保護連盟「ティアハイム」の運営指針で、基本的に殺処分してはならないと定められています。しかし、ドイツ連邦狩猟法では、狩猟動物を保護する目的で野良犬・猫の駆除が認められています。2012年度に発表されたノルトライン・ヴェストファーレン州の駆除頭数は以下の通りです。
・犬77頭
・猫約1万頭

■アメリカ
2012~2013年の調査の殺処分数は以下の通りです。

・犬猫合わせて年間約270万頭

アメリカは国土の広さや人口の多さから殺処分数が桁違いとなっていますが、割合は日本とほぼ同じとされています。また、諸外国は民間の動物愛護団体への寄付が盛んです。加えて、幼齢動物の販売規制やブリーダーへの頭数規制を設けるなど、日本よりも動物の愛護・福祉に対する意識が高いといえます。

日本における犬猫の処分の行われ方:3つの処分方法

保健所や動物愛護センターで引き取られたペットは3つの方法で処分されます。どのような方法なのか解説します。

まずは一定期間収容される

保健所や動物愛護センターで引き取られた犬猫は一定期間収容されます。原則として保護収容した日から7日間です。

返還・譲渡・殺処分が行われる

収容後に行われる処分は以下の3つです。

【返還】
名札やマイクロチップをもとに、飼い主に連絡を取ります。沖縄県那覇市の活動を例にあげると、収容したペットの飼い主がいることを前提に聞き取りや捜索などを行います。犬の場合は特徴を記したチラシなどを配布して飼い主への返還を助ける仕組みです。
【譲渡】
各自治体や動物愛護センターなどが新たな飼い主を探す取り組みを実施します。譲渡会などの開催が主な取り組みです。
【殺処分】
収容期間が過ぎた動物は殺処分されます。死体は焼却されます。

犬猫の殺処分について

犬猫の殺処分は、麻酔薬等か炭酸ガスによる方法で行われます。処分対象数が多い場合は、コストの観点により炭酸ガスの方法が採用されることが多いです。炭酸ガスは刺激性が低く、犬猫が気づくことなく昏睡状態に入って死に至ります。しかし、対象となる犬猫が複数頭ひとつの部屋に閉じ込められ恐怖を感じて暴れまわることもあるようです。つまり、引き取り数や収容数を減らすことは殺処分数を減少させられるメリットだけではなく、殺処分方法の改善にもつながるといえます。

ペットの殺処分をゼロにするために私たちができること

返還や譲渡ができなかった犬猫の行く末は殺処分です。コストの関係で炭酸ガスを使用しなければならないこともあり、恐怖と苦しみを与えてしまいます。不幸なペットを出さないためにも、私たちひとりひとりができることを実行しましょう。

金銭や物資の寄付

動物愛護を行う民間の支援団体はさまざまな活動を行っています。広島県を中心に活動している特定非営利活動法人ピースウィンズ・ジャパンが運営する、ピースワンコ・ジャパンの活動内容を例にして見てみましょう。

・動物愛護センターなどから犬を保護
・譲渡に向けたトレーニング
・獣医師などによる健康管理
・譲渡会の実施や里親探し
・企業や学生に対する体験学習・研修
・セラピー犬や災害救助犬などの育成
・ドッグランの運営、など

上記のように、動物愛護の活動は多岐にわたります。これらを実施するためには、活動費用の捻出も必要です。「里親になることは難しいけれど、動物愛護に興味はある」、「犬猫の殺処分を減らしたい」という方は、支援団体へ金銭の寄付を行うこともおすすめです。

保護犬や保護猫の里親になることを検討

保健所や動物愛護センター、各支援団体は、保護した犬猫の新しい飼い主を見つけるために積極的に譲渡活動を行っています。

・譲渡会の開催
・自身のサイトで里親募集

保護犬や保護猫の里親を検討している人は、保健所や動物愛護センター、各支援団体の情報を集めてみてください。ただし、里親になる場合は、「最後まで一緒に過ごす」ことを念頭におくことが大切です。

動物愛護ボランティア

寄付だけではなくもう少し積極的に動物愛護に関わりたいという方は、動物愛護ボランティアを検討してみませんか。動物愛護ボランティアの活動内容は多様です。

・保護犬・保護猫の一時的な世話
・子犬・子猫の一時的な世話
・譲渡ボランティア
・放浪ペットの保護
・災害時のボランティア(輸送)
・避難中のペットの一時的な預かり
・動物救護施設で飼育管理
・情報発信や収集など広報活動
・獣医師・動物看護師・トレーナー・インストラクター・トリマーなど専門家としての支援

ピースワンコ・ジャパンも、ボランティアとしての支援を募集しています。広島県の神石高原町や全国の譲渡センターでボランティアを募っているので、興味のある方はぜひ検討してみてください。

殺処分ゼロの活動は個人でも実施できます

日本では、毎年多くの犬猫が保健所などに引き取られ処分されています。処分の方法は返還・譲渡・殺処分の3つです。引き取り数に関しては、動物愛護管理法の改正や動物愛護団体が掲げている「殺処分ゼロ」によって、昭和の時代に比べるとその数は減少傾向にあります。しかし、諸外国に比べるとペットを飼育する責任や考え方については後れを取っているといえるでしょう。「殺処分ゼロ」の活動は個人でも実施できるので、興味がある方はぜひ取り組んでみてください。

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