捨てられた犬の現状
昔は近所によくいた野良犬ですが、近年はあまり目にしなくなってきています。
しかし、犬が捨てられる現実がなくなったわけではありません。
大前提として犬を迎え入れる前には、以下のことを考えたうえで決断する必要があるでしょう。
- 本当に飼える経済状況なのか
- 犬を飼える環境にあるか
- 犬を飼うことの大変さを理解しているか
ここでは、捨てられた犬の現状を解説します。
- 年間で捨てられている犬の数
- 犬が捨てられる理由
どのような現状があるのか見ていきましょう。
年間で捨てられている犬の数
環境省の資料によると、平成20年は各都道府県において10万頭を超える引き取りがあり、約8万2000頭の犬が殺処分されていました。
しかし、令和4年度に引き取られた犬は約2万2392頭で、そのうち殺処分となったのは約2,434頭と発表されています(注1)。
引き取りや殺処分の数も減少傾向にありますが、まだ救えきれない命があることには変わりありません。
犬が捨てられる理由
犬が捨てられる理由には、以下のことが挙げられます。
原因 | 理由 |
犬 | ・成犬になってかわいくなくなったから ・医療費が高く、介護できないから ・繁殖してしまいお世話ができないから ・しつけができず手に負えなくなったから(かみ癖・なつかない) |
人 | ・経済的に余裕がなくなったから ・ペット不可の物件で飼えなくなったから ・子どもが犬アレルギーだから ・飼い主自身が病気になったから |
いかに人間の身勝手な理由によって、捨てられているのかがわかるかと思います。
犬を飼う前に、飼育する大変さや万が一飼えなくなったときのことを想定して、迎え入れる決断ができれば、捨て犬を減らせるのかもしれません。
捨てられた犬はどうなる?
捨てられた犬の運命は、以下のとおりです。
- 野良犬になる
- 保護される
- 殺処分される
本来飼い主の責任として、次の飼い主を見つけるのが理想です。
しかし、やむを得ず飼えなくなり手放す際に、きちんとした手順を踏まず悲しい運命をたどる犬も少なくありません。
どのような運命が待っているのか見ていきましょう。
野良犬になる
飼い主が、他の人に譲渡したり保護施設に預けたりせず、山奥や道端などに置いてきてしまうことで野良犬になってしまう場合があります。テレビやマンガで、段ボールに入れて捨てられているシーンを見たことがある人もいるでしょう。
昔よりは減りましたが、今でも置き去りはなくなっていません。野良犬になってしまうと、自分の力で生き延びることが難しくなったり、凶暴化して人や他の犬を襲うようになってしまったりすることもあるので危険です。
また、野良犬になった犬たちが野山などで繁殖することが、「野犬」を増やす原因にもなっています。
保護される
飼えなくなった犬や、捨てられたり迷子になった犬は、地域の保健所やボランティア団体で保護されます。一定期間シェルターの中で過ごし、飼い主を待つのです。
その後、保護された犬は性格や健康状態によって里親募集にかけられ、新しい家族が見つかるのを待っています。
ただし、一度捨てられている保護犬の里親になるためには、厳しい条件をクリアする必要があるため、すぐに里親に巡り合える犬は多くありません。
捨て犬保護の現実については以下の記事を参考にしてください。
➤ 捨て犬保護の現実は?命を救うためにできること
殺処分される
保健所で保護された犬は、一定期間が過ぎると殺処分の対象になってしまいます。保健所で収容できる数が決まっているため、収容される期限を設けているからです。
何も悪いことをしていない犬が、人間の都合で殺されてしまう現実があるのです。
殺処分される犬を引き取る方法は以下記事を参考にしてください。
➤ 殺処分される犬を引き取るには?引き取り手順を紹介
捨てられた犬の気持ち
捨てられた犬の気持ちには、以下のことが当てはまるかもしれません。
- 楽しかった思い出を考える
- 不安と寂しさを感じている
- 恐怖で心を閉ざしている
急な環境の変化で、不安に思わない犬はいないでしょう。言葉が発せないからといって、何も感じていないわけではありません。
捨てられた犬がどのように思っているのか、犬の気持ちを考えてみましょう。
楽しかった思い出を考える
捨てられた犬は、楽しかった思い出を考えているかもしれません。犬は、そのときの出来事と自分の感情を併せて覚える「エピソード記憶」が得意な動物です。
これは楽しいことだけでなく、悲しいことも記憶されます。特に、幸せな記憶は忘れにくいという特徴があるため、飼い主と楽しく過ごした日々を思い出しながら迎えを待っているのかもしれません。
不安と寂しさを感じている
捨てられた犬は、不安と寂しさを感じているかもしれません。犬は群れる習性があり、本来は仲間と行動する動物です。
そのため、飼い主に知らない場所に置かれ、独りぼっちになったことで不安な気持ちを抱いている可能性があります。
飼い主が迎えに来ることを信じて待ち続ける犬もいれば、不安に耐えきれず家を目指して帰ろうと歩き始める犬もいるでしょう。
恐怖で心を閉ざしている
捨てられた犬は、恐怖で心を閉ざしているかもしれません。信頼していた飼い主から裏切られたことで心を閉ざし、自分自身を守ろうとしている場合もあります。
人間に恐怖心を抱いているため、近づけば攻撃をすることもあります。
しかし、犬が再び心を開くためには、人間の愛を感じることが必要です。犬が抱く恐怖や不安などのネガティブな記憶は、愛情を持って接していくことで上書きできる記憶でもあります。
ピースワンコ・ジャパンでは、「ピースワンコテレビ」というYouTubeチャンネルにて活動を紹介しています。保護された野良犬が訓練によって、かみ癖を直したり、人に馴れる練習をしたりと成長していく姿を取り上げています。
興味のある方は、ぜひこちらをご覧ください。
➤ 向き合い続ける、殺処分という現実~ピースワンコ~
捨てられた犬の保護・引き取り・支援方法
捨てられた犬を救うためには、以下の方法が挙げられます。
- 里親として引き取る
- 動物保護団体に寄付する
- ふるさと納税として寄付する
保護犬の里親となり新しい家族として迎えられれば良いですが、すべての犬が引き取ってもらえる環境に巡り合えるわけではありません。
しかし、引き取り以外の支援方法でも悲しい運命をたどる犬は減らせます。
ぜひ参考にしてください。
里親として引き取る
里親として引き取ることで、新しい家族のもとで愛情をかけて育ててもらえることが何よりの幸せでしょう。
譲渡の流れは、以下のとおりです。
- 希望の条件(性別・年齢・体重・毛の色など)に近い犬を選ぶ
- 問い合わせを行う
- 実際に犬に会いに行く
- 面会後、家族に迎え入れる決断をしたら申込書を提出
- スタッフが家庭訪問(飼育環境のチェック・飼育方法のアドバイス)
- 準備ができたら引き取り
ピースワンコ・ジャパンでは保護犬の里親募集も行っており、2012年~2023年6月末までに3849頭の譲渡や返還をサポートしてきました。
保護犬の譲渡費用には一律3万円かかりますが、これは譲渡までの養育費やワクチン接種、マイクロチップ装着、避妊去勢手術を行うための一部費用に充てられるためです。
里親に興味のある方は、こちらをご覧ください。
➤ 保護犬たちの里親募集サイト / ピースワンコ・ジャパン
動物保護団体に寄付する
金銭的な支援から、ポイントを活用した支援や物資の支援など、動物保護団体に寄付することで支援できるでしょう。
寄付の種類 | 内容 |
月額制 | ・「ワンだふるサポーター」 1日30円(月額1000円)からピースワンコ・ジャパンの活動に支援できる(現在5万人以上の方がサポーターがいます) |
単発 | ・その都度振り込みを行う ・遺贈や相続財産からの寄付も可能 |
Yahoo!ネット募金 | ・Tポイントを使って1円から寄付できる |
ソフトバンク | ・iPhoneやスマートフォンの利用代金と合わせて募金できる |
Amazon | ・ほしい物リストから物資を支援できる |
寄付金は、飼育費(食事代・医療費など)や災害救助犬・セラピー犬の育成などに活用され、金額に応じて以下の使い道があります。
寄付金額 | 寄付金でできること |
3000円 | 保護した犬の血液検査1回分 |
1万円 | 狂犬病予防注射と混合ワクチンの1回分 |
1万5000円 | 3頭分のドッグフード約1ヵ月分 |
実際に保護犬の引き取りが無理な場合でも、寄付という形で殺処分ゼロへの協力ができます。
ピースワンコ・ジャパンを運営しているピースウィンズ・ジャパンは、都道府県から認定された税優遇が受けられる「認定NPO」であるため、寄付は税控除の対象です。
寄付に興味のある方は、こちらをご覧ください。
➤ ピースワンコ・ジャパン | 犬の殺処分ゼロを目指し、保護犬のトレーニングおよび譲渡活動
ふるさと納税として寄付する
ふるさと納税とは、自分の住んでいる地域や応援したい自治体に寄付できる制度で、自分が寄付の使い道を選択できるものです(注2)。
所定の手続きを行うと、寄付した金額のうち2000円を超える部分について、所得税の還付や住民税の控除が受けられます。ふるさと納税では、保護犬に必要な医療費や餌代、施設の維持費などの運営費を支援できます。
ふるさと納税に興味のある方は、こちらをご覧ください。
➤ ふるさと納税のガバメントクラウドファンディングは「ふるさとチョイス」
捨てられた犬はふるさと納税で保護できる!
捨てられた犬はふるさと納税でも保護に協力できます。里親として引き取る、寄付やふるさと納税で支援するなど、自分が可能な範囲のやり方で捨てられた犬の運命を変えることができます。
ふるさと納税は保護犬の支援とともに、自身の税金の還付や控除も受けられる制度です。興味のある方は、自分が応援したい自治体がないか一度チェックしてみることから始めてみてはいかがでしょうか。