毎日の散歩や外遊びで他の犬と触れ合う機会が多いワンコの場合、感染症のリスクが気になりますよね。犬は危険な感染症にかかりやすいため、狂犬病ワクチンが義務付けられていますが、感染症の予防として混合ワクチンの接種も推奨されていることをご存知でしょうか。今回の記事では、各種予防接種の特徴から費用まで詳しく解説していきます。
犬の予防接種はなぜ必要?
犬のワクチン接種が必要な理由は、犬の生命を守ると同時に人間の命も守るためです。たとえば接種が義務化されている狂犬病ワクチンは、発症すれば犬と人間の致死率がほぼ100%である狂犬病を未然に防ぐことができます。また人間に感染しないとしても、犬の生命を危険に晒してしまう感染症も、ワクチン接種をすることで未然に防ぐことが可能です。地域の獣医と相談をしながら「コアワクチン」や「ノンコアワクチン」の接種も行っていきましょう。
犬の予防接種の種類は主に3つ
前述で簡単に触れた通り、予防接種の種類は主に3つあります。義務型は狂犬病ワクチン、その他コアワクチン、ノンコアワクチンに分類されます。では実際に各ワクチンにどんな違いがあるのかを解説していきましょう。
予防接種が義務付けられている狂犬病ワクチン
狂犬病ワクチンは、生後3ヶ月以降の犬全てに対して接種義務のあるワクチンです。法律上年1回の接種が義務付けられており、各自治体が実施する集合注射で受ける場合と動物病院で接種する場合があります。ワクチン接種費用は、地域や動物病院によって差が存在しますが、1回あたり高くても4,000円程度です。基本的な集合注射の実施期間は4月1日~6月30日で、ワクチンを接種すると注射済票が交付されます。
接種が強く推奨されている「コアワクチン」
ワクチン接種の中でも強く推奨されるのがコアワクチンです。コアワクチンは、犬にとって感染すると致死率の高い病気に対するワクチンのことです。コアワクチンがカバーする感染症には、ジステンパーやパルボウイルス感染症などがあります。他の動物(人間を含め)にも感染を広めてしまう恐れがあるため必ず接種するようにしてください。また、犬と飼い主が共同で利用する施設によってはコアワクチン接種を証明する書類を提出しなければならない施設も存在しています。ちなみにコアワクチンの定義から、コアワクチンには狂犬病ワクチンも含められています。
ワンコの住環境によって接種する「ノンコアワクチン」
ノンコアワクチンは犬のライフスタイルによって接種が推奨されるワクチンです。地域によって流行している感染症であったり、飼い主の旅行に付き添うことが多かったりなど様々な感染リスクを抑えるために、獣医と相談しながらワクチンを接種します。ノンコアワクチンがカバーする感染症には、犬パラインフルエンザやレプトスピラ症、コロナウイルスなど様々な感染症が含まれます。
「混合ワクチン」とは?
混合ワクチンとは、複数のワクチン成分が一つになっている薬液を指し、一般に1種や2種などと表記されているものです。混合ワクチンで予防できる感染症を一覧で解説していきます。8種までの予防できる感染症は以下の通りです。
1種:犬パルボウイルス
2種:上記に加え、犬ジステンバーウイルス
3種:犬ジステンパー、犬伝染性肝炎、犬アデノウイルス2型
4種:上記に加え、犬パラインフルエンザ
5種:上記に加え、犬パルボウイルス
6種:上記に加え、犬コロナウイルス
7種:5種に加え、犬レプトスピラ(2種類)
8種:6種に加え、犬レプトスピラ(2種類)
混合ワクチンの5種以降がコアワクチンを全て含んだワクチンとなっており、動物病院では基本的に6種以上を勧められるでしょう。また、7種以降は犬レプトスピラ感染症の血清型が追加されるようになり、ワクチン会社によって血清型が異なります。
混合ワクチンによって予防できる感染症一覧
混合ワクチンによって感染を抑えられる感染症名をお伝えしてきましたが、感染するとどのような症状が犬にあらわれるのかも気になるところです。そこで、以下の項目では混合ワクチンによって抑えられる感染症の症状を解説していきます。前提としてコアワクチンに分類されるものとノンコアワクチンに分類されるものを分けておくと以下の通りです。
コアワクチン:犬パルボウイルス、犬伝染性肝炎、犬ジステンパーウイルス、犬アデノウイルス2型
ノンコアワクチン:犬パラインフルエンザウイルス、犬コロナウイルス、犬レプトスピラ
犬パルボウイルス感染症
犬パルボウイルス感染症は、嘔吐や下痢、白血球の減少などを引き起こします。感染経路は犬の排泄物などに含まれるウイルスを経口摂取してしまうことです。白血球の減少と、腸内粘膜が傷つき他の臓器へ2次感染を引き起こすと、敗血症などに陥る場合があります。犬パルボウイルスは感染すると対症療法しか存在しないため予防が最善の方法です。また犬パルボウイルスは環境によって数カ月間の生存力があるため、他の犬へ感染する恐れもあります。特に子犬に感染すると重症化しやすく、致死率も高くなってしまうためコアワクチン接種は必ず行いましょう。0歳の感染率が最も高く、ワクチンを接種すれば、ほとんどの場合感染することのない感染症です。
犬伝染性肝炎
犬アデノウイルス1型の感染により、肝炎を引き起こし突発的に死に至る恐ろしい感染症です。空気感染はせず、感染した犬の体液などを媒介にして感染します。症状としては、発熱、腹痛、嘔吐、下痢、食欲不振などがあげられます。感染したとしても症状が軽く済んだり、症状が顕在化しなかったりする場合も。犬アデノウイルス1型の予防方法は、そもそも犬同士で接触しないことが予防法です。ただ完全に接触を阻止することは不可能であり感染すれば対症療法しか存在しないため、必ずワクチン接種を行ってください。肝炎は怖い症状であり、アデノウイルスなどの感染だけでなく、細菌や寄生虫、薬物といった様々な場面で犬の生命を脅かします。肝炎には様々な要因があるため、犬の年齢が上がっていくごとに罹患する確率も増えていきます。
犬ジステンパーウイルス感染症
犬ジステンパーウイルス感染症はこのウイルスに感染した犬から感染する恐れがあります。感染経路は近距離では空気感染、その他鼻水などの体液でも感染します。症状としては、発熱後、数日の潜伏期間を経て、第二期の発熱、くしゃみ、鼻水、激しい咳、結膜炎、下痢などがあります。免疫力の高い犬は潜伏前の発熱で治ってしまいます。そのため、注意すべきは子犬の段階で、感染すれば対症療法しかないためコアワクチンを必ず接種しましょう。罹患率としては0歳の犬が多いですが、ワクチン接種を行えばほぼ確実に予防できます。
犬アデノウイルス2型感染症
犬アデノウイルス2型感染症は、1型と異なり肝炎を起こすのではなく咳が主な症状です。感染経路としては、人間の風邪症状と似ており、感染犬との接触、体液などがあげられます。このウイルスの怖いところは、単独での病原性は弱くても複合することで症状が重くなってしまうところです。一般的に複合的に感染することを混合感染といい、重症化すれば肺炎を起こしてしまいます。肺炎になってしまうと、食欲不振はもちろんのこと外的要因による興奮であっても呼吸困難に陥ってしまう恐れがあり油断できません。この肺炎は多数のウイルスや細菌が関係している場合が多く、対症療法しか存在しないためワクチン接種を必ず行いましょう。
犬パラインフルエンザウイルス感染症
犬パラインフルエンザウイルス感染症は、アデノウイルス2型と同様な危険性を持ち合わせている感染症です。感染経路は、感染した犬からの咳やくしゃみなど。風邪と似た症状が発生し、発熱や咳、食欲不振も起こります。この感染症と犬アデノウイルスなどに混合感染した場合、犬伝染性気管気管支炎(ケンネルコフ)に発展し、重症化すれば肺炎も引き起こすため、早期の治療、ワクチン接種が推奨されます。犬パラインフルエンザウイルスはノンコアワクチンに分類されますが、0歳の犬がケンネルコフを発症する率は1%以上あるため、十分注意が必要です。
犬コロナウイルス感染症
人間の間で流行したコロナウイルスは犬の間でも感染があります。犬コロナウイルス感染症の感染経路は、感染した犬の排泄物などによる経口感染です。人間と比べると爆発的な感染力はないですが、万が一子犬が罹患してしまうと、嘔吐や下痢などの症状が出ます。他のウイルスとの混合感染によっては死に至る可能性があり、治療法は確立されていないため、ワクチン接種での予防が最適です。
犬レプトスピラ感染症
犬レプトスピラ感染症は、犬以外の動物が原因になる細菌感染症です。感染経路は、ネズミなどの野生化された哺乳動物から。腎臓に保菌されたレプトスピラを尿とともに排出し、犬が何らかの形で接触することで感染します。症状としては、症状が表れないまま自然治癒するか、粘膜出血、嘔吐や下痢などです。重症化した場合には黄疸、血尿など重篤な症状が出てしまいます。症状は「出血型」と「黄疸型」がありますが、治療が遅れてしまうと致死率が高いのも犬レプトスピラ感染症の特徴です。なお、人間にも感染する感染症のため、感染した、もしくは感染の疑いのある犬の血液や尿には触れてはいけません。また、ワクチンで対応できるレプトスピラ症が3種あるため、獣医との相談を行いワクチンの種類を決めてください。
犬の予防接種に関するよくある質問
犬の予防接種に関するよくある質問をまとめていきます。内容としては以下の通りです。
・ワクチンの接種回数やタイミング
・接種当日の動き
・副反応について
ワクチンの接種回数やタイミング(時期)について
ワクチン接種回数はワクチンの種類によって異なってきます。
狂犬病ワクチン:毎年
コアワクチン:3年ごと
ノンコアワクチン:毎年
ただし、日本の動物病院では混合6種ワクチンからの取り扱いが多く、コアワクチンとノンコアワクチンのスケジュールを分けて接種することが難しいです。そのため、1年間隔ごとに摂取することがほとんどでしょう。また、混合ワクチンによる予防接種を行う際に気を付けなければならないのが、移行抗体です。なぜなら、母犬の初乳には子犬の感染症を防ぐ抗体が含まれ、その抗体がワクチンの効果を薄めてしまう恐れがあるからです。子犬の接種スケジュールとしては生後6~8週のときにはじめてのワクチン。3週間ほど期間を置いて2回目のワクチン、更に3週間後にワクチンを接種します。その後は毎年1回定期的に接種をしていけば大丈夫です。
接種当日の動き
ワクチンは不活化や弱毒化しているといっても、病原体をそのまま体内に入れるため、接種当日の体調管理はきちんと行っておかないといけません。犬の体調が優れなかったり、下痢や嘔吐などがの症状があったりすれば、必ず獣医に相談しましょう。また、ワクチンの予防接種を行う時間は朝方から昼にかけての方が良いです。なぜなら、副反応などの異常が見つかった場合にすぐにかかりつけの獣医に診察してもらうことができるからです。
副反応は出ますか
ワクチンを接種した後、副作用が表れる危険性は少ないながらもあります。具体的症状としては、チアノーゼやアナフィラキシーショックです。チアノーゼとは、血液中の酸素が不足し、舌や口の粘膜が変色している状態を指します。またアナフィラキシーショックとは、体の免疫細胞が外部から侵入した物質に対して激しく反応し、過剰なアレルギー反応を起こしている状態です。特にアナフィラキシーショックは、じんましんや低血圧、嘔吐、呼吸困難など様々な症状を引き起こすため、すぐに獣医に診察してもらわなければなりません。ワクチンの予防接種後は、必ず安静にするとともに経過観察を行い、いつでも獣医に相談できる体制を整えておきましょう。シャンプーや散歩なども控えるようにしてください。
犬のワクチンに関する費用まとめ
最後に犬のワクチンの値段についてまとめていきます。前提として、あくまで目安であるため、詳しくは近くの動物病院へ問い合わせて確認する必要があります。
①狂犬病ワクチン:3,000~4,000円程度
②2~3種混合ワクチン:3,000~5,000円程度
③4~6種混合ワクチン:5,000~8,000円程度
④7種混合ワクチン:6,000~9,000円程度
⑤8種混合ワクチン:7,000~1万円程度
狂犬病ワクチンは法的な義務になるため必ずかかる費用であり、その他のワクチンと合わせると1万円以上が毎年のワクチン費用として計上されます。
まとめ
今回の記事で解説したようにワクチンには様々な種類があります。毎年1万円以上の費用はかかるものの、大切な家族であるワンコの命を守ってくれます。ただ、ワクチンには副反応がありますし、生後間もない犬のワクチン接種には細心の特に注意を払わなければならない点に留意してください。ピースワンコ・ジャパンでは殺処分されるワンコを保護し、適切なワクチン接種を行っています。前述の通り完全にワクチンを接種しようとすると一頭あたりの費用が高くなり皆様のご支援が必要です。例えば、1日30円の寄付を毎日して頂ければ、1頭分のフィラリア予防薬を1年間分購入できます。少しの寄付が大きな支援につながるのでご支援頂けると幸いです。