今年のゴールデンウィーク、ピースワンコ・ジャパンはネパールで起きた地震の対応で忙しかった。災害救助犬2頭を含むレスキューチームが捜索・救助のため現場に出動したからだ。残ったスタッフは、200頭近くいる保護犬の世話や、休日でにぎわうドッグランの来客対応に追われた。
ネパールに行った救助犬のうち1頭が、もともと捨て犬だった4歳の夢之丞(ゆめのすけ)。2010年11月、広島県動物愛護センターでまさに殺処分されようとしていたところを、私たちが引き取った。なんともブラックな話だが、二酸化炭素ガスを使って殺処分する機械は「ドリームボックス」と呼ばれている。そこから生還した子犬に夢を託す意味で「夢」とつけ、さらに私自身が名付け親として彼の命を守り抜くという誓いを込めて「丞」の一字を授けた。
以来、夢之丞は「人に捨てられた犬が人の命を救う」という使命を背負い、ピースワンコを象徴する存在になった。見るからに、どこにでもいる和犬の雑種だが、ロゴマークやパンフレットの表紙にも彼の顔を使っている。
夢之丞のネパール入りは楽ではなかった。経由地のバンコクまではよかったが、カトマンズ空港の混雑で飛行機が降りられず、給油のためいったんインドのコルカタ(カルカッタ)へ。再度カトマンズを目指したが、また降りられず、今度はバンコクに戻された。結局、目的地に着いたのは日本を出てから丸1日半後。飛行機の貨物室で大半の時間を過ごした夢之丞たちにとって、過酷な旅だったに違いない。
それでも、同行したスタッフによれば、現場での夢之丞は日本にいるときとそれほど変わった様子もなく、懸命に行方不明者の捜索にあたったそうだ。昨年8月の広島土砂災害での活躍が知られていた夢之丞は、日本のメディアはもちろん、英紙インディペンデントをはじめとする海外の新聞でも紹介され、フェイスブックでは連日2千前後の「いいね!」を集めた。
行方不明者の発見という成果は、今回はなかった。犬も人ももっと力をつけるため、帰国後さっそく訓練の体制を強化した。夢之丞もがんばっている。近い将来、夢を形にできるまで、見守っていただきたい。
Sippoオリジナル記事はこちらから