2024年1月26日

元野犬だってできるんだよ!~家族に迎えてからの暮らし方~

 

ピースワンコにいる保護犬の多くは「元野犬」の子たちです。
元野犬の子は私たちに保護されるまで人と暮らしたことがありません。人間社会を体験したこともないので、「怖がり」で「警戒心」が強く「大きな音」や「人の急な動き」にもとても敏感です。

お山の中で暮らしているときは、常にアンテナを張り巡らして、危険や外敵を察知したら素早く逃げられるようにしないと生き残れないので、「怖がり」で「警戒心」が強いことは必要不可欠なことでした。

 

ピースワンコに保護されたあと、神石高原シェルターで様々な人馴れトレーニングを受け、家族を探すために譲渡センターにやってきます。そして、本当の家族との新しい犬生がスタートしていきます。

でも元野犬のワンコたちにとって、人間社会は初めてのことや慣れないことばかり。ピースワンコでいろいろお勉強しても、環境が変わるとまた新たなお勉強の始まりです。そのため、人間社会に馴染むまで時間がかかることが多いです。

 

「犬」といえば、「名前を呼べば寄ってくる」「シッポ振りながらお散歩する」「おもちゃで楽しく遊ぶ」というイメージが浮かぶと思いますが、「元野犬」のワンコたちには、なかなか当てはまりません。

家族に迎えていただいたあとも、ずっと部屋の隅っこで固まっている「隅っこ暮らし」のワンコがほとんどですし、最初から人に寄ってきたりする子はめったにいません。家族に迎えられたお家は、ワンコにとって新しい環境です。シェルターで一緒に暮らしていた仲間と離れ、いきなり人間との暮らしが始まって、初めて会う人や初めて見る物、初めて聞く生活音など「知らないこと」ばかり。不安で怖くて固まって、動けなくなってしまうのです。「自分の存在を消したい」くらいの気持ちかもしれません。

けれど「知らないこと」が、実は「楽しいこと」なんだ!と分かれば、ワンコたちは少しづつ心を開いていき、飼い主様と幸せな時間を共有できるようになります。
「知らない」なら、教えてあげれば良いのです!

 

ワンコがおうちにきて「隅っこ暮らし」を始めたら、家族みんなの様子が見える場所を居場所にしてあげてください。「怖がって可哀想だから」「落ち着いて寝られないだろうから」と、人が見えない静かなお部屋にひとりぼっちにしてしまったら、ますます不安になってしまいます。

そして、人はいつも通りに生活することが大事です。気を遣いすぎる必要はありません。これからずっと一緒に暮らしていくのですから、ありのままの姿をワンコにわかってもらいます。テレビを見て大笑いする、掃除機をかける、家族みんなでご飯を食べたり談笑したり。

 

ワンコに無理に近寄って撫でようとしたり構いすぎたりせず、最初は「ご飯をあげる」「おやつをあげる」「お散歩に行く」など、ワンコが好きなことだけをしてください。そうしているうちにワンコは、
「あれ?この人怖くないかも」
「この人はいつもご飯くれる!オヤツもくれる!」
「お散歩にも連れて行ってくれる」
「ぼくが怖がることはなにもしてこない!!」
とワンコが安心するようになって、自分から寄ってきてくれるようになります。

そうなるまでに数ヶ月、もしかしたら年単位でかかる子もいるかもしれませんが、焦らずにゆっくりと、根気強く接していくことが大切です。

 

神石高原シェルターから譲渡センターにワンコが来たばかりの時、スタッフもワンコを「見ない、触らない、声かけない」から始めています。
最初は譲渡センターの犬舎の隅で震えているワンコも、毎日スタッフの動きを観察しながら、一生懸命に自分の置かれた環境を理解しようと頑張っています。そして
「ここは怖くない!大丈夫だ!みんな楽しそうにお散歩してる!」
そうわかるようになると、少しずつ、少しずつ、前に出てきて、スタッフに寄ってくるようになります。そんなふうに少しずつの変化を見せてくれるワンコに「頑張ってくれてるね!ありがとう」、という愛おしい気持ちが湧いてきます。

 

譲渡センターでは上手にお散歩ができたのに、家族のお家にいってからお散歩がうまく出来なくなるワンコもいます。初めての人と知らない場所を歩くことは、ワンコにとって不安でしかないからです。
「この道の先には何があるんだろう?」
「行っても大丈夫なのかな?怖いことが起きないかな?」
「この人はぼくを守ってくれるのかな?」
そんな思いから歩けなくなってしまうのです。

人や車、音などが苦手な子が多いので、先ずは人や車通りの少ない時間帯にお散歩してあげてください。初めは短いコースでも構いません。同じコースで、毎日少しずつ、距離を延ばしていきます。そして、ワンコが立ち止まってしまったら、引っ張って無理に歩かせようとしないのはもちろんですが、様子を見ながら勇気を出して、ワンコを誘導しながら前へ進んでみることも大切です。

 

あきる野譲渡センター からワンコを家族に迎えてくださった里親様から、こんな体験談をお聞きしました。

『お散歩コースにテニススクールのコートがあって、人の声とボールを打つ音にパニックになってしまい、それ以来そこは歩けなかったんですが・・・、今は歩けるようになりました!』

里親様はワンコが歩けない道を、先ずは「抱っこ」で通過したそうです(体重17キロあるワンコです!)。
次に、テニスコートの手前で動かなくなったワンコを諦めずにリードで誘導しながら、小走りで走り抜けたそうです。走り抜けたあとは、大好きなオヤツをあげて褒めていたとのこと。
歩けない道を通過してしまえば、あとは静かなお散歩コース。諦めずに何度もチャレンジしていくうちに、小走りで誘導しなくてもワンコ自ら歩けるようになったそうです。

「前に行けた!」
「怖くなかった」
「なにも起きなかった!」
「この先には楽しい道がたくさんあった!」
「大好きなおやつがもらえた!」
ワンコが経験を積むことで自分で学び、苦手なことを克服でき、
「楽しかった!!」で終わるお散歩ができるようになったのですね。

 

元野犬のワンコを家族に迎えるということは、大変なことや思う通りにならないことも多々あると思います。けれどワンコも一生懸命に新しい環境に馴れようと頑張っています。その頑張っている姿を見守りつつ、その子の個性に寄り添って、焦らずゆっくりじっくりと信頼関係を築いていきながら、少しずつ深まる絆に喜びを感じてくださいね!

 

 

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