2024年2月11日

【令和6年能登半島地震】ペットとの避難の実情と今後に向けた備え

ピースワンコ・ジャパンでは、令和6年能登半島地震にあたり、石川県珠洲市・輪島市を中心に複数の避難所を訪問し、物資の提供などの活動を行いました。

今回は、実際に現地に向かったスタッフに聞いた話をもとに、ペットを連れての避難の実情をご紹介しています。
また、今回の避難状況を踏まえてわかった必要な備えについてもご説明していますので、ワンちゃん・猫ちゃんを飼われている方は、いざという時のためにぜひ参考にしてください。

周囲に気を遣い、ほとんどの方が車中避難をされていた

今回スタッフが訪れた避難所では、ペットと一緒に過ごされる「同伴避難」の方はほとんど見受けられず、避難所に空きがある場合でも、多くの方が「車中避難」を選択されていました。
大勢の方々が集まる避難所での生活は、犬や猫が苦手な方がいたり、ペットが他の方や犬に対して吠えてしまう心配があったりすることから、どうしても周囲の方々に気を遣ってしまうためです。

同伴避難をされている方でも、避難所の中までペットと一緒に入れるケースは少なく、避難所の玄関や、同じ敷地内のビニールハウスで過ごされてる方もいました。
また、特に吠え癖のあるワンちゃんや大型犬を飼われている方は車中泊を選択されていることがほとんどで、比較的規模の大きい中学校の避難所でも、同伴避難は小型犬を連れられていた2組だけという状況でした。

必要なものを何も持ってこられなかった

今回の地震では石川県内の多くの家屋が倒壊し、自宅に荷物を取ってくることさえできない状況となりました。

ペットと一緒に避難をされた方々も同様、とりあえず命を守ることに精一杯で、ドッグフードやペットシーツなどの必需品を何も持ってこられなかったという方ばかりでした。
幸いドラッグストアが開いている地域では、フードを購入されている方もいました。

また、車中避難をされている方の中では、ケージやリードを持ってくることができず、車外にペットを連れ出すことができないという状況も見られました。
寒い車内で長時間過ごさなければならず、不自由な生活を続けられていました。

ペットの支援は後回しになる

日常と異なる暮らしをすることで、人間はもちろんペットもストレスを感じます。
普段はご飯を食べるワンちゃんが食べなくなったり、気性が荒くなったりすることもあります。

特に猫ちゃんは住居が変わることで大きなストレスがかかります。
ピースウィンズでは被災者の方から「飼っている猫を保護して欲しい」という連絡をいただき、猫の保護活動をされているネコリパブリック様に保護を依頼したりもしました。

地域の動物病院も被災し、飼い主さんは「人間のための医師や看護師の方は来ても、ペットのことまで気に掛けてくださる方はいままでいなかった」とおっしゃっていました。

特に病気を患っていたり高齢のワンちゃんが一緒にいる場合は、命に関わる問題になります。
糖尿病のワンちゃんの飼い主の方は、避難期間が長期化することでインスリン注射が足りなくなり、行きつけの病院ではなく隣の市の病院まで薬をもらいに行ったとのことでした。

これまで保護犬の引き出しからトレーニング、高齢犬や病犬のケアまで長年の経験があるスタッフは、出来る限りの支援ができればと連絡先を伝え、フードや好みのおやつ、温かいマットなどの物資を渡しました。

「どんなに大変な時でも、ペットと一緒に過ごしたい」

普段と異なる環境でペットと一緒に暮らすことは、飼い主さんにとってもワンちゃんにとっても大きな負担になります。
それらの負担を減らすため、避難所によっては”一時預かり”という形でペットを預けられるケージが設置されています。
また、ピースワンコでもペットの預かりを実施しています。

それでも、訪れた避難所の飼い主さんの多くは、”どんな状況であってもワンちゃんと一緒に過ごしたい”という理由で、預かりを希望されませんでした。

「本当はもう少し落ち着ける場所で過ごしたいが、これまで愛犬にたくさん助けてもらったから、最後までできる限り一緒にいたい。」
高齢のワンちゃんの飼い主さんは話されていました。

いざというときへのペットのための備え

今回の能登地震を踏まえて、災害発生時に向けたペットの備えの必要性を実感された方も多いのではないでしょうか。
現地の状況を踏まえ、スタッフが必要だと強く感じた準備について以下にご紹介します。

必要最低限の備蓄

フードや犬用のお水、ご飯やお水を入れる食器、ペットシートなど、暮らしに関わる最低限のものは、日頃から用意しておきましょう。
家屋が倒壊してしまうことも想定して、必要なものをリュックに詰め、玄関近くや車内に置いておけると安心です。

また、可能であれば、車中避難を行う際にも必要になるクレートやケージ、リードなども車に積んでおけると良いです。

薬や療法食の準備

前述している通り、避難所ではどうしても人間の暮らしが最優先されます。
ワンちゃん用の物資の提供は遅れてしまう可能性があるため、病気や高齢のワンちゃんがいる場合は、薬や療法食を日頃から多めに備えておくと安心です。

マイクロチップの装着

災害によって逃げ出したワンちゃんが、リードをせずに一匹だけで町を歩いている状況もありました。

マイクロチップを装着している場合、装着部分に機器をかざすことで登録番号が表示され、飼い主さんの情報を知ることができます。
迷い犬になってしまった場合に身元がすぐに分かるよう、マイクロチップは必ず装着しておくようにしましょう。

迷子札の装着

迷子札は、電話番号や住所を記載することのできる小さなプレートで、首輪に取り付けておくことができます。
マイクロチップと同様、ペットが逃げ出してしまった場合に連絡をもらえるよう、普段から装着しておきましょう。

最近では、犬のホネや肉球の形など、可愛いデザインの迷子札も増えています。
ぜひ探してみてください。

ワクチン接種や去勢などの実施

必要なワクチンの接種ができていない場合、他のワンちゃん・猫ちゃんへの影響を考慮し、同伴避難ができない可能性があります。
必要なワクチンは、いざという時のために平常時に接種しておくことが重要です。

避妊や去勢の実施については、感染症予防やホルモンの安定などに役立つこともありますが、必要性はペットの性格や体質によって異なります。
獣医師に相談し、必要があれば実施を検討してください。

避難所の規定の確認

環境省ではペットを連れての同伴避難に関する規定作りを始めていますが、今回の震災の中で、実態としてはまだまだ同伴避難は難しいということが分かりました。

避難所での同伴避難の可否は、各自治体の決まりによって異なります。
いざというときに近隣の避難所での同伴避難が可能かどうか、事前に規定やルールを確認しましょう。
避難所側が同伴の可否を公開されていない場合は、事前に問い合わせをしておくこともおすすめです。

ピースワンコ・ジャパンが今後行っていくこと

ピースワンコ・ジャパンでは、今後も引き続きペットに関連した支援活動を行っていきます。
以下は一例ですが、民間団体の非常時の取り組みとして知っておいていただけると、いざという時に頼れる場所ができるかもしれません。

ペットの一時預かり

ピースワンコでは、飼い主様からご依頼を受けた場合にワンちゃんの一時預かりを実施しています。
まずはご自身の環境を整えてからペットと安心して暮らしたい、ワンちゃんの健康のことを考えて少しでも落ち着いた場所で暮らしてほしい、などの理由から、ご連絡をいただいています。
➤参考: 預かりワンコを再び、浜松譲渡センターにて受け入れました。

能登地震では、市と連携して、ペットと安心して同伴避難できる専用の避難所を開設しました。
今後もニーズに応じて、避難所や、ペットを日中にお預かりする場所を作るなど、生活再建に向けたサポートを行っていく方針です。

各地域の保護団体との連携

前述したネコリパブリック様との協力のように、各地域で活動されている保護団体との連携をとっていくことも重要と考えています。
例えば熊本の洪水被害などの過去の災害発生時にも、地域の団体の皆様と連携しながら支援活動を行いました。

非常時に迅速に連携ができるよう、日頃から情報共有や協働体制の整備をしていくよう進めていきます。

おわりに

引き続き、ピースワンコ・ジャパンでは能登半島地震でのペット避難支援を行ってまいります。
最新情報はニュース、ジャーナルでご確認ください。

また、今後のペット支援に向けて、以下よりご支援をいただけますと幸いです。

令和6年能登半島地震 ペット支援へのご寄付に、どうかご協力のほどよろしくお願いいたします。

●Readyfor支援ページ(カード決済での支援)
https://readyfor.jp/projects/helpnoto_for_animals

●Yahoo!ネット募金ページ(Tポイント寄付も可能)
https://donation.yahoo.co.jp/detail/925073


※Readyforプロジェクトページへ遷移します。

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