元野犬だった犬を家族に迎え入れるのは、とっても素晴らしい経験です。けれど、初めて保護犬を迎える方にとっては、勇気のいることかもしれません。
「野犬は一緒に暮らすのが難しいと聞いたんですけど・・・」と心配する声をピースワンコ生駒譲渡センターでもよく聞きます。今回は、保護犬を迎えた時に感じやすい「難しさ」のポイントとその対策についてご紹介します。
人馴れしていない
今までずっと犬と一緒に暮らしてきた方でも、元野犬たちの反応に戸惑いを感じる方がたくさんいらっしゃいます。
「名前を呼んでも来てくれないの?」
「今までそうやってきたから、チッチッと舌をならしてみたけれど震えている…」
「犬はナデナデ好きなんじゃないの?撫でようとしたら逃げちゃった!」
「公園で会うワンコは知らない人にも尻尾を振って来てくれるのに、近寄ってくれない」
「元野犬の子でも会った瞬間に、お友達!家族になれる!と思っていたのに。。時間を掛けて関係を築いていかないといけないんだ!」
こんな驚きのお声をよく聞きます。
元野犬の保護犬たちは、保護されるまで野山の中で暮らしていたので、人間と暮らしたことがありません。野山では警戒心や防衛本能が強くないと生きていけないので、慎重な子が多いのです。
そのため、自分から人に寄っていったり甘えたりすることが出来ないワンコがほとんど。初めての人や初めての環境に慣れるまで、時間がかかる子が多いんです。
でも私たち人間だって、初めて会う知らない人や、初めての環境に行ったとき、すぐに慣れて順応できる人もいれば、慣れるまでにとっても時間がかかる人もいますよね。ワンコも同じ。怖がりなワンコには、ゆっくりと時間をかけて関係を作っていくことは、当然のことですよね。
脱走対策
どんなに大人しそうな犬でも、子犬でもシニア犬でも、衝動的に逃げ出してしまうことがあります。外の世界への興味が強かったり、安全な場所を求めたり、パニックになったり。色んな理由が「脱走」に繋がります。
散歩中も油断はできません。大きな音がしたり、苦手なモノや苦手な人に出会った時などは、逃走してしまう危険が大きくなります。脱走は犬にとっても危険が多いため、対策が必要です。
かつて生駒譲渡センターに在籍していた「ポッチ」も、そんなワンコのひとり。
2020年1月28日に推定3歳の頃にピースワンコに保護された女の子の「ポッチ」は、可愛らしく大人しそうな見た目に反して、脱走への情熱がイヌ一倍強かった子でした。
生駒譲渡センターに来た日、私たちスタッフが最初に目にしたのは、「ポッチ」が高さ2メートル、隙間12センチのお部屋の扉を乗り越えようとしている姿でした!
すごい子が生駒にやってきた…!スタッフみんなビックリ!元野犬の保護犬たちに慣れているはずのスタッフも、ヒヤヒヤしながらのスタートでした。
「ポッチ」の脱走対策として私たちは、物理的に脱走を防ぐ工夫をし、「ポッチ」が安心できる環境を整え、楽しい時間をふやしました。
扉に足が掛からないようにビニールをつけたり、お部屋の中にクレートを入れて少しでも落ち着いて過ごしてもらえるようにしたり、大好きなお散歩にできるだけ連れ出して大好きなワンコとの楽しい時間を作ってあげました。
そうしているうちに、だんだんと「ポッチ」の緊張が緩んでくるのが分かりました。クレートのないお部屋でもリラックスして過ごすことができるようになり、大好きなお散歩では、慣れた道なら初めましての方とも歩けるようになり、オヤツも食べに来ることができるようになりました!
脱走対策のヒント
「脱走対策」というととても物々しい印象ですが、犬と人が安心して過ごせる環境づくり、と考えていただければと思います。私たちが行っていることの一部をご紹介させていただきますので、ぜひご参考ください。
物理的に脱走できない環境をつくる
犬が脱走できないようにケージなどで四方を囲い込んだ、犬が安心して過ごせる空間を作ることが大切です。でもケージなど囲われている中に入れられただけでは、犬だって窮屈ですよね。犬が寛げるように、クレート(キャリーケース)の中に入ると安心できる子にはクレートを準備し、ドッグベッドがあると落ち着ける子にはドッグベッドを置いてあげると良いでしょう。また人との関係が出来るまでは、バスタオルやシーツなどで囲いを覆って目隠しをして外から中が見えないようにして、プライベート空間を作ってあげた方が良い子もいます。
犬が脱走できない状況を作る、ということは人側の安心感がとても大きくなると思います。気を抜くのではなく、脱走できない環境が整っていると、落ち着いて犬に接することができるようになるからです。そして犬も、囲いに足を掛けて登ろうとして怪我をする場合があるので、危険を減らすことが出来ます。
犬が好きなことを増やす
毎日一緒に過ごす中で、ワンコが少しでも楽しいな!嬉しいな!美味しいな!というプラスの体験ができる時間が増えると、かかわる人や場所への愛着が湧くようになります。
たとえば、
オヤツが好きな子なら、どんな食感や食材が好きなのか?
オモチャが好きな子なら、どんな形状のものが好きなのか?どんな遊び方が好きなのか
犬と遊ぶことが好きな子なら、どんな相手と相性が良さそうか?
散歩が好きな子なら、どんなコースが好きなのか?どんな散歩時間の過ごし方が好きなのか?
犬それぞれに「好き」がいっぱいあるので、自分の愛犬が何を「好き」なのかを知り、「好き」を増やしてあげてください。
「ポッチ」は、家族とのご縁が繋がり、2024年7月31日に卒業していきました。まだ1ヶ月しかたっていませんが、全ての窓や出入り口に脱走対策をしてもらった新しいお家にも少しずつ慣れて、落ち着いた毎日を過ごしているそうです。先住犬たちともすぐに馴染んで仲良く暮らしながら、大好きな川遊びにも毎週連れて行ってもらって新しい犬生を満喫中です!
お家でご家族と過ごせる日々を信じて、ワンコの可能性を信じて、できることをする。そうすれば時間がかかったとしても必ずワンコは応えてくれます。元野犬のワンコと楽しく日々を過ごせるヒントになると嬉しいです。
※ピースワンコは、皆さまからのご寄付だけで活動しています。一頭一頭に寄り添ったお世話ができるのも、皆さまのご支援のお陰です。ワンコの命を守る活動を続けていくために、ご支援をよろしくお願いいたします。