犬のしっぽでわかる感情と異常サイン|正しい読み取り方と注意点を解説

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愛犬がいつもと違うしっぽの動きをしていたり、やたらと自分のしっぽを追いかけていることはありませんか。「これって何かのサイン?」と気になったことがある方も多いはずです。しっぽは、犬の“心の動き”を伝えてくれる大切な手がかり。この記事では、しっぽの振り方や位置が意味する感情、ストレスや病気のサインとしての異常行動など、犬のしっぽについて詳しく解説します。しっぽからの言葉を知ることで、今よりもっと愛犬の気持ちがわかるようになるはずです。

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犬のしっぽが持つ役割

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犬のしっぽの役割は、まだ完全には解明されていません。しかし、私たちが想像する以上に多くの大切な役割があるとされていて、日々研究が進められています。

 感情表現の機能

しっぽの最も代表的な役割は、感情を表すコミュニケーションツールです。振り方や高さ、動きの速さによって、喜び・不安・警戒など多様な感情を伝えます。近年の研究でも、しっぽは人との関わりや犬同士の非言語的な信号として非常に重要であるとされています。

バランスを保つ機能

従来、犬のしっぽは走行時や方向転換時にバランスを取るために使われていると考えられてきましたが、最新の研究では大きな運動時には影響が小さいことが示されました。しかし、一部の大型犬や尾の長い犬種では、体の細かい動きの調整には関与している可能性もあると言われています。

体温調節の機能

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犬のしっぽの直接的な体温調節機能は、科学的にはまだ解明されていません。しかし、寒い地域の犬が睡眠時に尾を体に巻きつけて寝ていたり、暑い時期に尾を床につけている姿が報告されていることから、体の中心部と同様に体温調節機能が期待されており、こちらも今後の研究に注目です。

出典:Study Finds That Dogs Use Their Tails Mainly to Communicate AMERICAN KENEL CLUB
Potter, A. W., Gonzalez, J. A., Blanchard, L. A., & Friedl, K. E. (2020). A canine thermal model for simulating temperature responses of military working dogs. Journal of Thermal Biology, 92, 102662.

しっぽが表す犬の気持ち一覧

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犬のしっぽの動きや位置は、そのときの感情を読み取る大切なヒントになります。以下では、よく見られる4つのしっぽの形と動き、そしてそれらが示す気持ちをご紹介します。

しっぽをピンと立てる|警戒・興奮・自信

しっぽを振らずにまっすぐ高く上げている場合、警戒や興奮状態にあるか、自分自身を有意に見せている可能性があります。この行動は、意識が一点に集中しているときによく見られます。犬や人が対面している場合は興奮状態から攻撃に繋がることもあるため、愛犬の緊張感を受け取り、注意することが大切です。

しっぽを下に垂らす|恐怖・不安・服従

しっぽを足の間に入れるようにして垂らしている場合、それは恐怖や不安、または服従の気持ちを表しています。このような姿勢は、「自分に危害を加えないで!」と相手に示している状態であり、叱られた直後や知らない場所にいるときなど、心細いときに見られます。

もし頻繁にこのポーズを取るようであれば、生活環境や接し方を見直す必要があるかもしれません。ストレスサインとしても重要です。

しっぽを大きく左右に振る|喜び・親しみ・安心

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しっぽを大きく左右に振るのは、犬がとてもリラックスしていて、好意的であることの表れです。特にお尻ごとブンブンと揺れているような状態は、犬が安心していて「うれしい!」という感情を全身で表しています。

ただし同じ「振る」動作でも、振る速さや角度によっては、以下のように緊張している場合もあるので注意が必要です。

しっぽを小刻みに振る|緊張・困惑・戸惑い

しっぽを一定の位置で小刻みに振っている、振るスピードが細かく早いなどの場合、犬がその場の状況を読もうとしていたり、戸惑っている可能性があります。初めての場所や初対面の人に会ったときなど、警戒心と好奇心が入り混じっている状態でよく見られます。「しっぽを振っているから安心」とは思わずに、総合的に見て判断する必要があります。

出典:Quaranta, A., Siniscalchi, M., & Vallortigara, G. (2007). Asymmetric tail-wagging responses by dogs to different emotive stimuli. Current Biology, 17(6), R199–R201.
Quaranta, A., Siniscalchi, M., & Vallortigara, G. (2007). Asymmetric tail-wagging responses by dogs to different emotive stimuli. Current Biology, 17(6), R199–R201.

しっぽを追いかける・噛むのは異常?

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自分のしっぽを追いかけたり噛んだりする行動には、見逃せないサインが隠れていることがあります。ただの遊びだと思って放置すると、ストレスや病気を見逃してしまうかもしれません。

しっぽをおもちゃとして認識している

自分のしっぽをおもちゃと認識し、短時間、追いかけて遊んでいるケースがあります。子犬でよく観察され、成長とともに落ち着いてくる場合が多いですが、長期間頻繁に続く場合は以下の点に注意が必要です。

ストレスが原因

しっぽを過剰に追いかける・噛む行動は、ストレスのサインであることが多いです。特に生活環境の変化や飼い主とのコミュニケーション不足、不安感が原因となるケースが報告されています。こうした行動は「常同行動」といい、不安な気持ちの現れとされています。愛犬にストレスがかかっていないかを見直す必要があります。

運動不足や暇つぶし

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刺激が足りないと、犬は暇つぶしとして自分の体の一部をおもちゃ代わりにしてしまうことがあります。十分な散歩や遊ぶ時間が与えられていない場合に、ストレス発散の手段として自分のしっぽを執拗に追い回したりするとされています。

 病気の可能性も

しっぽを噛む行動が急に始まったり何度も繰り返す場合は、精神的・身体的な病気のサインの可能性もあります。しっぽに違和感を覚えるような行動がみられたら、早めに動物病院を受診しましょう。

しっぽの動きがおかしいときに疑う病気

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いつもと違うしっぽの状態や、気にしている様子が見られた場合、病気のサインかもしれません。ここでは注意すべき代表的な病気を紹介します。

 馬尾症候群やヘルニアなど神経の異常

しっぽの先や付け根を痛がる、突然しっぽが動かなくなるような場合は、馬尾症候群や椎間板ヘルニアなど神経の病気の可能性があります。これらは神経の圧迫により、尾や後肢のしびれ、痛みを引き起こします。特に大型犬に多く見られ、診断するためにはMRIやCT検査が必要です。発見が遅れると歩行障害や排泄障害につながることもあるため、注意が必要な病気です。

 皮膚炎や寄生虫などの肌トラブル

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しっぽの付け根や内側の皮膚が赤くなっていたり、かゆみを伴う場合は、ノミ・ダニなどの寄生虫感染や皮膚炎の可能性が考えられます。舐め続けて脱毛や出血を起こすこともあるため、悪化する前に動物病院で検査を行いましょう。

脱毛はホルモン疾患の可能性も

しっぽが極端に脱毛している状態は「ラットテイル」と呼ばれ、副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)や甲状腺機能低下症など内分泌疾患の症状の可能性があります。特にシニア犬で多く見られ、放置すると合併症を引き起こすリスクもあり、注意が必要です。

ハッピーテイル症候群に注意

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「ハッピーテイル症候群」とは、嬉しさのあまりしっぽを強く振りすぎて負傷したり、出血や潰瘍を起こす病態です。特に大型犬に多く、ケージや壁に激しく尾をぶつけてしまうことで発症します。保護用のしっぽバンデージを使うなどの対策が必要です。

しっぽから気持ちを読み取るためのコツ

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しっぽの動きだけを見て犬の感情を判断するのは、難しいものです。正しく気持ちを読み取るには、いくつかのコツがあるため、できることから始めてみましょう。

全身のしぐさと組み合わせてみよう

犬の感情は、しっぽだけでなく耳・目・口・姿勢・声など全体のボディランゲージを見て判断するのが基本です。例えばしっぽを振っていても、耳を後ろに伏せて体を低くしているなら、不安や緊張を抱えている可能性もあります。体全体のボディランゲージを見て気持ちを汲み取ってあげましょう。

その子の普段の姿を知っておく

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感情の読み取りで最も重要なのは、「その子のいつもの様子」を把握しておくことです。普段はしっぽを高く保っている子が、急にだらんと下げるようになった場合は、なんらかのサインだと気づけるはずです。性格によってしっぽの振り方にも差があるため、普段の様子を意識して観察しましょう。

やさしく扱いケアも大切に

しっぽは骨と神経で構成されていて、デリケートな部分です。無理に触ったり、強く引っ張ったりすると痛みやケガの原因になります。日々のケアでは、ブラッシングや皮膚チェックをしながら異常がないかをやさしく確認してあげましょう。小さな変化を見逃さないことが、健康維持のカギです。

しっぽを知って愛犬ともっと仲良く

犬のしっぽは生活のあらゆる面を教えてくれるセンサーです。しっぽの動きや状態を観察することで、愛犬が何を感じているのか、何を必要としているのかを理解できるようになります。正しい知識を持って日々のコミュニケーションに活かせば、より信頼関係が深まり、愛犬との健やかな毎日につながるはずです。

【執筆・監修】
原田 瑠菜
獣医師、ライター。大学卒業後、畜産系組合に入職し乳牛の診療に携わる。その後は動物病院で犬や猫を中心とした診療業務に従事。現在は動物病院で働く傍ら、ライターとしてペット系記事を中心に執筆や監修をおこなっている。

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