2024年6月28日

元野犬のワンコとの距離の縮め方~「イーピン」の物語~

ピースワンコが保護しているワンコのほとんどは、元野犬です。野山での暮らしの中で生き残るためには、警戒心や防衛本能は大切な要素だったため、保護されてからも怖がりで人や環境に慣れるまでに時間がかかる子がたくさんいます。

そんな元野犬の保護犬たちに神石高原シェルターでお散歩や人馴れのトレーニングを施してから、譲渡センターで新しい家族を探します。

トレーニングを施したと言っても、完全に克服できているわけではありません。初対面の人に怖がったり、大きな音が怖かったり、車が怖かったり。怖いものや苦手なものは、ワンコによってさまざまです。譲渡センターのスタッフは、この子たちは何が苦手なのか?何が怖いのか?どのように接したらいいか?など、日々探りながらお世話しています。

ピースワンコ・ジャパン福山譲渡センターで里親募集中の「イーピン」も、人に対して警戒心が強い女の子です。お散歩は引っ張らずに上手に歩くことができますが、人が近寄ろうとすると瞬時に逃げたり、おやつをあげようと手を伸ばすだけで震えたり。床に置いたおやつも警戒して食べず、常にビクビクと怖がっていました。

無理に距離を詰めない

怖がりなワンコと接するとき、スタッフが最初に気をつけるのは「無理に距離を詰めないこと」です。

「人は怖くない」ことを分かってもらうために、最初はあえて無理に近づかず、お散歩やご飯などのお世話をしながら少しずつ距離を縮めていくようにします。例えば、お散歩の前後におやつを床に置いて、床に置いたおやつを食べられるようになったら、今度は手からおやつをあげてみたり。段階を踏んでいきます。最初は怖がっていた「イーピン」も日を重ねるごとに、手からおやつを食べられる回数がだんだんと増えていきました!

福山譲渡センターでは室内イベントを毎月開催しており、たくさんの方にご来場いただいています。ふれあいイベントでは、センター内のフリースペースでワンコにおやつをあげながら自由に触れ合っていただくので、ワンコと人の距離が自然と近くなります。「イーピン」は最初怖がってしまい逃げ回ることがほとんどでした。けれど、他のワンコたちが来場者からおやつをもらっている姿を見て、「人からおやつをもらえる」と認識して、恐る恐るではありますが少しずつ自分から来場者におやつをもらいに行けるようになりました。

今では、初対面の方にも自分から近寄っておやつをおねだりしたり、他のワンコより積極的にアピールするようになりました。外部の譲渡会に参加した時も、サークル越しにおやつをもらいに行けるようになり、私たちスタッフも驚くほどの成長ぶりです!

たくさん経験させてあげる

最初は無理に距離を詰めないことが大事ですが、同じぐらい「たくさん経験をさせてあげること」も大切です。

人と一緒に暮らしたことがないワンコたちは、新しい家族ができて新しい環境にいくと変化に戸惑ってしまい、シェルターや譲渡センターで出来ていたことが出来なくなることが多いです。そんな時は、ワンコに寄り添いながら、ワンコたちが何が苦手で何が好きかを理解し、様子を見ながら毎日少しずつ距離を縮めていきます。ワンコたちは周りをよく観察しています。そしてたくさんのことを吸収しているので、ゆっくりと色んな経験をさせてあげてください。そうすることで、私たちが驚くほどの成長を見せてくれるようになります。

シェルターや譲渡センターのスタッフは、元野犬の子に何か特別な訓練をしているわけではありません。無理に距離を詰めようとせずに、一頭一頭のワンコが何が苦手で何が好きかを理解してワンコの様子に合わせながら、「イーピン」のように少しずついろんな経験をさせるようにしています。そうすることでワンコも想いに応えてくれ、良い関係性が築けるようになります。

保護犬を家族に迎えることを考えられている方、是非一度シェルターや譲渡センターにお問い合わせください。私たちスタッフが一頭一頭の性格や魅力をお伝えし、お迎え後もしっかりサポートさせていただきます。皆さまからのご連絡お待ちしております!

※ピースワンコは、皆さまからのご寄付だけで活動しています。一頭一頭に寄り添ったお世話ができるのも、皆さまのご支援のお陰です。ワンコの命を守る活動を続けていくために、ご支援をよろしくお願いいたします。

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