犬の健康診断は必要?受ける時期から費用や検査項目・保険の活用方法まで詳しく解説【獣医師監修】

動物病院から届く愛犬の健康診断の案内、放置していませんか?「健康診断ってハードルが高そう」「費用や体への負担も心配……」そんなふうに感じる方も多いかもしれません。この記事では、犬の健康診断がなぜ必要なのか、何歳から・どのくらいの頻度で受けるべきか、検査内容や費用の目安、そして保険の活用方法までわかりやすく解説します。大切な愛犬とこれからも元気に長く暮らすために、愛犬の健康について考えてみませんか。

犬の健康診断はなぜ必要?

健康診断は、愛犬の健康を守るために欠かせません。愛犬は人間と違い「体調が悪い」と訴えることができず、飼い主が気づいたときにはすでに病気が進行しているケースもあります。そのため病気の早期発見と早期治療のために、動物病院での定期的な健康チェックが必要です。

特に血液検査や超音波検査、レントゲンなどは、外見では見つからない異常を見逃さないためにとても有効です。適切な時期に忘れず検査を受けるようにしましょう。

健康診断はいつから受けるべき?

愛犬の健康診断は、実は若い時期からスタートするのが理想です。「まだ若いから大丈夫」と思っていると、見えない異常を見逃してしまうリスクもあります。ここでは、年齢別に受けるべき時期の目安を説明します。

先天性疾患を調べるなら早めに

子犬期は体が未発達なため健康診断が不要だと思われがちですが、実は先天性疾患を発見する重要な時期でもあります。先天性の心疾患や骨格・内臓疾患など、目に見えない問題が潜んでいることもあるため、早めの受診をおすすめします。生後6ヵ月〜1歳ごろ、ワクチン接種や去勢・避妊手術の相談と一緒に、初回の健康診断を検討しましょう。

小型・中型犬は7歳からが目安

一般的に小型犬・中型犬は、7歳ごろからシニア期に入るとされています。この時期から体調の変化や内臓機能の衰えが少しずつ始まるため、年に1回以上の健康診断が推奨されます。

特に肝臓や腎臓など、血液検査の数値に変化が現れやすくなるものを中心に調べるのがおすすめです。超音波検査やレントゲン検査も取り入れ、内臓から骨格まで全身の異常の有無をしっかりチェックしておくと安心です。

大型犬は5歳から注意しよう

大型犬は成長も老化も早いため、5歳前後からシニア期に差しかかります。特に心臓病や関節・骨疾患など、大型犬に起こりやすい病気には注意が必要です。早めに健康診断を取り入れることで、病気への備えが可能になります。

年齢・体調に応じた受診間隔の目安

犬の健康診断は、年齢や体調によって適切な頻度が異なります。一般的な目安を知り、必要なタイミングを逃さず愛犬の健康維持に役立てましょう。

6歳までは年に1回が目安

6歳までの若い犬は、体力もあり目立った異常が出にくい時期ですが、油断は禁物です。年に1回の健康診断を行い、血液検査や糞便・尿検査、必要に応じてレントゲン検査を受けておきましょう。

元気なときの数値を記録しておくことで、将来の体調変化を早く発見できるメリットがあります。その時々の心配事や体調の変化を獣医師と相談しながら、生活習慣を整えることが大切です。

7歳以降は年に2回が安心

7歳以上のシニア期に入った愛犬には、半年ごとの健康診断をおすすめします。徐々に全身の衰えが進む年代のため、細かい変化も見逃さないことが重要です。特に血液検査項目を増やし、超音波検査や血圧・心電図なども加えるなど、その子に応じて検査プランを検討してあげるとよいでしょう。

持病がある場合は事前に相談

持病がある場合は、健康診断の回数や項目が変わる場合があります。たとえば、心臓病、糖尿病、腎疾患などの慢性疾患を抱えている場合は、数ヵ月ごとにチェックを行うのが一般的です。健康診断の結果をもとに、お薬の見直しや治療方針の調整を行うケースが多いため、かかりつけ医と相談して決める必要があります。

健康診断をしないとどうなる?

健康診断をまったく受けないことは、知らず知らずのうちに愛犬の病気を見逃してしまう可能性があるため、注意が必要です。ここでは、健康診断をしない場合のリスクについて解説します。

「元気だから受けない」はキケン

「愛犬は元気そうだから健康診断は不要」と考えるのは非常に危険です。犬は本能的に弱みを隠すため、明らかな症状が出るころには病気が進行していることもあります。

レントゲン検査で初めて結石がわかったり、血液検査をしてみると腎臓の数値が悪かったなど、見た目と異なる結果になる場合もめずらしくありません。症状が出る前に早めに異常を見つけてあげることが重要です。

見逃されやすい病気の初期症状

病気の初期症状は非常にわかりにくく、家族でも気づきにくいのが特徴です。食欲の軽い低下や活動量の減少、わずかな体重減少など、老化の症状と似ているため「もう年かしら」と誤解されることも多いです。食欲や元気の低下以外にも、トイレの失敗が増えたり夜泣きの増加、おしっこやうんちの性質の変化など、些細な変化でも要注意です。

健康診断の検査内容

健康診断では問診から始まり、身体検査、血液検査、尿検査、レントゲンや超音波検査など、さまざまな項目があります。動物病院によって費用ごとのプランを選んだり、その子に応じて組み合わせて決める場合もあります。どんな項目を受けるべきかは、かかりつけ医と相談してみましょう。

問診・視診・触診・聴診

健康診断の第一歩は、獣医師による問診と一般的な身体検査です。普段の様子、食事、排泄、行動の変化などを詳しくヒアリングします。

視診や触診では、目・耳・皮膚など全身を観察し、炎症やしこりの有無がないかを確認します。この段階で何らかの異常があれば、別途細かい検査を行う場合もあります。

また、飼い主から詳しく話を聞けるのもこの時間。最近の体調の変化や気になることなど、獣医師になんでも相談してみましょう。

血液検査(血球・生化学)

血液検査は、犬の内臓機能を調べる上で欠かせない検査です。「血球検査」では赤血球・白血球・血小板などの数をカウントし、貧血や炎症などの有無などを確認します。「生化学検査」では、肝臓・腎臓・膵臓・脂質代謝など臓器の機能検査が可能です。

尿検査・便検査

尿検査は、泌尿器系の異常を見つけるために有効な検査です。尿比重やpH、たんぱく、糖分、血液混入などを調べることで、腎疾患・膀胱炎・糖尿病などの兆候が出ていないかがわかります。

また便検査では、寄生虫感染や消化不良の有無をチェックできます。特に子犬や外出機会の多い犬は、寄生虫感染のリスクが高いため、積極的な検査をおすすめします。ぜひ当日の朝に取ったうんちやおしっこを持参しましょう。

レントゲン検査

レントゲン検査では胸部と腹部を中心に、臓器や骨の大きさ、形状を確認します。骨格異常や骨の腫瘍、内臓の結石、腫瘤の有無もレントゲンで見つかることがあります。

特に高齢犬では、胸部レントゲンによる心臓肥大の早期発見がとても重要です。一般的には、麻酔なしで撮影でき、当日中に結果がわかる場合がほとんどです。

超音波検査(エコー)

腹部超音波検査(エコー検査)は、体の内部をリアルタイムで見ることができる検査です。消化管、肝臓、腎臓、脾臓、膀胱など各臓器の状態を詳しく観察でき、腫瘍や結石、構造の異常などを発見することができます。

また胸部超音波検査では、心臓の形や機能を計測して心臓病の検査を行ったり、肺や気管の状態を確認することもあります。

超音波検査は、痛みがなく体への負担が少ないため、シニアや持病持ちの子でも安心です。

そのほかのオプション検査

健康診断のコースによっては、さらに詳しい検査の追加が可能です。たとえば、心電図や血圧検査、眼科検査(眼底・眼圧)、甲状腺ホルモン(T4)や腎臓機能検査(SDMA)、さらにはCT検査やMRI検査など、状況に応じて検査を行います。愛犬の体調や年齢、今までかかった病気に応じて、獣医師と相談して追加検査を検討しましょう。

健康診断の費用相場

検査内容によって費用は大きく異なるため、無理なく計画を立てることが大切です。ここでは、一般的な健康診断の費用相場を検査別に紹介します。

血液検査のみは約5,000〜10,000円

血液検査だけを受ける場合、費用の目安は5,000円〜10,000円程度が一般的です。血球検査(赤血球・白血球・血小板)や生化学検査(肝臓・腎臓機能など)を中心に、内臓の健康状態を確認します。

総合健診は約10,000〜20,000円が目安

身体検査+血液検査+尿検査・便検査を含む健診コースでは、費用は約10,000〜20,000円が相場です。病院によってはさらにレントゲン検査や超音波検査が加わることもあり、より精度の高いチェックが可能になります。年齢や持病に応じたコースを受け、必要に応じてオプション検査を追加する形が一般的です。

20,000〜30,000円以上のものまで

総合的な健康診断をさらに細かく行う際は、20,000〜30,000円以上かかる場合もあります。血液検査に加えてレントゲン検査、超音波検査、心電図・血圧検査、ホルモン測定などがセットになったコースです。

検査には時間がかかるため、日帰り入院を行う場合もあります。

当日の流れと事前準備

健康診断を受ける際は、当日スムーズに進めるための事前準備が大切です。食事や採尿・採便、普段の様子の記録など、できる限りの準備をしておくことで検査の精度が上がり、診察もスムーズになります。

絶食が必要な検査か確認を

血液検査や超音波検査では、検査結果に影響を及ぼさないように、絶食が必要な場合があります。食べ物が残っていると、血糖値や脂質の数値が高く出たり、超音波検査で異常が見えにくくなる可能性があるためです。

しかし病気によっては、逆にご飯を食べてくる必要がある場合や、薬を投薬して何時間後に血液検査をするなどの決まりがある場合もあります。事前に動物病院に確認しましょう。

尿・便は当日朝に採取して冷蔵保存

尿検査と便検査には、新鮮なサンプルが必要です。採取は当日の朝が理想で、持参までの間は冷蔵保存することで細菌の繁殖を防ぎます。

排尿・排便のタイミングが読めない場合は診察時間を午後に調節したり、通院前にお散歩などでトイレを促すなど、なるべく新鮮なサンプルが取れるように工夫をしてみてください。トイレシートを裏返したり、紙皿を活用すると採取しやすいのでおすすめです。

普段の様子はメモや動画で共有

問診時に役立つのが、愛犬の普段の体調や行動の記録です。食欲、排泄、活動量、呼吸の状態など、気になる点はメモしておきましょう。できれば動画で咳や歩き方の異変を撮影しておくと、獣医師が症状を正確に把握しやすくなります。

検査は1時間程度、結果は即日〜数日

入院を必要としない健康診断の所要時間は30分〜1時間程度が一般的です。犬の負担を考慮し、休憩を挟みながら時間をかけて検査をする場合もあります。

一部の結果は、当日中にわかることもありますが、外部機関に回す検査は数日後になるケースが多いです。後日再診予約が必要な場合もあるため、予定に余裕を持っておきましょう。

健康診断で異常が見つかったら

万が一、健康診断で異常が見つかっても、すぐに悲しむ必要はありません。小さな異常を早めに把握できたこと自体が愛犬にとって大きなメリットです。

軽度の異常は経過観察でOKなことも

数値に軽度の異常があった場合、すぐに治療ではなく経過観察となることも少なくありません。特にシニア犬では年齢による自然な変化で数値が動くこともあり、家族と獣医師で今後の方針を相談して決めます。焦らず、冷静に対応しましょう。

早期発見は治療の選択肢を増やせる

病気を早期発見できれば、治療の幅が広がります。初期段階であれば、薬での治療や食事療法だけでコントロールできるケースも多く、手術や高額な治療を回避できる可能性があります。万が一手術が必要だった場合でも、初期の段階で手術したほうが手術リスクは低くすみます。

健康診断の費用は保険でカバーできる?

通常、ペット保険は病気やケガの治療費を補償対象としていますが、最近では健康診断費用の一部をカバーできる特約プランも登場しています。保険会社によっては健康診断をプレゼントしてくれる保険もあるため、要チェックです。加入している保険内容をよく確認し、健康診断のサポートが受けられるか事前にチェックしておきましょう。

愛犬と1日でも長く一緒にいるために

愛犬の健康診断は今だけでなく、将来の健康を守るためにも受けることが大切です。愛犬の健やかな毎日を守る準備を今から始めてみてはいかがでしょうか。

【執筆・監修】
原田 瑠菜
獣医師、ライター。大学卒業後、畜産系組合に入職し乳牛の診療に携わる。その後は動物病院で犬や猫を中心とした診療業務に従事。現在は動物病院で働く傍ら、ライターとしてペット系記事を中心に執筆や監修をおこなっている。

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