犬と暮らしていると、言葉にしきれない場面に何度も出会います。たとえば、何かを察するような目つき。ため息。夜の寝息。それらはぜんぶ、犬からの手紙のようなもので、こちらが受け取れるかどうかは、そのときの心の余白しだいなのかもしれません。
この短歌たちは、そんな瞬間をひとつひとつ拾いあげて言葉にした試みです。犬との日々をすくいあげられたらいいなと思いながら綴りました。
ささやかな光のような五首ですが、もしどれかが、あなたの犬との記憶と重なるなら——
それはきっと、犬がこっそり渡してくれた『気持ちのかけら』なのかもしれません。






自己寸評と言い訳がたり
この五首は、どれも「犬と暮らす日々のすきまにある、ちいさな感情の揺れ」を拾いあげるような気持ちで詠みました。
声にならない会話や、ふとした気配にこもる意味。それをちゃんと受け止めたい、という自分の願望でもあったと思います。
短歌は、一見して「何も起きていない」ような情景にも、感情をそっと染み込ませることができる器だと思っています。
この五首も、犬がただ寝ているだけ、ただ目を合わせただけ、ただ潜っただけ、というような瞬間ばかりです。
でも、それらはすべて「言葉にならない大切なもの」であり、もしかしたら読んでくださる方の心の奥にも、そっと触れる何かがあればいいなと思いながら綴りました。
なかには、老いや別れを意識したものもありますが、それをあえて悲嘆としてではなく、静かな受け止めとして書けたのは、犬たちがそう生きているからかもしれません。
彼らの時間の流れは速くて、でもいちいち立ち止まったりせず、前を向いてしっぽを振る。
その強さに、人間のほうが教えられてばかりです。
……とか言いつつ、実際は、夜な夜なじんわり泣いたり笑ったりして書いてました。
もっと上手くなりたいし、もっと犬に近づけたらいいなとも思います。
そんな気持ちのまま、また次の一首を探しています。
文と写真:秋月信彦
某ペット雑誌の編集長。犬たちのことを考えれば考えるほど、わりと正しく生きられそう…なんて思う、
ペットメディアにかかわってだいぶ経つ犬メロおじさんです。 ようするに犬にメロメロで、
どんな子もかわいいよねーという話をたくさんしたいだけなのかもしれない。
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