
愛犬が地面をクンクン、家に帰っても飼い主の足や手をしつこく嗅ぐ…そんな行動に「なぜ?」「落ち着かないけど大丈夫?」と不安を感じたことはありませんか?
実は、犬のにおい嗅ぎには本能的な意味や気持ちのサインがたくさん詰まっています。本記事では、犬の散歩中のにおい嗅ぎから、飼い主や他の犬・部屋を嗅ぐ理由や注意点、しつこいにおい嗅ぎへの対処法までをやさしく解説します。愛犬の「におい嗅ぎ」を正しく理解して、健やかな犬生活をサポートしてあげましょう。
犬がにおいを嗅ぐのはなぜ?

犬がにおいを嗅ぐのは非常に重要な行動です。嗅覚は犬で最も発達した感覚で、人間の1万倍以上ともいわれるほど優れています。この鋭い嗅覚で、犬は周囲の情報を細かく読み取っています。
たくさんの情報を得て学習している
犬にとってにおいは「情報の宝庫」です。地面や他の動物、物、人に残されたにおいなど、その場所や相手がどのような存在なのかを把握しています。においには、相手の性別や健康状態、感情の変化、発情の有無など多くの情報が含まれており、においを嗅ぐことでたくさんの情報をキャッチして学習します。特に成長期の犬にとっては、環境への適応力を高める大切な行為です。
自分の縄張りや安全確認のため

犬は本能的に、においを嗅ぐことで自分の縄張りを確認しています。これは野生時代の名残で、自分のテリトリーにどんな動物が出入りしたのかを把握することで、危険を避けていると考えられています。
脳が活性化し、ストレス解消にも
においを嗅ぐ行動は、「頭の体操」としての役割も果たしています。近年では、嗅覚を使った知育遊び「ノーズワーク」も広まりつつあり、認知症の予防や問題行動の改善に役立つとされています。においを嗅ぐこと自体がリフレッシュの手段となっているのかもしれません。
犬がにおいを嗅ぐ対象とそれぞれの意味

犬がにおいを嗅ぐ対象にはさまざまな種類がありますが、それぞれ理由や目的があるとされています。以下では代表的な対象と、考えられる意味を解説します。
他の犬のおしり:犬界の挨拶&情報交換

犬が他の犬のおしりのにおいを嗅ぐ行動は、社会的な挨拶の一つです。おしりの周辺には「肛門腺(こうもんせん)」と呼ばれる分泌腺があり、ここから分泌されるにおい物質には、個体を識別するための情報が含まれています。犬はこのにおいから相手の年齢、性別、健康状態、感情の状態などを読み取ることができるとされています。お互いの情報を確認することで、不要な争いを避け、犬同士でコミュニケーションを行っているようです。
飼い主の手や足、服など:安心や愛情表現
飼い主が外から帰ってきたときや、着替えた直後などに、手足や服を嗅ぐ行動は、「どこに行ってきたのか」「何と接触したのか」といった情報を確認していると考えられています。また、飼い主のにおいを嗅いで安心している犬も多いです。
地面・草むら:過去の痕跡・においを辿っている
地面や草むらをしつこく嗅ぐ場合は、そこに残された「誰かの痕跡」を探していると考えられます。他の犬が立ち寄った場所や、動物のにおいが残っている草むらは、情報量が豊富なため強く興味を持ちやすいです。散歩中のこの行動は、犬にとって重要な探索活動の一環といえます。
散歩中のにおい嗅ぎは止めるべき?

散歩中においを嗅ぐこと自体は、特に止める必要はありません。むしろ、においを嗅ぐことで犬のストレスが軽減されたり、安心感を得たりするケースが多いため、適度ににおいを嗅がせてあげるのがおすすめです。ただし場所によっては危険もあるため、愛犬の本能を尊重しながら安全を守る必要があります。
嗅がせるときの注意すべきポイント

散歩中の環境には、犬にとって危険なものが多く存在するため、飼い主が注意する必要があります。ここでは、犬がにおいを嗅ぐ場面で気をつけたいポイントを紹介します。
硬い草は鼻に入る可能性も
草むらの細くて尖った草は、嗅いでいるうちに鼻の中に入り込むことがあります。これは「異物性鼻炎」と呼ばれ、くしゃみが止まらなくなったり、鼻を強くこするなどの不快感からくる症状が現れます。一度鼻の中に入り込むと気付かれないことも多いため、背丈のある雑草が密集している場所では、特に注意してください。
拾い食い・寄生虫・除草剤に要注意

地面や道端には、ゴミや食べ物のカス、動物の排泄物など、誤食につながるものが多くあります。胃腸炎や中毒、寄生虫感染のリスクの他、除草剤などの化学薬品が散布された場所では、わずかな量でも皮膚や粘膜に炎症を起こすことがあります。必ず安全な場所を選んで嗅がせることが重要です。
カーミングシグナルの不安サインの可能性も
犬がやたらと地面のにおいを嗅ぎ続けている場合、不安や緊張のサインである可能性もあります。これは「カーミングシグナル」と呼ばれる行動の一つで、不安やストレスを感じているときに現れるものです。特に見知らぬ環境で頻繁に見られる場合はストレスを感じているかもしれません。
散歩中のにおい嗅ぎを減らしたいときの方法

犬のにおい嗅ぎがひどいと「散歩が進まない」「拾い食いの問題」など飼い主の負担になるケースもあります。そんな時は無理せず、ちょっとしたコツでにおい嗅ぎを優しくセーブしてあげましょう。
通い慣れた道にコースを戻す
新しい散歩コースでは、慣れないにおいが溢れているため、嗅ぐ行動が増えてしまう傾向があります。そのため、毎日同じ道を通ることで愛犬にとって「確認済み」のエリアが増え、過剰な探索を減らすことができます。まずは慣れている道に戻り、落ち着いてきたら新しい道に挑戦するのがおすすめです。
別のもので気をそらす
愛犬の注意を引く別の刺激を与える方法も効果的です。お気に入りのおやつやおもちゃを使って誘導したり、声かけやアイコンタクトを取るなどで、愛犬の気をそらしましょう。 犬にとってストレスを与えずに、自然と行動を切り替えられます。
合図やアイコンタクトをとろう

散歩中のスムーズなコミュニケーションには、普段からの「合図」と「アイコンタクト」の練習が効果的です。例えば、「行こう」「ストップ」といったシンプルな声かけを繰り返すことで散歩の流れを理解しやすくなります。また、散歩中に何度も目を合わせるのも効果的です。におい嗅ぎに夢中になっているときでも、声と視線で注意を戻すことが出来るため、危険を回避しやすくなります。
自宅でのノーズワークを活用
においを嗅ぐ欲求が強い犬には、自宅で「ノーズワーク」を取り入れるのも良い方法です。ノーズワークとは、においを探す遊びで、たとえば部屋の中におやつを隠して探させるだけでも十分な刺激になります。嗅覚を使うことで脳を活性化させ満足感を得られるため、散歩中の過剰なにおい嗅ぎの抑制にもなります。可愛いノーズワークアイテムも販売されているので、活用してみてはいかがでしょうか。
まとめ
におい嗅ぎは、犬にとって自然で大切な行動です。過剰な嗅ぎ方にはストレスや不安が隠れている可能性がある一方、上手に嗅がせることで犬が安心し、飼い主との信頼関係も深まります。「におい嗅ぎ」を普段から少しだけ意識してあげて、豊かで快適なドッグライフを築いてあげましょう。
【執筆・監修】
原田 瑠菜
獣医師、ライター。大学卒業後、畜産系組合に入職し乳牛の診療に携わる。その後は動物病院で犬や猫を中心とした診療業務に従事。現在は動物病院で働く傍ら、ライターとしてペット系記事を中心に執筆や監修をおこなっている。















