動物虐待のニュースを見て、「どうしてそんなひどいことができるのか」と憤りを感じている人もいるでしょう。
動物虐待という特異な行動の背景には、歪んだ欲求を満たそうとする、さまざまな心理が考えられますが、どのような理由があっても虐待をしたり、容認したりしてはいけません。
この記事では、動物虐待をする人の心理、動物虐待にあたる行為や虐待の種類、動物への影響などについて解説します。
記事の後半では、里親になる方法や、寄付活動を通じて間接的に動物支援ができる方法などについて紹介しているので、動物のために自分にできることがないか参考にしてください。
動物虐待をする人の心理
動物虐待をする人は、以下4つの心理状態にあると考えられます。
- 嗜虐性(しぎゃくせい)があり快楽を求めている
- 日々のストレスを発散している
- 自分がいじめられていて復讐心がある
- 悪いことだという認識がない
いずれか一つに該当するだけでなく、複数の心理状態に該当するケースもあるでしょう。
動物虐待をする人の心理を詳しく解説します。
嗜虐性(しぎゃくせい)があり快楽を求めている
動物虐待をする人の心理に、嗜虐性が関係している場合があります。
あまり聞きなれない言葉かもしれませんが、嗜虐とは人や動物に苦痛を与えるのを好む性癖を指します。
嗜虐性がある人は、動物を虐待し、苦しむ様子を見て快楽を得ているのです。
なお、嗜虐性による虐待を行う人は、これまでにも人や動物を虐待して快楽を得た経験がある可能性が高いです。
日々のストレスを発散している
ストレス発散のために虐待をしている人もいます。
仕事や家庭などでストレスが溜まり、自分よりも弱い動物をストレスのはけ口にしてしまうのです。
虐待をして自分の気分をすっきりさせていますが、虐待は悪いことと認識している人も多いでしょう。
イライラが極限に達して突発的に虐待をしてしまったり、常習的になってしまったりと、虐待パターンは人それぞれです。
自分がいじめられていて復讐心がある
自分が誰かにいじめられていて、復讐心から動物虐待をする人もいます。
いじめの加害者にやり返したいと思っても実行できないため、動物をいじめの加害者に見立ててて虐待をしてしまうのです。
動物を虐待して、加害者にやり返したような気分を味わっています。
ストレス発散の心理とも近いですが、いじめの加害者に強い復讐心を抱いているのが大きな違いと言えるでしょう。
悪いことだという認識がない
動物虐待を悪いことと思わず、遊び半分で実行してしまう人もいます。
ゲーム感覚で動物虐待をしたり、いじめたらどうなるのかといった好奇心で動物虐待をしたりするのです。
例えば小さな子どもは物事の分別がつかないことも多いです。
周囲の大人たちから教育を受けて、成長するに伴い分別がつくようになります。
しかし、大人になっても社会的スキルや認識が乏しいまま、虐待を悪いと感じない人もいるのです。
なかには何かしらの障害を抱えているケースもあります。
動物虐待をする人の心理を分析した論文
動物虐待の犯人像や心理を分析した論文を読むと、虐待をする人の傾向が見えてきます。
動物虐待犯の年齢層は、20代〜40代の成人が多いことが分かります。
また、仕事をしている人よりも無職の人のほうがやや多い傾向にあるようです。
実は悩みやストレスを抱えていると感じている年代は30代~50代がもっとも多く、虐待犯の傾向ともおおむね一致します(注1)。
やはり、動物虐待の心理にストレスも深く関わっていると言えるでしょう。
なお、動物虐待犯が殺人犯となってしまうケースもあるため、早期の段階で適切な対応をとることも重要です。
(注1) 各世代における悩みやストレスの原因の可視化|法政大学
どこからが動物虐待になるのか
動物虐待の定義を一言でまとめると、「動物に苦痛を与えること」と表せます(注2)。
どこからが動物虐待になるのか気になる方もいるかもしれません。具体的には、以下2つの行為が動物虐待になります。
- 不必要な苦痛を与える行為
- 必要な世話を怠る行為
身体的な苦痛を与える行為だけでなく、精神的な苦痛を与える行為も虐待です。
(注2) 虐待や遺棄の禁止|環境省
不必要な苦痛を与える行為
暴力を加えたり、恐怖を与えたりするなど、不必要な苦痛を与える行為は虐待です。
例えば、殴る・蹴る・怒鳴るなどが挙げられます。
ほかにも、動物を戦わせる、酷使するなども含まれます。
このように、正当な理由なくやってはいけない行為をする・行わせるのは、積極的(意図的)虐待です。
必要な世話を怠る行為
十分な餌や水を与えないというように、必要な世話を怠る行為も虐待です。
ほかにも、病気の治療をしない、健康管理をしないなども挙げられます。
このように、しなければならない行為をやらないのは、ネグレクトという虐待の一種です。
動物虐待の種類
- 身体的虐待
- 心理的虐待
- 遺棄
- ネグレクト
虐待で代表的とも言える暴力行為以外にも、さまざまな種類の虐待があります。
身体的虐待
殴る・蹴るなどの暴力で、動物に外傷を負わせるのは身体的虐待です。
また、外傷を負わせる可能性がある行為も含まれます。
具体的には、しつけと称して暴力をふるったり、面白半分で動物同士を戦わせたりする行為です。
身体的虐待は、代表的な虐待と言えるでしょう。
なお、愛護動物に身体的虐待を行った場合、最大で5年以下の懲役または500万円以下の罰金が科せられます(注2)。
(注2) 虐待や遺棄の禁止|環境省
心理的虐待
動物に恐怖心を与えるのは心理的虐待です。
例えば、殴るふりをしたり、大声で怒鳴ったりする行為などが挙げられます。
また、動物を休息させない行為も心理的虐待にあたります。
昼夜問わず大音量でテレビを見たり、過剰に触ったりすると動物は休息できません。
人間が何気なくとっている行動が、心理的虐待になることもあるので注意しましょう。
遺棄
動物の遺棄も虐待の一種です。
遺棄でよくあるのは、ペットとして迎え入れたものの何かしらの事情で飼えなくなってしまった、世話が面倒になってしまったというケースです。
遺棄は動物を危険にさらすだけでなく、近隣の住民や農家の方などにも迷惑をかけてしまいます。
なお、愛護動物を遺棄した場合、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられます(注2)。
遺棄された犬がどうなるのか気になる方は、以下の記事をご覧ください。
➤ 捨てられた犬はどうなる?現状と保護・引き取り・支援の方法を紹介!
(注2) 虐待や遺棄の禁止|環境省
ネグレクト
飼育や世話を怠る行為はネグレクトという虐待です。
餌や水を与えない、排せつ物の処理をしないなどが該当します。
また、散歩に連れて行かない、健康管理をしないのもネグレクトです。
動物が衛生的な環境で、健康的かつ快適に生活できるようにするのは飼い主の義務です。
なお、愛護動物を故意に衰弱させた場合、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられます(注2)。
(注2) 虐待や遺棄の禁止|環境省
動物虐待の件数と実態
動物愛護法違反の件数を見ると、動物虐待の実態や現状が分かります。
動物愛護法とは何か、こちらで詳しく解説しています。
➤ 動物愛護管理法とは
昨今の動物虐待の件数や実態を見ていきましょう。
2022年度の動物虐待の検挙数は過去2番目の多さ
警察庁は2010年から動物虐待検挙数の統計をとっていますが、2022年度は過去2番目の多さとなりました。
2022年度に動物愛護法違反で摘発された件数は166件、逮捕・書類送検された人数は187人にのぼります。
なお、もっとも検挙数や逮捕者数が多かったのは2021年です。
(出典:動物虐待、昨年の摘発は過去2番目の多さ ダックス27匹置き去りも|朝日新聞デジタル)
上記の画像の通り、統計をとり始めてから検挙数はほぼ右肩上がりの状態です。
動物虐待はいけない行為という認識が広まりつつある昨今でも、検挙数がなかなか減っていないのが現状です。
猫と犬が全体の9割を占める
虐待された動物の種類を見ると、もっとも多いのは猫、次いで犬となります。
(出典:動物虐待統計2022年度|公益財団法人動物環境・福祉協会Eva)
猫と犬だけで、虐待検挙数の全体の9割を占めています。
ほかにも鳥類やウサギ、ハムスターなども虐待の対象になっています。
虐待による動物への影響
動物虐待は動物にも深刻な影響を与えます。
虐待された動物には、以下3つの特徴が見られます。
- 人間不信に陥る
- 攻撃的になる
- 消極的あるいは無反応になる
それぞれ詳しく見ていきましょう。
人間不信に陥る
虐待により動物が人間不信に陥る可能性があります。
これまで信頼していた人間であっても、裏切られたと感じてしまうでしょう。
人間不信に陥ると、虐待をした人はもちろん、ほかの人間のことも警戒します。
人間に対して過剰な反応を示すようになるでしょう。
虐待されて、人におびえるようになってしまった犬の様子を撮影した動画があります。
虐待が動物へ及ぼす深刻な影響を知るために、ぜひご覧ください。
➤ 【虐待】過去に暴力を振るわれた影響で人に怯えるようになった可哀想な犬…
攻撃的になる
虐待を受けた動物は攻撃的になることがあります。
攻撃的になるのは、動物が自身の身を守るための術です。
前述したように虐待を受けた動物は人間への警戒心が強まるので、たとえ人間が危害を加えるつもりはなくても動物が攻撃してしまう場合もあります。
攻撃的になってしまった動物は、殺処分の対象になることも少なくありません。
動物虐待から逃れせっかく助かった命でも、虐待の影響で結果的に命を落とす場合もあるのです。
消極的あるいは無反応になる
虐待を受けた動物は消極的になったり無反応になったりすることもあります。
虐待で自由や自信を奪われてしまい、気力がなくなるのです。
喜怒哀楽も感じなくなるかもしれません。
人間に置き換えると、うつ病のような状態と言えます。
虐待から動物を守るためにできること
深刻な影響を及ぼす虐待から動物を守るために、個人でも実行に移せることがあります。
- 警察・愛護センター・自治体へ通報する
- 動物保護団体に寄付をする
- 里親になる
自分にできることは何かを考え、行動を起こしましょう。
警察・愛護センター・自治体へ通報する
虐待を受けている、または虐待の疑いがある動物がいたら、必ず通報しましょう。
通報先は、警察・愛護センター・自治体があります。
動物虐待は犯罪なので、まずは警察へ通報すると良いでしょう。
しかし、虐待が明確でない場合は、通報をためらうこともあるかもしれません。
そのような場合は、愛護センターや自治体へ相談しましょう。愛護センターや自治体が調査し、明らかな虐待だと判断されれば、警察へ通報してくれます。
個人でも、電話一本で救える命があります。
動物保護団体に寄付をする
動物保護団体への寄付も、動物を守ることにつながります。
動物保護団体では、動物の命や健康を守るための取り組みをしています。
具体的には、引き取り手のない動物の保護や飼育、譲渡活動、啓発活動などを行っています。
動物保護団体では多額の運営資金がかかるため、寄付が大きな支えになるのです。
次の記事で広島にあるピースワンコ・ジャパンで保護されている犬の様子や、活動の現状を紹介しています。
ぜひご覧ください。
➤ この命を消さないために。「ワンだふるサポーター」ご支援お願いします
また、寄付金がどのように使われているか知りたい方は、下記の記事を参考にしてください。
➤ ワンだふるサポーター特設ページ
里親になる
里親になるのも動物を守る方法の一つです。
虐待された動物は、人間を信頼できない状態にあるかもしれません。
しかし、家族として受け入れることで再び人間の優しさや温かみを実感できるでしょう。
里親になり、心身ともに傷ついた動物を癒やしてあげてください。
ピースワンコ・ジャパンの譲渡活動の詳細を以下の記事でまとめていますので、興味がある方はぜひご覧ください。
➤ 【譲渡活動】飼い主に捨てられた「みゆき」卒業!
➤ 保護から8年。ワンだふるファミリー「バニラ」卒業! supported by Yogibo
里親になるのは難しいという方でも、ピースワンコ・ジャパンの「ワンだふるファミリー」ならば遠方からでも動物支援ができます。
➤ ワンだふるファミリー募集サイト
動物虐待の心理が理解できずとも守る方法はある
動物虐待をする人の心理はさまざまですが、虐待は決して許される行為ではありません。
虐待は、動物の身体だけでなく心をも傷つけてしまいます。
動物へ及ぼす影響は計り知れません。
動物虐待をする人の心理は理解できなくても、動物を虐待から救いたいと考える方は多いはずです。
個人でも動物を守れる方法はありますので、自分にできることは何か考えてみてください。
ピースワンコ・ジャパンには、虐待などで動物愛護センターに収容された犬たちも暮らしています。
虐待から逃れた犬がこれからシェルターで安心して暮らすためには、皆さまからのご寄付が大きな支えになります。
ピースワンコ・ジャパンでは毎月継続の寄付のほか、都度の寄付も選べますので、ぜひ前向きにご検討ください。