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動物と人間の共生について理解を深める「動物愛護週間」
環境省の資料によると、2004年度には年間155,870頭の犬が殺処分されていましたが、最新の2022年度の資料では2,434頭まで減少しています。
大幅な減少の背景には動物愛護に関する取り組みの進展があります。しかし、それでも多くの犬たちが命を落としており、殺処分問題は依然として深刻な課題です。特に繁殖業者や飼い主の無責任な行動が要因となっているケースが多く、あらためてこの問題に向き合う必要があります。
動物愛護週間は、毎年9月20日から26日までの1週間で、動物愛護に関する普及啓発活動を行う期間です。環境省が主導し、各地でイベントやキャンペーンが展開されています。その目的は、動物と人間の共生についての理解を深めることです。
動物愛護週間は、動物を適切に飼うことの重要性や、動物虐待の防止、動物の命の尊重を啓発する機会となっています。具体的には、飼い主やペットショップが守るべきルールの遵守を促し、動物の福祉向上を目指しています。
参照:環境省| 動物愛護週間
飼い主の責任が明文化された「動物愛護管理法」とは
日本では、動物の保護と愛護、そして適切な管理を目的として、1973年に「動物の愛護及び管理に関する法律」(通称:動物愛護管理法)が制定されました。この法律は、動物の命を守り、適切な取り扱いと虐待の防止、そして人間社会との共生を図ることを目的としています。
その後、数回にわたって改正され、最新の2019年の改正では、動物取扱業の規制強化や、虐待に対する罰則強化、飼い主の責任の明文化が含まれました。さらに、ペットにマイクロチップの装着を義務化し、8週齢以下の犬猫の販売規制が導入されるなど、動物福祉の向上が進められています。
改正の詳細については、こちらの記事で詳しく解説しています。これからペットを迎える予定のある方や、すでに犬を飼っている方も、ぜひご確認ください。
➤【関連記事】動物愛護管理法の改正点は?改正内容や飼い主が知るべきことを解説
犬の殺処分の現実
日本における犬の殺処分は、現在もなお深刻な問題です。多くの犬がさまざまな理由で保健所や動物愛護センターに収容され、最終的には命を絶たれています。こちらの記事では、犬たちが置かれている厳しい状況を詳しく解説しています。現状を詳しく知りたい方は、ぜひご覧ください。
【関連記事】日本の犬の殺処分の現状とは?殺処分ゼロを目指す対策など解説」
また、殺処分の多くは、収容施設でガス室を使用した方法で行われています。読者のなかには、犬たちが安楽死していると思われている方が多いかもしれませんが、実際にはガス室での処分が少なくありません。この方法は犬にとって苦痛でしかなく、多くの反対意見が寄せられています。
こちらの記事では、ガス室での殺処分が行われる背景やその現状について詳しく解説しています。辛い現実ですが、この問題に向き合い、私たちが何をすべきかを考えるために、一度お読みいただければと思います。
➤【関連記事】犬を殺処分するガス室とは?殺処分の理由や殺処分機の仕組みを解説
動物愛護法の改正など進展はあるものの、まだ根本的な問題が残っており、殺処分の原因をなくすためにはさらなる努力が求められています。
野犬・野良犬、捨て犬、ペットショップで売れ残ったワンコの運命
保健所に収容された野犬、野良犬や捨て犬、またペットショップで売れ残った犬たちは、どのような運命をたどるのでしょうか。
保健所の犬たちの運命
保健所では、迷子になったり捨てられたりした犬を一時的に保護します。しかし、すべての犬が飼い主が見つかったり新しい家族を見つけられるわけではありません。
保健所は動物の保護以外にも多くの業務を抱えており、収容できるスペースにも限りがあるため、一定期間内に引き取り手が現れなければ、殺処分という悲しい結末を迎えることがあります。特に、性格や健康状態に問題があるとされる犬は、新しい飼い主を見つけるのが難しく、殺処分される確率が高くなります。
➤【関連記事】保健所の犬はどうなる?日本の殺処分の実態など解説
捨てられた犬たちの運命
犬が捨てられる理由は多岐にわたりますが、最も一般的な理由は、飼い主が何らかの事情で飼育を続けられなくなった場合です。残念ながら一度捨てられてしまうと、その犬たちは食料を求めて苦しんだり、繁殖によって野犬の数が増えたりするなどの問題を引き起こします。
こうした野良犬にとって、食料や安全な住処を確保して生き延びるのは非常に過酷です。やがて、野生化して人やほかの動物に危害を及ぼす可能性もあるため、この状況は大きな社会問題となっています。
一方で、保護された犬は、保健所や動物保護団体で里親募集にかけられるケースもありますが、すべての犬がすぐに新しい飼い主を見つけられるわけではありません。捨てられた犬たちは、最終的に殺処分される可能性があるのです。
➤【関連記事】捨てられた犬はどうなる?現状と保護・引き取り・支援の方法を紹介!
ペットショップで売れ残った犬たちの運命
ペットショップは、月齢の浅い子犬がよく売れるため、月齢が進むにつれ売れ残るリスクが高まります。売れ残った犬は、譲渡会や里親募集にかけられる場合もありますが、そうでなければブリーダーに返還され、さらに一部では殺処分の対象になる場合もあります。
ただし、2013年の動物愛護法改正により、保健所はペットショップからの売れ残りペットの引き取りを拒否できるようになりました。このような背景から、売れ残った犬たちの一部は、看板犬としてショップで飼育されるケースも見られます。しかし、それでもすべての犬が救われるわけではありません。
犬たちの運命は、飼い主や社会の対応によって大きく変わります。命ある存在であることを忘れず、飼う責任を全うすることが大切です。
➤【関連記事】ペットショップの売れ残りは殺処分される?日本の現状や救う方法を解説
また、保護された犬たちが少しでも多く新しい家族とめぐり合えるよう、里親になることや、動物保護団体への支援を検討することが、犬たちを救うための具体的なアクションになります。
「殺処分ゼロ」を実現するためにできること
日本では犬の殺処分の数は減少傾向にありますが、現在もなおゼロには達していません。2022年のデータでは、全国で22,392頭が保護され、そのうち2,434頭が殺処分されています。殺処分を減らし、最終的にゼロにするために個人ではなにができるのでしょうか。
➤【関連記事】犬の殺処分とは?現状や解決のためにできること
1. 保護犬を引き取って里親になる
殺処分を減らすために最も効果的な方法の一つは、保護犬の里親として犬を引き取ることです。保護団体や譲渡会では、多くの犬たちが新しい家族を待っています。
ただし、犬を引き取る際には、終生、世話する責任を持つ覚悟が必要で、引き取る前に家庭訪問や面会が求められる場合もあります。そこで、犬との相性や家庭環境を確認するなど適切なプロセスを踏む必要があるためです。
保護犬を引き取る際の手順は以下のとおりです。
- 保護施設や譲渡団体の情報収集:ホームページや譲渡会で詳細を確認
- 申し込み手続き:申込書の提出や事前の講習を受ける
- 家庭訪問や面会:施設側が家庭環境を確認し、犬との相性を確認
- 引き取りの完了と費用:マイクロチップの装着や医療費がかかることがある
施設や譲渡団体のウェブサイトでは、引き取りに必要な条件や手続きが詳しく説明されています。施設によっては、トライアル期間を設けて実際に犬との生活を試せる場合もあるなど、譲渡を考える際は、あらゆる疑問点について解消すべく、事前に内容や費用等を確認しておくことが重要です。
引き取りの方法については、こちらの記事でさらに詳しく紹介していますので、ご確認ください。
➤【関連記事】殺処分される犬を引き取るには?引き取り手順を紹介
2. 保護施設のボランティア活動に参加する
保護施設でのボランティア活動を通じて殺処分の削減に貢献できます。施設内での犬の世話や散歩、清掃作業、譲渡会でのサポートなど、さまざまな形で支援が可能です。こうした活動は、犬たちの生活を支え、より良い環境を提供する助けとなります。
3. 保護団体へ寄付する
里親になることが難しい場合でも、保護団体への寄付を通じて支援することも可能です。寄付金は、保護犬のケアや医療費、保護施設の運営に使われ、犬たちの命を守るための重要な資金源となります。
以上のように、犬の殺処分を減らすためにできることは多様な形で存在します。犬を飼うことが難しい方でも、ほかの形で支援する方法があるのです。
ピースワンコの取り組み
ピースワンコ・ジャパンでは、犬の「殺処分ゼロ」をミッションに掲げ、2012年から保健所や動物愛護センターから殺処分対象の犬たちを引き取り、医療ケアやトレーニングをしながら、新しい家族につなげる活動を行っています。
全国ワースト1位だった広島県を「殺処分ゼロ」に
当時、広島県の犬の殺処分数は全国でワースト1位でしたが、2016年以降、県内のドリームボックス(殺処分機)の稼働を停止させて以降、県内の犬の殺処分ゼロを守ってきました。これまで広島で8,100頭以上の殺処分対象の犬を保護し、4,300頭以上の保護犬を新しい家族と結んできました(2024年8月時点)。
そしてこの12年間で培ってきたノウハウと環境をもとに、2024年からは広島から『日本の犬を、「殺処分ゼロ」へ』を目指し、本格的に県外でも保護活動を開始しました。
老犬も、病気や障がいのある保護犬も幸せにする
また、ピースワンコで世話する保護犬のなかには、譲渡が難しいとされる老犬や、病気、障がいを持った犬もいます。譲渡活動と同時に、たとえ新しい家族が見つからなくても、できる限り安心して最後まで幸せを感じて暮らせるように終生飼養を続けています。
こうした活動は、支援者の方々からの寄付金によって支えられています。現在、譲渡を待つ犬は、約2,400頭。そのすべての保護犬の定期的なワクチン接種や避妊・去勢手術などの医療ケアをはじめ、食事を提供し施設環境を維持していくには、年間10億円以上の費用が必要です。
『日本の犬を、「殺処分ゼロ」へ』のミッションを実現するには、みなさまのご支援が大きな力となります。
➤【関連記事】終(つい)の住処になるー終生預かりボランティア制度ー
動物愛護週間にあらためて「殺処分」を考える
日本では、依然として多くの犬が殺処分によって命を絶たれています。もしもこれから新しく犬を飼うことを考えられている方は、保護犬を迎えるという選択肢も考えてみてください。また、犬を飼えなくても、さまざまな保護活動を支援するカタチで「殺処分ゼロ」に貢献する方法もあります。
殺処分という不条理をなくし、少しでも多くの保護犬が新しい家族と幸せな未来を迎えられることを願っています。