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老犬によく見られる症状と病気のサイン
老犬は年とともにさまざまな症状を示します。病気のサインの場合もあるため、愛犬の体調や病気の症状を理解することが大切です。ここでは、老犬になるとよく現れる症状についてみていきましょう。
ご飯を食べなくなった
老犬がご飯を食べない原因として、老化の他に病気の可能性が挙げられます。人と同様に犬も歳をとると咀嚼筋が衰え、噛む力が弱くなってきます。そのため、ご飯をふやかしたり、柔らかいフードを選ぶのがおすすめです。
ただし、食欲不振が続いたり嘔吐や下痢がある場合は病気のサインかもしれません。また歯周病があると口が痛くて食べられない場合もあるため、普段の観察が重要です。
夜泣きをする
高齢になるとさまざまな原因で夜寝られなくなります。トイレが近くなって飼い主を呼んだり、寝静まっていると不安を感じやすくなったりします。飼い主がいない昼に寝て夜に目覚めてしまい、昼夜逆転してしまうこともあります。
また、認知症の影響で夜泣きをしてしまう場合もあります。まずは部屋を少し明るくし、寝床を暖かく整えるなど安心させる工夫をしてみましょう。動物病院で適切な治療を受けることで症状が改善する場合もあります。
水をよく飲む
普段よりも頻繁に水を飲むようになったら要注意です。糖尿病、腎不全、クッシング症候群などの病気が隠れているかもしれません。まずは自宅で1日の飲水量を調べてみてください。50〜100ml/kg以上水を飲んでいるなら、病的な多飲の可能性があります。動物病院で検査を受けてみてください。
息が荒い
心臓病や肺疾患、痛みや緊張など、さまざまな原因で息が荒くなります。特に咳が頻繁に出る、散歩中に息切れする場合は、早急に動物病院に連れていくのをおすすめします。
また、部屋の温度が合っていないと、喉が乾いたときも息が荒くなるので、愛犬が寝ている部屋を確認することも忘れずに行いましょう。
咳や痰がからむ
咳やくしゃみ、痰がからむ症状も老犬によく見られる症状のひとつです。気管支炎や肺炎、心臓病になると咳が出やすくなります。
歯周病がひどい場合も、クシャミや鼻水が出てしまいます。症状が強くなる場合は、早めに動物病院を受診しましょう。病気の場合は獣医師と相談し、症状に合ったケアをすることで呼吸がしやすくなります。
発作を起こす
老犬が発作を起こす場合、てんかんや脳腫瘍、低血糖症など、命に関わる可能性があります。初めて起きてしまったら、すぐに病院に連れて行きましょう。繰り返すなら、発作の回数や症状を記録してください。
発作が起きてケガをしないように、柔らかいクッションや布団を敷いたり、発作を止める薬を準備しておくなど事前に対策することも大切です。正しい診断と適切な治療により、発作の頻度を抑えて愛犬の生活の質を改善できます。
老犬の介護のポイント
老犬介護は、愛犬の体調や行動の変化を理解してお世話することが重要です。愛犬も家族も安心して過ごせるよう、ポイントを押さえて介護をしましょう。
適切な食事と栄養管理
老犬の健康維持には、バランスのとれた食事と適切な栄養管理が欠かせません。
愛犬に合ったフードを選ぶ
老犬には、症状に合わせた適切なフードを選ぶことが大切です。腎臓病の場合は塩分やリンの含有量が少なく、水分を含んだものが最適。また腸炎の場合は、低脂肪で消化しやすいもの、糖尿病の場合は高タンパクで低糖質なものなど、病気によって必要な栄養は変わります。獣医師と相談しながら体調に応じた最適なフードを選んであげてください。
シリンジやスポイトの活用も
自分でご飯を食べられない場合は、シリンジやスポイトを使用して流動食を与える方法も有効です。愛犬の頭をやさしく持ち上げ、牙の後ろの隙間から少しずつ流してあげると食べやすくなります。動物病院でやり方を教えてもらうとよいでしょう。
無理のない散歩と運動
運動は、筋力の維持やストレス軽減に効果的です。無理のない程度に適度な運動を促しましょう。
足腰に負担のない散歩
老犬の運動は、短い時間でゆっくりと行うのが基本です。散歩コースは平らで滑りにくい路面がベター。また、マッサージには筋肉の緊張のほぐれや血行促進効果があります。散歩にいけない子は、ぜひ自宅でマッサージをしてあげてください。
ペット用サポーターや車椅子の活用
歩行困難の子は、ペット用サポーターや車椅子を活用することもひとつの方法です。サポーターや車椅子を使うことで、自力では歩けない子でも足腰への負担を軽減しながら体力の維持を図ることができます。
排泄介助とトイレのケア
高齢になると老化により筋力や認知機能が衰え、トイレの失敗が多くなります。
失敗を受け入れてあげる
粗相をしても怒らずに、失敗を受け入れてあげてください。愛犬自身も今まできていたことが次第にできなくなり、ストレスを感じています。粗相をしてしまったときはノーリアクションで片づけ、臭いが残らないようにすることが大切です。
排泄用グッズを使用
失敗が多いときは、ペットシーツやオムツを使用することで片づけの手間が軽減します。汚れたらすぐに交換して、なるべく清潔を心がけるようにしてください。大型犬の場合、人用のオムツに尻尾の穴を開けて使うのもおすすめです。
排泄介助も方法のひとつ
立って排泄ができる子はお腹を両手で支え、転ばないようにしてあげると排泄しやすくなります。麻痺で自力排泄が難しい場合は、膀胱をやさしく圧迫して刺激し尿を出したり、管を使ってオシッコを出してあげる方法もあります。獣医師の指導のもとで行うことが重要なので、介助を行う前に必ず相談するようにしてください。
寝たきり犬のケア
寝たきり状態になると、自分で動くことができないため多くのサポートが必要になります。
褥瘡予防の寝返りやマッサージ
褥瘡(じょくそう)は、長時間同じ姿勢でいることによって起こる床ずれです。寝たきりが長時間続くと肩や股関節などが圧迫され、皮膚に負担がかかるせいで床ずれが起こります。褥瘡を起こさないために、2〜3時間おきに寝返りさせて同じ部分に負担をかけないことが大切です。また、背中や脚などを軽くマッサージして血行を良くすることも効果的です。
床ずれ予防マットを選ぶ
毎日2〜3時間おきに寝返りを打たせるのは大変です。そんなときは、床ずれ予防マットを活用してみてください。床ずれ予防マットは、体圧を均等に分散させて褥瘡を予防します。体格や用途によってさまざまなタイプがあるため、愛犬に合わせて選んであげましょう。
床ずれが起きてしまったら
床ずれが起きてしまったら、まずは動物病院に相談しましょう。定期的に保護クリームを塗ったり、ガーゼやタオルを敷いて負担がかからないよう自宅ケアをすることも大切です。
認知症の症状と対策
認知症になると、夜泣きや徘徊などの症状が現れます。環境改善やお薬で症状が緩和することもあるので、ひとりで悩まずに専門機関に相談してみてください。
介護で疲れないためにはセルフケアも大切
老犬の介護は、家族にとって大きなチャレンジでもあります。飼い主自身が疲れ果ててしまっては、介護を続けることが困難になります。リフレッシュする時間をつくり、飼い主も心と体のバランスを保ちながら無理のない介護を続けることが大切です。
ここでは、介護を続けるためのポイントをご紹介します。
家族や周りを頼ろう
介護は、ひとりで抱え込むものではありません。家族や友人、動物病院や老犬ホームなどの外部サービスを活用することで、介護の負担を分散できます。
介護グッズを積極的に活用
最近は飼い犬の高齢化に伴い、便利なアイテムがたくさん出ています。これらを活用しない手はありません。日常使いの介護グッズからハンドメイドの防音ケージまで、好みのアイテムを上手に活用して、毎日のお世話を楽にしましょう。
ほかの飼い主さんと情報や悩みを共有する
同じ経験を持つ飼い主さんとの交流は、介護の悩みを軽減したり新たなヒントを得る良い機会になります。ぜひSNSなども活用して、積極的に交流してみてください。
専門機関へ相談してみる
些細な疑問や不安も、専門機関に相談するのがおすすめです。地域によっては老犬専門の動物病院や、訪問診療を行う獣医師もいます。また、WEB上で健康相談を行えるサービスもあります。専門家の意見を仰ぐことで不安が減り、安心できるはずです。介護で問題が起きた際も相談することですぐに解決につながることもあります。
老犬ホームという選択肢も
介護が難しい場合には、老犬ホームの利用を検討することもひとつの選択肢です。専門的なケアを行ってくれるため、安心して愛犬を預けられます。場所によっては、長期や終生ケアを行っている所もあるため、一度お近くの老犬ホームを探してみてください。
介護は飼い主と愛犬の新たな絆づくり
介護は悪いことばかりではありません。生活の中で愛犬を愛おしく感じ、愛犬もまた、家族のやさしさや愛情を感じられます。家族の愛情は、何よりも愛犬の生きる力になります。
「終生飼育」は、愛犬を最期まで責任を持って飼うという飼い主の使命です。愛犬との別れが訪れるその日まで精一杯愛情を注ぐことが、愛犬との新たな絆を築く貴重な時間となり、愛犬にとって幸せな時間となります。少しでも長く愛犬と過ごす時間を楽しみながら、絆をより深めていきましょう。
ピースワンコの老犬介護の取り組み
ピースワンコでは、「殺処分ゼロ」をミッションに掲げ、保健所や愛護センターから殺処分対象の犬を引き出し、検疫施設で獣医師による診療を行い健康状態を確認。その後、ゆっくり時間をかけて人になれるトレーニングを行い、ある程度譲渡が可能だと判断された保護犬は里親を捜し、新しい家族へとつないでいきます。
現在、ピースワンコが保護しているワンコは約2,400頭(2024年9月現在)。そのなかには、譲渡が難しい老犬や病気、障がいを抱えている子もいます。たとえ家族が見つからなくても、こうした保護犬も最後まで幸せに生きられるようにピースワンコではできる限りの治療と介護をしながらお世話をしています。
また、譲渡が難しい保護犬を遠方から家族として支えていただく「ワンだふるファミリー」制度や、譲渡ではなくボランティアの方に預けお世話してもらう「終生預かりボランティア制度」なども設け、支援者の方々とともに老犬を見守ってきました。
ピースワンコの保護犬事業は、皆さまからのご寄付だけで活動しています。一頭一頭に寄り添ったお世話ができるのも、皆さまのご支援のお陰です。ワンコの命を守る活動を続けていくために、ご支援をよろしくお願いいたします。