ピースワンコで暮らす保護犬たちは、元野犬や病気、高齢、捨てられた犬、多頭飼育崩壊から救われた犬、保護された母犬から生まれた犬など、さまざまな背景を持っています。
元野犬は人間に対して強い警戒心を持ち、なかなか近寄ってきません。しかし、人と暮らした経験のある犬や、保護された母犬から生まれた犬の中には、初対面でも自分から寄ってきてくれる子がいます。
人と暮らした経験のある犬や、保護された母犬から生まれた犬の中には、初対面でも自分から寄ってきてくれる子がいます。でも、そういう子でも、人が近づくと怖がったり緊張してしまうことがよくあります。
どうすれば犬との距離を縮められるのか?どうしたら心を開いてくれるのか?あともう一歩を踏み出せるようになれたら…!
「オグレット」との出会い
ピースワンコのスタッフ、岸本が2023年5月に迎えた「オグレット」も、そんな保護犬の一頭でした。「オグレット」は2017年に保護された母犬から生まれ、一人っ子として成長しました。母犬のお腹の中でたっぷり栄養をもらい、他の子より少し大きめの体で生まれました。そして神石高原シェルターでたくさんの愛情と美味しいご飯をもらって、すくすく成長していきました。
ずっとの家族を見つけるための人馴れトレーニングが始まったとき、「オグレット」と岸本は出会いました。
「オグレット」は、初めましてにも関わらず岸本にスッと近づいて、匂いチェック。これでもかというほど匂いを嗅いで、気が済んだら距離を取る。でも、寄ってきてくれた「オグレット」に岸本が手を伸ばすと、上手にかわして触らせてはくれない。そんな子でした。保護犬にとって「触る」という行為は大きなハードルです。
犬との距離を縮めるために
保護犬の多くは、人に「触られる」ことに慣れていません。いきなり触ろうとせず、犬が自分から近づいてくるのを待つことが重要です。人間だって、知らない人に急に触られたら驚きますよね。犬も同じです。
「オグレット」が「触らないで」とサインを出していたので、岸本は焦らずに距離を保ち、「ただ一緒に過ごす」時間を重ねました。室内に座って独り言をいったり、オヤツを手からあげたり。そうすることで少しずつ距離が縮まり、1ヶ月後には触らせてくれるようになりました。
お散歩練習のスタート
触れるようになったら、次はお散歩の練習です。「オグレット」は食べ物に目がないため、オヤツを使ったトレーニングを始めました。保護犬たちは、室内でオヤツを食べてくれても、、一歩外に出ると、緊張や不安、恐怖で食べられなくなってしまう子がたくさんいます。そ焦らず、その子のペースに合わせて、出来るところから始めていくことが大事です。
オグレットのお散歩の目標は、「自信を持って堂々と歩けるようになること」でした。初めの頃は、お散歩に行きたくないと駄々をこねたり、「助けて~」と言わんばかりに他のスタッフに飛びついたり、部屋へ戻るために必死でした。そこで岸本は、外には出ずに犬舎内を少しずつ歩くことから始めました。
最初は部屋から出るだけ。出ることが出来たら、たくさんご褒美をあげて部屋へ帰る。それを繰り返しながら、少しづつ距離を伸ばしていきました。「外に出たらご褒美が貰える!」と理解した「オグレット」は、だんだん自分から部屋を出られるようになり、あっという間に外に行けるようになりました。今では「お散歩行くよ!」と声をかけると、尻尾を振って笑顔で答えてくれるほど、お散歩大好きなワンコに成長しました。
焦らず、ゆっくり信頼関係を築く
「オグレット」のように自分から人に近寄ってくれる比較的接しやすいワンコでも、ある程度の触れ合いができるようになるまでには時間がかかります。焦らずに、諦めずに、その子のペースに合わせて向き合えば、必ず心を開いてくれ信頼を築くことができます。無理をさせず、犬が少しずつ前に進むのを待つことが、絆を深める一番の近道です。
保護犬と暮らす飼い主さんへ
保護犬との生活は、忍耐と愛情が試されることが多いかもしれません。焦らず、その子のペースを尊重しながら、ゆっくりと向き合ってください。一日一日が小さな進歩かもしれませんが、それは大きな一歩です。愛情は必ず伝わり、心が通って信頼の絆が深まっていきます。ワンコも人も全ての家族が幸せになるように、「オグレット」の物語が参考になれば嬉しいです。
※ピースワンコは、皆さまからのご寄付だけで活動しています。一頭一頭に寄り添ったお世話ができるのも、皆さまのご支援のお陰です。ワンコの命を守る活動を続けていくために、ご支援をよろしくお願いいたします。
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