
愛犬が顔をペロペロすると、可愛らしさに思わず微笑んでしまいますよね。でも「病気をうつされない?」「化粧品を舐めて大丈夫?」と、衛生面や健康リスクが気になる方もいるかと思います。本記事では、犬が顔を舐める理由から注意点、正しい対応のやり方まで、わかりやすく解説します。愛犬との信頼関係を深めながら、健康的で安全なスキンシップを楽しむための知識を、ぜひこの機会に身につけてください。
犬に顔を舐めさせてもいいの?

犬が顔を舐める行為はとても可愛らしいものですが、衛生面や健康リスクを考えると、あまり推奨はできません。犬の口内にはパスツレラ属菌やカンピロバクター菌など、人間にも感染する可能性のある常在菌が多く存在しています。特に、子どもや高齢者、妊婦、免疫力の低下している人にとっては感染リスクが高く、健康な人でも皮膚に傷がある部位や、粘膜(口や目、鼻)を舐めさせるのは避けるべきです。「顔を舐める=絶対NG」とまでは言いませんが、状況と相手を選んで愛犬との触れ合いを工夫することが大切です。
犬が顔を舐める主な理由と心理

犬が飼い主の顔を舐める場合、愛情表現や要求行動、匂いへの反応・安心行動など、様々な原因が考えられています。それぞれの理由について詳しく解説していきましょう。
愛情表現・信頼のサイン
犬が飼い主の顔を舐める最大の理由の1つが、「あなたが大好きです」という愛情のサイン。これは群れで生活していた野生時代のオオカミや犬の習性にも由来しており、信頼している相手に対して舐めることで関係性を強めようとする行動だとされています。
ごはんや遊びの催促

顔舐めは愛情表現だけでなく、「ごはんまだ?」「かまって!」「一緒に遊ぼう!」などの欲求を伝えるためのコミュニケーション手段の1つとも考えられます。この行動は、子犬が母犬に食べ物を求めて口元を舐める習性に似ていて、飼い主を母犬のような存在として信頼している行動でもあります。ただし、舐めるとすぐ反応してもらえると学習してしまうと、エスカレートする場合もあるため過度な催促の場合は注意が必要です。
顔の匂いや味に反応している
犬は嗅覚がとても優れた動物のため、人間の顔や口元からの匂いや味に反応して舐めることがあります。たとえば、食事の後の口元や、汗が残った頬、化粧品の香料などに興味を示している可能性も。しかし、口紅やハンドクリームなどを誤って摂取してしまい、体調不良を起こすリスクもあるため注意が必要です。
不安やストレスを感じている
実は、犬が顔を舐める理由の中には不安やストレスを感じている場合もあります。突然しつこく舐める行為が始まった場合は、環境の変化やストレスの原因がないか意識する必要があります。こうした舐める行動が習慣になってしまうと、常同行動に発展するケースもあるため、普段から愛犬をよく観察することが大切です。
飼い主以外の顔を舐める理由と注意点

犬が飼い主以外の人の顔を舐める場合、多くは犬の優しさの表れが含まれていると考えられます。しかしどんなに愛犬に悪気がなくても、誰彼構わず顔を舐めるのは好ましくない場合もあるため、適切に対応することが大切です。
敵意なしのサイン
犬は敵意がないことを伝える手段として、相手を舐める場合があります。特に、初対面の人間に対して「怖くないよ」「あなたに従うよ」と伝えたいときに起こりやすく、犬らしい親しみが込められたサインです。
相手を落ち着かせたい場合も
犬は相手の緊張や不安を感じ取る能力が高く、安心させようとして顔を舐めることがあります。相手が緊張しているのを感じると、愛犬なりに「大丈夫だよ」と慰めているものと考えられます。
犬の顔舐めに注意する3つのポイント

犬が顔を舐める行動は多くの場合愛情や信頼の表現ですが、状況によっては注意が必要なケースもあります。ここでは、飼い主が気をつけるべきポイントを紹介します。
しつこい舐めは病気・ストレスの可能性も
犬がしつこく顔を舐め続けるような行動が見られる場合、単なる癖ではなく、体の不調やストレスサインのことがあります。 例えば、皮膚炎やアレルギーによるかゆみ、口内の痛みの他、分離不安や退屈によるストレス行動として舐める場合もあります。舐める行動がしつこすぎる、他にも症状があるなど、違和感がある場合は、早めに動物病院を受診しましょう。
化粧品の犬への中毒リスク

飼い主が顔に化粧品や日焼け止め、香料などを使用している場合、犬が舐めることで中毒や体調不良を起こすリスクがあります。人間用の製品には、エタノール、防腐剤、人工香料、精油成分など、犬に有害な成分が含まれていることがあります。飼い主が化粧品の成分をあらかじめ確認したり、化粧品をつけている時は注意するといった対策が重要です。
人への感染症リスク
犬の口内には沢山の菌が存在しており、中には人間にも感染する可能性のある菌が含まれます。代表的なものに「パスツレラ菌」「カンピロバクター」「サルモネラ」などがあり、これらによる感染症は人獣共通感染症(ズーノーシス)と呼ばれています。
感染経路は、口移しや傷口を舐められる等の濃厚な接触のほか、咬傷や引っ掻き傷などです。これらを通じて菌が体内に入り感染します。特に乳幼児、高齢者、妊婦、免疫力が低下している方は重症化しやすく注意が必要です。
出典:日本臨床微生物学雑誌第24巻第2号
人獣共通感染症(ズーノーシス) ―犬猫における細菌性ズーノーシス―
犬が顔を舐めてきたときの正しい対応

愛犬が顔を舐めるのは可愛らしいですが、舐めさせすぎはあまり良くありません。状況に応じた正しい対応を取ることが大切です。
過剰な反応はNG
大声で叱ったり、手で激しく払いのけたりするのは逆効果です。過度なリアクションはかえって「かまってもらえた」と学習させてしまい、顔を舐める行為の悪化に繋がります。また、強く否定してしまうと信頼関係を損なう原因にもなりかねません。まずは落ち着いて、無反応でその場を離れる、やさしく手でガードする、視線をそらすなど、過剰な反応を避けつつ望ましい行動に導くことがポイントです。
愛情を伝える代わりのコミュニケーション

犬が顔を舐めてくるのは、愛情や安心感を伝えたい場合がほとんどです。気持ちに応えてあげたいけれど、衛生面が心配な場合には、舐める代わりの愛情表現の手段を飼い主が用意してあげることが大切です。
落ち着いている時にやさしく声をかける
アイコンタクトでしっかり気持ちを伝える
撫でたり抱っこしたりしてスキンシップを取る
十分な遊びや散歩で満足感を与える
このような方法は、舐める行動の代わりに愛犬が安心できるコミュニケーション手段としてとても効果的です。
犬が顔を舐める行動は愛情とリスクの両面を理解して
犬が顔を舐める行動には、深い愛情と信頼の気持ちが込められていることが多いです。しかし一方で、健康上のリスクやストレスサインの場合もあるため、正しい理解が求められます。大切なのは「舐める=可愛らしい」で終わらせず、愛犬との信頼関係を守りつつ、お互いに健康的な距離感を保つことです。スキンシップを正しく受け止めることで、愛犬と心地の良い関係を保てると良いですね。
【執筆・監修】
原田 瑠菜
獣医師、ライター。大学卒業後、畜産系組合に入職し乳牛の診療に携わる。その後は動物病院で犬や猫を中心とした診療業務に従事。現在は動物病院で働く傍ら、ライターとしてペット系記事を中心に執筆や監修をおこなっている。















