
犬の肥満は見た目では判断しにくい場合もあり、つい見過ごしてしまうこともあります。しかし、肥満は関節や内臓に関するさまざまな病気のリスクを高める重大な問題です。
この記事では、犬のボディコンディションスコア(BCS)を用いた肥満の見分け方、肥満の原因、肥満によって起こる病気のリスク、そして肥満の予防・改善方法などを詳しく解説します。
食事を中心に日々の生活を少し見直すことで、愛犬の健康寿命を延ばすことができます。愛犬がいつまでも元気に走り回れるように、今から体型管理に気をつけてみましょう。
犬の肥満の見分け方

肥満とは、体に必要以上の脂肪が蓄積された状態を指します。犬では一般的に、適正体重の15%以上を超えている場合に「肥満」と判断されます。
脂肪=悪ではなく、適度な脂肪は必要
「脂肪がついている=不健康」と思われがちですが、脂肪そのものが悪いわけではありません。
脂肪には、以下のような命を支える大切な働きがあります。
- エネルギー源になる
- 体温を保つ
- 内臓を衝撃から守る
健康な犬の体は「全体的にうっすらと脂肪がついている状態」が理想とされ、肋骨は触れるものの、外からゴツゴツと見えない程度が目安です。脂肪がまったくない状態は痩せすぎで、体力低下や免疫力の低下につながることもあります。
適正体重の目安
犬の適正体重は、年齢・体格・骨格・筋肉量などによって個体差があります。そのため、「犬種ごとの平均体重」だけでなく、その子自身の成長過程や体型に合わせて考えることが大切です。
目安としては、避妊・去勢前の成犬時の体重が理想体重であることが多いですが、より正確にはこれから紹介するBCSを使って評価し、獣医師に相談して適正体重を確認するのが安心です。
BCS(ボディコンディションスコア)

犬の肥満を見分ける指標として獣医師も用いるのが、BCS(Body Condition Score、ボディコンディションスコア)です。これは、犬の体型を見た目や触った感触からBCS1〜5の5段階で評価する方法です。
チェックするポイントは以下のとおりです。
- 肋骨が触れるかどうか
- 上から見たときのウエストのくびれ
- 横から見たときのお腹のライン
食後すぐはお腹が膨らんでいるため、食後数時間が経過し、犬がリラックスしている時にチェックしましょう。
BCS 1:痩せすぎ
- 肋骨や背骨が浮き出ていて、触らなくてもわかる
- 腰回りが極端に細くなっている
- 筋肉や脂肪がほとんどついていない
BCS 2:やや痩せ気味
- 肋骨がすぐ触れる
- 上から見ると腰がくっきり細くなっている
- お腹が引き締まり過ぎている
BCS 3:標準体型
- 肋骨が軽く触れるが、浮き出てはいない
- 上から見て腰に適度なくびれがある
- お腹は引き締まっているが、痩せすぎではない
BCS 4:やや太り気味

- 肋骨が触りにくい
- 腰のくびれがほとんどない
- お腹が少し丸みを帯びている
BCS 5:肥満
- 肋骨が脂肪に覆われてほとんど触れない
- 上から見て胴体が丸い体型をしている
- 下腹部が大きく垂れ下がっている
- 歩くとお腹が揺れる
BCS3が最も理想的な体型とされています。
犬が太る原因と、太りやすい犬の特徴

肥満の背景には、さまざまな生活習慣や身体的な要因があります。ここでは、特に肥満につながりやすい3つの要因を解説します。
- 年齢
- 避妊・去勢手術のあと
- 食習慣
それぞれ解説します。
年齢
犬は5歳を過ぎたあたりから代謝が徐々に低下していきます。特にシニア期(7歳以降)に入ると、若い頃と同じ食事や運動量では体重が増加しやすくなります。そのため、年齢に応じたフード選びや運動内容の調整が必要です。
避妊・去勢手術のあと
避妊や去勢手術を受けた犬は、ホルモンバランスの変化によって基礎代謝が10〜30%低下するといわれています。そのため、手術後も同じ食事量を続けていると、体重が増えやすくなる傾向があります。
手術を受けたら食事の量やカロリーを見直し、必要であれば避妊・去勢後用のフードに切り替えましょう。
食習慣
以下のような生活スタイルも、肥満のリスクを高めます。
- フードやおやつの量が多い
- 高カロリーのフードを与えている
- 人の食べ物を分け与えている
年齢や犬の状態によって、必要としているカロリーは異なります。その犬にあったフードを与えましょう。
Q.太りやすい犬種はありますか?

ビーグルやラブラドール・レトリーバーなどの大型犬全般は食欲旺盛な子が多く、体重が増えてしまうケースがしばしば見られます。
一方で、トイ・プードルやチワワなどの小型犬は、食自体にあまり興味を示さない子も多く、肥満になりにくい印象があります。しかし、小型犬はそもそも必要なエネルギー量が少ないため、少しの食べすぎでも太ってしまう犬もいるので気をつけましょう。
肥満による健康リスクと病気
肥満は、全身から局所まで、さまざまな病気と関連があると言われています。例えば、以下のような病気に注意が必要です。
- 関節の病気
- 呼吸器の病気
- その他の内臓の病気
- 麻酔時のリスク増
それぞれ解説します。
関節の病気
体重が増えると足や腰などの関節への負担が大きくなり関節が変形したり、炎症を起こしたりしやすくなります。また、膝蓋骨脱臼、椎間板ヘルニアなど外科的な治療が必要な病気にかかるリスクが高くなります。
呼吸器の病気
脂肪が気道や肺を圧迫し、呼吸が浅くなる・いびきをかく・運動を嫌がるといった症状が出ることもあります。
小型犬や短頭種に多い気管虚脱は、気管が潰れて呼吸がしにくくなり、「ガーガー」「ゼーゼー」といった咳や呼吸音が出るようになる病気です。首まわりに脂肪が多いと気管への圧迫が強くなり、症状が悪化しやすくなります。
その他の内臓の疾患
肥満になると肝臓にも脂肪が沈着し、脂肪肝という状態になります。すると、代謝や解毒といった肝臓の働きが悪くなり、さらに太りやすくなってしまいます。
麻酔時のリスク増
脂肪が胸や気道周囲に蓄積していると呼吸が浅くなり、麻酔中の酸素供給に支障が出ることがあります。また、麻酔薬は脂肪組織に残るため、麻酔の効きやすさ、麻酔からの回復の早さに違いが出ることがあります。
肥満の予防・改善は運動よりも食事管理

「肥満ですね」とお伝えすると、多くの飼い主さんがまず「運動が足りなかったんですね」と運動不足を気にされます。
もちろん運動は犬の健康維持にとって重要ですが、肥満の主な原因は「運動不足」ではなく「カロリーオーバー」であることがほとんどです。
自宅でできる肥満の対策を紹介します。
フードとおやつの見直し

獣医師と相談し、療法食や低脂肪・高たんぱくのフードへの切り替えを検討しましょう。フードは目分量ではなく、毎回測って与えましょう。
また、おやつのカロリーも1日の摂取カロリーに含めて管理します。フードの種類や量は適正でも、たくさんおやつを与えているせいでカロリーオーバーしているケースもあるので気をつけてください。
ダイエット中の犬には「量より回数」
ダイエット中の犬には、1回あたりの食事量を減らし、1日数回に分けて与える方法が効果的です。食事の回数を増やすことで満足感が得られやすく、空腹によるストレスの軽減にもつながります。
給餌のルールは家族で統一
家族全員が協力して、給餌のルールを統一することも重要なポイントです。誰かがこっそりおやつを与えてしまうと、努力が無駄になってしまうこともあります。
定期的な測定と受診
週に1回を目安に体重を測り、その変化を記録しておくことで、体重や体型の小さな変化にも早く気づくことができます。記録を残すことで獣医師に相談する際にも役立ちます。
まとめ
犬の肥満は、関節疾患や呼吸器障害、内臓疾患など、さまざまな病気のリスクを高めます。
原因の多くは食べすぎやおやつの与えすぎなど食事管理の問題です。フードの種類や量の見直し、家族での給餌ルールの徹底、定期的な体重・体型のチェックが予防と改善のカギです。体型のチェックには、BCSを用いる方法がおすすめです。
愛犬の体型の変化が気になる方は、まずは今日から、食事の量やおやつの回数を見直してみましょう。
【執筆・監修】
獣医師:安家 望美
大学卒業後、公務員の獣医師として家畜防疫関連の機関に入職。家畜の健康管理や伝染病の検査などの業務に従事。育児に専念するため退職し、現在はライターとしてペットや育児に関する記事を執筆中。















