ピースワンコから卒業していったワンコは、5013頭以上にのぼります(2025年5月末現在)。ワンコたちはどの子もみな家族ができると、穏やかで幸せそうな表情になり、まるで別人のように変わります。神石高原シェルターから卒業した「ファンキー」も幸せを手に入れたワンコの1頭です

「ファンキー」を家族に迎えてくれたのは、ピースワンコの神石高原シェルターのスタッフ・柴野。これまでワンコと暮らしたことがなかった柴野が「ファンキー」を家族に迎えたきっかけや、一緒に暮らす中で困ったことや嬉しいことなどのエピソードをご紹介します。
●ファンキーくん
・推定誕生日:2017/11/27
・受入日:2018/02/27
・卒業日:2025/04/30
・卒業場所:神石高原シェルター @pwj_jinseki

家族に迎えようと思ったきっかけ
昨年9月、業務を担当することになった犬舎で、「ファンキー」と出会いました。「ファンキー」は体は大きいけれど大人しく、いつもケージの中でくつろいでいるような子でした。その時点では特に気になることはありませんでしたが、4ヶ月ほど経ったある日、ふと目が合いました。
「そういえばこの子、いつも大人しいな」「体が大きくてずっしりしてて可愛いけど、触れるのかな…?怖くて噛んじゃう子じゃないかな…?」と思いながら、そっと手を伸ばしてみました。
すると、「ファンキー」は緊張しつつも、すんなりと触らせてくれたんです。その時、初めて意識してしっかりと「ファンキー」を見て、体が大きくて、目が大きくて、垂れ耳でとても可愛い!と思い、“「ファンキー」を引き取る!”と決意しました。

けれど当時、ペット不可の賃貸に住んでおり、車もリースだったため、「ファンキー」と一緒に暮すためにペット可のアパートを探し、車も買い替えました。同時に「ファンキー」のトレーニングも開始しました。
最初はハーネスを少し怖がっていた「ファンキー」でしたが、すぐにとてもおとなしくつけさせてくれました。1週間もたたないうちに、緊張しながらもゆっくり外を歩けるようになり、1ヶ月経つ頃には尻尾を上げて少しフリフリしながら楽しそうにお散歩できるようになりました。ここまで成長が早いとは、嬉しい驚きでした。

トレーニングをしながら、「ファンキー」がごはんとオヤツが大好きなことや、歯磨きガムなど上手に手を使って食べることを知り、日に日に「ファンキー」への愛が強まっていきました。
そして、引っ越しが終わり買い替えた車も来て、全ての準備が整った4月30日に、「ファンキー」が「うちの子」になりました!

お迎えして大変だったこと
実は「ファンキー」は抱っこが苦手なんです。抱っこしようとすると飛んで逃げてしまいます。毎日「ファンキー」と車で出退勤するために、車に立てかけるスロープを購入して、抱っこせずに自分で車に入れるようにしました。今では誘導すれば自分からスロープを上がってくれるようになりました!
また、家族に迎えて1ヶ月弱くらいは新しい環境に慣れていかったため、私がお風呂に入るときなどは「ファンキー」をサークルに入れていました。その間、30分未満の間に、サークルの中がぐちゃぐちゃになり、お水をひっくり返し敷いていた毛布がビリビリになっていたことがありました。

先輩スタッフから、野犬は今まで人から愛情を注がれたことがないから、迎えてから最初のうちに構いすぎると分離不安症になるよ!、と言われていたのを思い出し、「ファンキー」も分離不安症なのかもしれないと思いました。

けれど、1ヶ月以上経った頃には、サークルでリラックスして寝そべる姿を見ることが多くなり、今では数時間のお留守番でもストレスなく待っていてくれるようになりました!

また「ファンキー」はシャンプーはおとなしくさせてくれますが、ドライヤーが苦手。顔に風が当たると歯をムキムキして怒っていました。そのため、シャンプーが終わった後はタオルで体を念入りに拭いてあげて、お散歩などで自然乾燥させています。


お迎えして良かったこと、嬉しかったこと
私は今まで犬と暮らした経験がなかったため、「ファンキー」は初めて一緒に暮らすワンコでした。引き取ると決意したものの、本当に「ファンキー」を幸せにできるか、うまく一緒に暮らしていけるか不安がありました。

でも、毎日少しずつ私にも家にも慣れていく「ファンキー」を見るのがとても幸せで、いつの間にか不安は全くなくなっていました。
迎えた当初は、「ファンキー」がいるサークルに入って撫でると緊張した顔をして、しばらくするとサークルの外に逃げていくことが多かったのですが、最近はサークルの中に一緒に入って撫でてもリラックスして寝そべってくれるようになりました。「おすわり」や「伏せ」もできるようになりました。

そして「ファンキー」は走るのが好きだということも知りました。
お散歩の始めは必ず草むらまで全力疾走します。お散歩途中でも、こちらをチラチラ見ながらぐいぐい歩く時は「走りたい」という合図なので、一緒に走ってあげています!最近はハーネスやリードを持って「ファンキー!」と呼ぶと、ゆっくり私の方に歩いてきて、ハーネスをつけようとするとおとなしく伏せてくれるようになりました。

サークルの中で寝ている時は、中におじさんが入っているんじゃないかと思うくらい大きないびきをかいて寝ることが多く、それも「ファンキー」の可愛いところのひとつです。

最近、仙養シェルターでドッグランデビューもしました。「ファンキー」にとって広いドッグランは初めてだったのでとても緊張しましたが、ひとりマイペースに匂い嗅ぎをしながら歩いていて、とても可愛かったです。他のワンコとも上手に挨拶できていて、とてもお利口さんでした!

また、先日初めて1泊2日の旅行にも行きました。車が苦手なため長時間の移動が不安でしたが、初めてクレートの中で寝そべっているのを見て嬉しかったです。初めての旅館ではいつも通りの「ファンキー」でしたし、初めての海も怖がりつつ少しだけジャブジャブ入ってくれて、「ファンキー」の大きな成長を見ることができた良い機会になりました。

保護犬と暮らしたいと思う人へのメッセージ
「保護犬」と一口に言っても、これまでに経験してきたことや保護犬になった経緯は、一頭一頭のワンコごとに全て異なります。多頭飼育崩壊で保護された子、虐待されてきた子、劣悪な環境で過ごしてきた子、繁殖犬だった子、捨てられた子、野犬として保護された子など。どの子も、大小はあれどトラウマや人間に対する恐怖を抱えています。
生まれた時から人の愛情や温もりの中で育ってきたワンコたちとは全く違うと思っています。保護犬と一緒に暮らすには、どんなトラウマや恐怖も愛情で受け入れてあげることが大切なのかなと思います。

どんな保護犬も、こちらが全力で愛情を注げば、少しずつ分かってくれるようになると思います。絶対に溶けない氷のようなトラウマも、私たちが受け入れてあげて、いつか溶けるかもしれないと思いながら見守ってあげると良いのかもしれません。

何よりも、保護犬と暮らすことはとても幸せな気持ちになります。最初は人を怖がっていた子たちが、毎日少しずつ笑顔を見せてくれるようになり、撫でさせてくれるようになり、手からおやつを食べてくれるようになり、自分を信頼してくれるようになる――そんな成長を側で見守ることができるのは、何よりも幸せだなと思います。

また、私自身ピースワンコに就職するまでは、野犬に対して「歯を剥き出して襲いかかってくる怖いイメージ」を持っていました。しかし、実際に関わってみると、怖がりで臆病で、優しく、意外と撫でることができる子が多かったんです。
現状、野犬は殺処分対象になりやすいですが、愛情を注いであげればとても可愛い家族になります。

これから保護犬を迎える皆さま、その子が好きなことや嫌いなこと、得意なことや苦手なことを見つけてあげることを全力で楽しんでください。そして、一緒に幸せになってください。
保護犬の輪が広がりますように。

神石高原シェルター スタッフからのメッセージ
「柴野さんが「ファンキー」が生活している犬舎の担当になって暫くしてから、「ファンキーを引き取りたいくらい気になるので、トレーニングをしたいです!」と言ってくれました。最初に聞いたときは、他のスタッフと一緒にすごく驚きました。何回も聞き直すくらい驚きと不安がありましたが、この度、卒業をして本当に嬉しく思っています。

柴野さんは、毎日出勤するたびに「ファンキー」のトレーニングを実施してくれました。気がつくと「ファンキー」はお散歩にも行けるようになり、初めての場所でもヨダレをたらしながら、他のスタッフからオヤツをもらいに行けるまでになっていて、とても驚きました。
柴野さんは、「ファンキー」の抱っこや顔回りに風がかかると怒るなど、「ファンキー」の苦手なことも理解してくれて、それでも可愛いとたくさん愛情を注いでくれていました。

それもあってか、ある時は柴野さんの姿が見えないと給餌場の扉に立ち上がって張り付いて外を見ていたりと、引き取る前から飼い主を待っているような姿もありました。その時は、本当に飼い主が分かっているんだな~と思いました。

ただ、引き取るまでの間に健康診断をした際、心臓に少し心雑音があると診断されていました。しかし、それでも引き取りたいと言ってくださったので、本当に好きなんだなと改めて思い、同時にとても嬉しかったです。

柴野さんと「ファンキー」を通して、改めて野犬でも愛情をたくさん注いであげるとこんなにも変わるんだと感じました。これからも、たくさんの楽しい思い出を作って、幸せに過ごしてください。「ファンキー」のことをよろしくお願いいたします!(神石高原シェルター スタッフ一同)




※ピースワンコは、皆さまからのご寄付だけで活動しています。一頭一頭に寄り添ったお世話ができるのも、皆さまのご支援のお陰です。ワンコの命を守る活動を続けていくために、ご支援をよろしくお願いいたします。