
愛犬がソファや布団、お庭で一心不乱にホリホリ。とても可愛らしい姿ですが、やりすぎてソファに穴が開いたり、散歩の度に泥だらけになると困ったものです。実はこの行動、本能的なしぐさの場合もあれば、ストレスや病気のサインの可能性も。本記事では、犬が掘る理由から病気を疑う危ない堀り方のサイン、上手な止めさせ方まで詳しく解説します。愛犬の堀る仕草に照らし合わせて確認してみましょう。
犬が「掘る」のはどうして?

愛犬が掘る姿を見かけると、つい「いたずら」「困ったクセ」と捉えがちですが、実は「掘る」行動には、本能的な習性や健康・精神状態のサインが隠れています。
野生時代の名残、本能行動から

犬が掘る行動の多くは、祖先であるオオカミ時代の習性に由来しています。
野生では、巣穴を作ったり、食料を隠す、獲物を探すなど「掘る」行動を日常的に行っていました。この名残が現代の犬にも備わっており、特に狩猟犬として改良されたダックスフンドやテリア種、ビーグルなどで多く見られます。また、ポジティブな本能行動(遊び、寝床づくりなど)からくる行動も多く、ほとんどは心配のいらない行動です。
病気や心の不調からくることも
一方で、犬の掘る行動が病気のサインのケースもあります。たとえば、高齢犬が急に穴を掘り続けるようになった場合、「認知症」や「常同障害(常同行動)」など病気の可能性があります。また、過剰な掘る行動は「不安障害」や「強迫性障害(CCD)」などの精神疾患とも関連があるとされています。
遊び・本能からくる「堀り」とその理由

犬が楽しそうに掘る場面では、本能に基づいた「遊び」や「寝るため」「隠すため」「ストレスの発散」といった生活習慣の一部であることが多いです。特に若くて元気な犬は、掘ること自体を楽しんでいるため、そこまで心配する必要はありません。
寝る前のホリホリ→寝床を作っている

布団やベッドを掘る行動は、眠る前によく見られる習性のひとつです。野生時代に安全な場所で眠るため、地面を掘って巣穴を作っていた名残と言われています。掘ることで寝床の硬さや形を自分にフィットさせ、リラックスした状態で眠る準備をしていると考えられています。
食べ物やおもちゃを隠す→防衛本能
犬が食べ物やお気に入りのおもちゃを隠すように掘る行動も、本能に基づいた行動です。犬の祖先は獲物を一度に食べきれないとき、土に埋めて保存していました。現代でもこの名残から、大切なものをクッションや毛布を掘って隠していると考えられています。
楽しそう・リラックスして掘る→遊んでいる
犬が楽しそうに掘っているときは、単純に遊びとして楽しんでいる可能性が高いです。特に若い活動的な犬で多く見られ、好奇心やテンションの高まりから、堀り行動がエスカレートすることもあります。
注意すべき危険な掘り方の特徴

掘る行動そのものは本能的なもので、特に心配はいりません。しかし、中には注意すべき異常行動が含まれていることもあります。掘る頻度や時間が極端に多い場合は、早めに動物病院で相談しましょう。
ストレスや不安からくる掘り行動
犬は強いストレスや不安から過剰に掘る行動をする場合があります。長時間の留守番、スキンシップ不足、生活環境の変化などがストレスとなり、掘ることで気を紛らわせていると考えられます。この行動は「カーミングシグナル」と呼ばれ、自分を落ち着かせようとする無意識の行動です。当てはまる場合は、生活リズムや接し方に変化がなかったか振り返ってみてください。
老犬が急に掘り続ける場合は「認知症」のサインかも
高齢犬が急にしつこく掘り始めた場合、認知機能の低下が関係していることがあります。犬の認知症(犬認知機能不全症候群)は、行動や生活習慣にさまざまな変化をもたらします。同じ場所を何度も掘り続けたり、夜泣き、落ち着きがなくなるといった行動があれば注意が必要です。環境改善や投薬治療で進行を緩やかにすることも可能なため、早めの受診を心がけましょう。
常同行動(異常行動)の可能性にも注意を
常同行動(じょうどうこうどう)とは、同じ行動を理由なく何度も繰り返す行動を指します。掘る行動が1日に何度も長時間続く場合、精神的なトラブルや脳の疾患の可能性があります。早めの治療で症状が改善する場合もあるため、早めの相談が何よりも大切です。
掘る行動の上手なやめさせ方

掘るのをやめさせたいと感じたときは、原因に合った適切な対応をとることが重要です。ここでは、犬に無理のない形で掘りを減らすためのコツを紹介します。
無理に止めさせるのはNG
掘る行動を無理に止めさせることは逆効果です。叱ったり、強制的に止めさせると「飼い主に構ってもらえた」と勘違いし、掘る頻度が逆に増えることもあります。まずは落ち着いた対応を心がけましょう。
穴掘りしてもいい環境をあえて用意
掘る行動をやめさせるのではなく、“掘ってもいい場所”をあえて用意する方法は非常に効果的です。たとえば、庭の一角に掘っても良いゾーンを作ったり、室内に「ノーズワークマット」や「穴掘りマット」などを活用することで、犬の欲求を満たすことができます。このとき、愛犬が正しい場所で掘るたびに褒めてあげることで定着しやすくなります。堀りたい欲求を受け止めてあげることも、ストレス軽減と問題行動の予防につながります。
掘り以外の遊びに集中させる

退屈な時間が多いと掘る行動は起きやすくなるため、夢中になれる代わりの遊びを教えてあげるのも有効です。引っ張り合いをするロープ遊びや、フードを隠して探させるノーズワーク、知育玩具などはとても良いストレス発散になります。
ストレスの少ない生活環境を
掘る行動を根本から減らすには、犬にとってストレスの少ない生活環境を整えることが重要です。運動量が足りているか、安心して休める場所があるか、スキンシップや遊びは十分かを見直しましょう。また、生活にメリハリをつけることもポイントです。決まった時間に散歩や食事、遊びを取り入れることで犬の心の安定につながり、掘る頻度も減少する傾向があります。
掘る仕草から心と体のサインを見極めよう
犬の「掘る」行動は、単なるクセや遊びではなく、心や体からの大切なメッセージです。多くの本能的な行動に紛れて、ストレスや不安、加齢に伴う変化、疾患の兆候が隠れていることもあります。飼い主がそのサインに早めに気づいてあげることが大切です。掘る行動を一方的に止めさせるのではなく、愛犬を理解してあげて適切な接し方をすることで、掘る行為によるトラブルを防げるはずです。
【執筆・監修】
原田 瑠菜
獣医師、ライター。大学卒業後、畜産系組合に入職し乳牛の診療に携わる。その後は動物病院で犬や猫を中心とした診療業務に従事。現在は動物病院で働く傍ら、ライターとしてペット系記事を中心に執筆や監修をおこなっている。















