「愛犬が自分の手や足をよくなめているけれど大丈夫？」と不安に感じたことはありませんか？犬のなめる行動はストレスや癖だけでなく、ケガや病気など重大なサインであることもあります。この記事では、愛犬が手足をなめる原因から、注意すべき症状、家庭でできるケアから病院に行くべきポイントまで詳しくご紹介します。愛犬の行動を正しく理解して、“なめ行動”を改善しましょう。
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犬が手や足をなめる主な理由
犬にとってなめる行動は日常的なものですが、時には病気が隠れている場合もあります。ここでは、愛犬が手足をなめる代表的な理由について解説します。
毛づくろい（グルーミング）
犬はもともと自分の体をなめて清潔を保つ「グルーミング（毛づくろい）」という習性があります。特に散歩の後や汚れがついたときなど、自然な行動として足先や肉球をなめることがあります。この場合は、なめる時間が長すぎたり、皮膚に赤みや炎症などの異常がなければ大きな問題はありません。
しかし頻度が増えたり、皮膚が荒れている場合には、単なるグルーミングではなく、別の原因が隠れている可能性も考えられます。
ストレスなどの心理的要因
犬はストレスを感じると、その不安や退屈を紛らわせるために手足をなめることがあります。留守番が長引いたり、生活環境の変化、散歩や遊びの時間が少ないときなど、精神的な負担がかかると、なめる行動が見られることも多いです。
ストレスが原因の場合、なめる以外にも吠える、物を壊す、元気がなくなるといった行動が現れることがあります。心のケアを怠ると、症状が悪化したり、ほかの問題行動に発展するケースもあるため、注意しましょう。
病気やケガなどの身体的要因
なめる原因のひとつとして皮膚炎やアレルギー、ケガなど身体的な問題が隠れていることも少なくありません。例えば、足先に違和感や痛みがある、肉球に炎症が起きている、部分的な脱毛や赤みが見られる場合は、皮膚や関節のトラブルが疑われます。
特に、なめる部位に腫れや出血がある、特定の足だけなめているといった場合は、速やかに動物病院を受診することが必要です。
習慣や癖としてのなめ
なかには、特に病気やストレスがなくても、なめることが習慣や癖になっている犬もいます。これは幼少期からの癖や、なめることで飼い主に注目されるといった経験が影響している場合があります。習慣化してしまうと、必要以上に同じ部位をなめ続けてしまい、結果として皮膚炎など新たな問題を引き起こすこともあります。単なる癖でも、頻度や時間が多い場合は要注意です。
手足をなめる原因となる病気一覧
手足をなめる行動の裏には、重大な病気や身体の異変が隠れている場合があります。異常があれば早めに受診し、適切な治療を行うことが重要です。
皮膚炎やアレルギー
犬がしきりに足先や肉球、特定の部分をなめている場合、細菌・マラセチア性皮膚炎やアレルギーが原因であることが多いです。
皮膚炎は、皮膚に炎症が起こり、赤みやかゆみ、脱毛、場合によっては膿が出ることもあります。アレルギーの場合、花粉やハウスダスト、食物などさまざまなものが原因となり皮膚に症状が現れます。
特に同じ部位を何度もなめている、悪化して皮膚がただれている場合はすぐに動物病院を受診することが大切です。適切な治療により、症状の改善が期待できます。
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関節炎や骨折、外傷
犬が後ろ足や特定の部位ばかりなめている場合、関節炎や骨折、捻挫、外傷なども考えられます。
関節炎は高齢のペットに多く見られる疾患で、痛みや違和感からその部分をなめてしまうことがあります。外傷の場合は、散歩中にガラス片や小石で肉球を傷つけているケースも。
もし歩き方に異常があったり、痛みの様子がある場合は、速やかに専門の獣医師に相談してください。治療が遅れると症状が悪化し、長期的な問題に発展することもあるため注意が必要です。
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内臓疾患の可能性も
まれに、足先をなめる行動が内臓疾患のサインとなる場合もあります。たとえば、慢性的な身体の痛みや不調があると、犬はその不安や違和感を和らげるためになめることがあります。
こうした場合、手足のほかにも食欲不振や元気がない、嘔吐や下痢など全身症状が見られることも多いです。気になる症状が複数見られた場合は、自己判断せずに早めに受診しましょう。
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こんな症状が出たら動物病院へ
犬が手足をなめる行動が日常的でも、急激に増えたり、異常な症状が見られる場合は早めに動物病院を受診することが必要です。以下の症状が見られる場合は、すぐに動物病院を受診しましょう。
なめる頻度・強さが異常
犬が普段よりも頻繁に、または執拗に同じ部位をなめ続けている場合は要注意です。短時間で何度も足先や肉球をなめている、睡眠や散歩の時間よりなめる時間が長くなっている場合、ストレスや身体の違和感、痛み・かゆみが強い可能性があります。このような行動が続くと皮膚が傷つき、さらなる炎症や感染症に発展するリスクも高まります。
出血・腫れ・脱毛などの症状
手足の一部をなめているうちに、その部分に出血や赤み、腫れ、脱毛などの症状が現れることがあります。これらの症状は、皮膚炎や外傷など問題が進行しているサインです。放置すると症状が悪化し、治療に時間がかかるだけでなく、犬が強い痛みやストレスを感じ続けることになります。早めに動物病院を受診し、適切な対処法をとることが大切です。
食欲不振や元気がない
手足をなめる行動と同時に、食欲不振や元気がなくなるといった全身症状が見られた場合、体のどこかに重大な問題が隠れている可能性があります。
たとえば、内臓疾患や慢性的な痛み、発熱などがあると、犬は不安を和らげるために手足をなめることも。「いつもと様子が違う」「ごはんを食べなくなった」と感じたら、自己判断せず獣医師の診察を受けるようにしましょう。
なめ癖をやめさせるための対策
犬のなめ行動を減らすためには、飼い主が環境や生活習慣を見直し、適切な対策をとることが重要です。できることから少しずつ始めていきましょう。
ストレスを減らす環境づくり
まずは、犬が感じているストレスや不安を取り除くことが大切です。散歩や遊びの時間を増やしたり、安心できる空間づくりでなめ行動を減らせる場合があります。飼い主が愛犬と過ごす時間を意識して確保し、コミュニケーションをとることも効果的です。また、生活リズムの乱れや環境の急激な変化は、犬のストレスの原因になるため意識して見直しましょう。
なめ防止グッズの活用
なめ癖がなかなか改善しない場合は、市販のなめ防止グッズを利用する方法も有効です。たとえば、なめても安全な苦味スプレーやエリザベスカラー（首に巻く保護具）などを使うことで、犬が手足を直接なめるのを防ぐことができます。これらのグッズは、皮膚の炎症や悪化を防ぐだけでなく、犬自身がなめることを忘れるきっかけ作りにもなります。
ただし、根本原因が解決されていない場合は一時の効果にとどまることがあるため、原因を考えた上で適切な使い方と併用が必要です。
困ったら専門機関へ相談しよう
家庭でできる対策を試しても改善しない、またはなめ行動が悪化している場合は、早めに専門機関に相談しましょう。特に、ストレスや癖などの精神的な原因でも、生活改善や薬・サプリメントによる内科療法、トレーニングなどで症状が改善する場合もあります。
予防と日々のチェックポイント
愛犬のなめ行動を防ぎ健康を保つには、毎日のケアと定期的な健康チェックが不可欠です。ここではすぐに実践できる予防とチェックのコツを紹介します。
毎日のケアで早期発見を心がける
日頃からスキンシップの中で、手足や肉球の状態を毎日確認し、赤みや傷、炎症などの異変がないか観察しましょう。散歩から帰った後は、拭き取りながら足先や爪の間にゴミや小石が挟まっていないかもチェックしてください。毎日のスキンシップは、愛犬の健康状態を知る絶好の機会です。
病院やサロンで定期チェックを
自宅でのケアに加え、動物病院やトリミングサロンで定期的にチェックしてもらうことで、早期発見につながります。特に年に1〜2回は動物病院で健康診断を受け、必要に応じて皮膚や足先のケアも依頼しましょう。定期的なチェックは、病気や炎症の早期発見・予防に役立ちます。
なめ行動を防止して快適にすごそう
愛犬が手足をなめる行動にはさまざまな理由がありますが、飼い主が正しく原因を見極めて適切に対策することで、健康な生活を守ることができます。日々のケアと予防で、愛犬とより楽しく健やかな毎日を楽しみましょう。
【執筆・監修】
原田 瑠菜
獣医師、ライター。大学卒業後、畜産系組合に入職し乳牛の診療に携わる。その後は動物病院で犬や猫を中心とした診療業務に従事。現在は動物病院で働く傍ら、ライターとしてペット系記事を中心に執筆や監修をおこなっている。
