
愛犬の日々の生活のなかで、食事は健康を支える大切な要素です。しかし、「食事の回数は1日に何回がベストなの?」と疑問に思う飼い主もいらっしゃる事でしょう。犬に与える食事の適切な回数は、年齢や健康状態によって変化します。子犬、成犬、老犬といったライフステージに合わせて食事回数を調整することが、愛犬の健康維持に繋がります。
この記事では、ライフステージ別の適切な食事回数から、回数を変更する際の注意点まで、分かりやすく解説します。
犬の食事回数はライフステージで変わることが基本

犬の食事回数を決めるうえで最も重要なのは、ライフステージ(年齢)です。子犬、成犬、老犬では、必要とするカロリーや消化能力が異なるため、それぞれに適した回数があります。
子犬期(〜1歳頃):消化器官への負担を軽くして成長をサポートする
子犬は急速に成長するため、成犬より多くの栄養を必要とします。しかし、消化器官がまだ十分に発達しておらず、一度に多くの量を食べることができません。そのため、1日に必要な食事量を複数回に分けて与えることが重要です。
生後半年頃までは1日3〜4回、それ以降から1歳になるまでは1日2〜3回を目安にしましょう。 少量を数回に分けて与えることで消化の吸収を助け、健やかな成長をサポートします。
| 時期 | 1日の食事回数の目安 |
|---|---|
| 生後4ヶ月頃まで | 4回程度 |
| 生後半年頃まで | 3〜4回 |
| 1歳頃まで | 2〜3回 |
成犬期(1歳〜7歳頃):エネルギー消費と生活リズムを安定させる
成長が落ち着く成犬期は、1日2回(朝・晩)の食事が一般的です。 1日2回の食事は、空腹の時間を長く作りすぎず、胃への負担を軽減できるというメリットがあります。食事の間隔を約12時間にすることで、消化にも十分な時間を確保できます。 もちろん、犬種や活動量によって適切な回数は異なるため、愛犬の様子を見ながら調整することが大切です。
老犬期(大型犬・超大型犬:5~8歳頃〜、小型犬:10~11歳頃~):消化機能の衰えに合わせて食事を工夫する

大型犬・超大型犬は5〜8歳頃、小型犬は10〜11歳頃からシニア期に入ります。犬種やサイズによってシニア期の開始時期が大きく異なるため、愛犬の個別の状況を獣医師と相談することが重要です。
シニア期になると、運動量が減少し、消化管にいくつかの構造的・機能的変化が起こります。具体的には、唾液や胃酸の分泌減少、腸絨毛のサイズ減少、結腸運動性の低下、腸内細菌叢の変化などが見られます。
ただし、研究によると健康なシニア犬の大部分は全体的な消化効率を維持することが示されています。そのため、一度にたくさんの量を食べると負担になる可能性があるものの、適切な食事管理により消化機能を維持することが可能です。
成犬期と同じ1日2回を基本としつつも、愛犬の食欲や体調、個体差に合わせて、獣医師の指導のもと1日の食事量は変えずに回数を2〜4回に調整することが推奨されます。回数を増やすのは、一回あたりの食事量を減らし、消化器官への負担を軽減するためです。また、食事の変化は健康問題の早期発見にも役立ちます。
愛犬に合った食事回数を決めるためのポイント

ライフステージごとの基本回数を踏まえつつ、愛犬それぞれの個性や体調に合わせた調整が大切です。ここでは、食事回数を決める際に意識したい3つのポイントをご紹介します。
食事の間隔はできるだけ均等に保つ
食事の時間を毎日なるべく同じにすることで、生活リズムが整い、犬も安心して過ごせます。1日2回の場合は、朝と晩に約12時間間隔をあけるのが理想的です。
1日3回の場合は、朝・昼・晩と約8時間ずつ間隔をあけるとよいでしょう。均等な間隔で食事を与えることで、空腹によるストレスや、胃酸過多による嘔吐などを防ぐ効果が期待できます。
1日に必要な食事の総量を変えずに回数を調整する

食事の回数を変更する際は、1日に与えるフードの総量が変わらないように注意が必要です。回数を増やす場合は、1日に与える量をその回数で割り、1回あたりの量を減らします。逆に回数を減らす場合は、1回あたりの量を増やします。総量を変えてしまうと、カロリーの過剰摂取による肥満や、栄養不足につながる恐れがあるため、必ず守るようにしましょう。
| 1日の総給与量 | 食事回数 | 1回あたりの給与量 |
|---|---|---|
| 100g | 2回 | 50g |
| 100g | 3回 | 約33g |
| 100g | 4回 | 25g |
愛犬のうんちの状態や体型を毎日観察する
食事の回数や量が適切かどうかは、愛犬のうんちの状態や体型にも表れます。適度な硬さで、ティッシュでつかめるくらいのうんちが理想的です。うんちが緩すぎる場合は量が多すぎたり、逆に硬くてコロコロしている場合は量が少なすぎたりする可能性があります。また、肋骨がうっすらと確認でき、上から見て腰にくびれがあるのが理想的な体型です。日頃から愛犬の体を触り、観察する習慣をつけましょう。
こんなときはどうすればいい?食事回数のお悩みQ&A

ここでは、愛犬の食事の回数に関する、飼い主が知っておいてほしい、いくつかの疑問にお答えします。
食事の回数を1日1回にしても問題ありませんか?
結論から言うと、1日1回の食事はあまり推奨されません。空腹の時間が長くなりすぎると、胃酸が多く分泌されて吐いてしまったり、一度に大量に食べることで胃捻転などのリスクが高まったりするためです。特に子犬や小型犬は低血糖を起こしやすいため危険です。特別な理由がない限りは、1日2回以上に分けて与えるのが安心です。
決まった時間に食事を与えられない場合の対策はありますか?
飼い主の生活スタイルによっては、毎日決まった時間に食事を与えるのが難しい場合もあるでしょう。その場合は、自動給餌器(オートフィーダー)を活用するのも一つの方法です。設定した時間に自動でフードが出てくるため、外出時や忙しいときでも規則正しい食事を維持することができます。
食欲が落ちているときの食事回数はどう調整しますか?
シニア期に入ったり、体調を崩したりして食欲が落ちているときは、無理に食べさせる必要はありません。1回の食事量を減らし、その分、食事の回数を3〜4回に増やしてみましょう。 少量ずつ与えることで、消化の負担を軽減し、食べてくれる可能性があります。
また、フードをお湯でふやかして香りを立たせるのも効果的です。ただし、食欲不振が続く場合は、病気が隠れている可能性もあるため、早めに動物病院を受診してください。
避妊・去勢手術の後は食事回数を変えるべきですか?
避妊・去勢手術後は、ホルモンバランスの変化により、太りやすくなる傾向があります。食事の回数を変える必要は必ずしもありませんが、これまでと同じ量の食事を与えていると肥満になる可能性があります。獣医師と相談のうえ、術後の経過に合わせて、エネルギー供給量の少ない避妊・去勢後用のフードに切り替えるか、食事量を調整することを検討しましょう。
安全に食事回数を変更するための注意点

愛犬の成長や体調に合わせて食事回数を変更する際は、体に負担をかけないよう、慎重に進めることが大切です。
1週間ほどかけてゆっくりと回数を移行させる
食事回数を変えるときは、急に変えるのではなく、1週間程度の移行期間を設けましょう。たとえば、1日3回から2回に減らす場合、最初の数日間は昼の食事量を少しずつ減らし、その分を朝と夜の食事に上乗せしていきます。徐々に体を慣らしていくことで、消化器系への負担を最小限に抑えることができます。
食事回数だけでなくフードの種類や量も同時に見直す
食事回数を見直すタイミングは、フードの種類や量を見直す良い機会でもあります。特に子犬から成犬へ切り替わるタイミングでは、子犬用フードから成犬用フードへと変更する必要があります。フードのパッケージに記載されている給与量を目安に、愛犬の活動量や体型に合わせて適切な量を計算しましょう。
| ライフステージ | フードの種類 | 特徴 |
|---|---|---|
| 子犬期 | 子犬用(パピー) | 高カロリー・高タンパクで成長をサポート |
| 成犬期 | 成犬用(アダルト) | 健康維持のためのバランスの取れた栄養 |
| 老犬期 | 老犬用(シニア) | 低カロリーで消化に配慮した栄養 |
変更後に体調に異変がないか慎重に観察する

食事回数を変更した後は、愛犬の体調に変化がないか注意深く観察してください。特に、うんちの状態(下痢や便秘をしていないか)、食欲、元気さなどをチェックしましょう。もし嘔吐や下痢が続くなど、何か異変が見られた場合は、いったん元の食事回数に戻し、かかりつけの獣医師に相談することをおすすめします。
まとめ
犬の適切な食事回数は、ライフステージや健康状態によって異なります。子犬期は消化器官への負担を考慮して1日3〜4回、成犬期は1日2回、老犬期は体調に合わせて2〜4回と調整するのが基本です。
愛犬の様子をよく観察しながら、その子に合った食事のスタイルを見つけてあげることが、健康で長生きしてもらうための鍵となります。この記事を参考に、ぜひ愛犬との食生活を見直してみてください。














