犬のよだれが多いのは病気?原因から病気の種類、予防・対策方法まで解説【獣医師監修】

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愛犬のよだれがいつもより多いと「病気かな?」と不安になるものです。この記事では、犬のよだれの正常な状態と異常な状態の見分け方、考えられる原因や受診すべきタイミングまで、わかりやすく解説します。愛犬の異変に早く気づき、正しいケアで健康的な生活をサポートしてあげましょう。

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犬のよだれはどこまでが正常?

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犬の唾液(よだれ)は食べ物の消化や体温調節、口内の清潔を保つために必要不可欠な生理現象です。ただし普段と違う状態のときは注意が必要です。食事の前や興奮時に一時的に見られるよだれの増加は正常ですが、長時間続いたり、泡や血が混じる、あるいは異臭がするなどの場合には、病気の可能性があるため早期の受診が必要になります。

犬がよだれを垂らす主な理由

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犬がよだれを垂らすのには大きく分けて「生理的」「心理的」「病的」の3つの原因が考えられます。

生理的なよだれ

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生理的なよだれは、健康な犬でもよく見られる自然な現象です。代表的な例として、食事のにおいに反応した時や、暑さによるパンティング(口を開けてハァハァと呼吸する体温調節行動)が挙げられます。

特にパグやフレンチブルドッグのような短頭種(鼻が短く口腔構造が特徴的な犬種)では、もともと唾液が溜まりやすく、セントバーナードやマスティフなどの大型犬も唾液腺が発達しているため、日常的によだれが多く見られることがあります。

このような場合は病気ではないため、飼い主が過度に心配する必要はありません。ただし、「よだれやけ(よだれで毛や皮膚がただれる症状)」などの二次的な皮膚トラブルには注意が必要です。

心理的なよだれ

犬はストレスや緊張でもよだれを多く垂らすことがあります。例えば、動物病院に行く前や、留守番の直前、他の犬との接触時など、犬が不安を感じる場面では自律神経が刺激され、唾液の分泌が増加します。このタイプのよだれは状況が落ち着けば自然におさまることが多く、特に病気の症状ではありません。

ただし、頻繁に同じような状況でよだれが増える場合は、慢性的なストレスが蓄積している可能性があり、行動環境や日常の習慣を見直す必要があります。またストレスによるよだれは、食欲が落ちる、足を舐め続けるなどの行動異常を伴うことがあります。そうした場合には、獣医師への相談を検討しましょう。

病的なよだれ

病気によるよだれは、見逃してはいけない重要なサインです。歯周病や口内炎などの炎症があると、口の中の痛みで唾液が多くなり、よだれを垂らすようになります。また、胃炎や腎不全、肝障害といった全身性疾による吐き気でも、よだれが多くなることがあります。

さらに急激なよだれの増加は、誤飲や中毒(洗剤・植物・薬物など)によっても起こるため、早急な対処が必要です。唾液に血や泡が混じっている、においが異常、あるいは舌や歯茎に違和感がある場合は、すぐに動物病院を受診すべきです。よだれ以外の症状(元気がない、痛がるなど)とあわせて観察することが重要です。

異常なよだれの見分け方

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犬のよだれは、生理的なものもあれば、命に関わる病気のサインであることもあります。違いを見極めるには、「いつもと違うよだれ」を見逃さないことが重要です。ここでは、特に注意すべき異常なよだれの特徴を解説します。

量が多い、止まらない場合

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よだれがダラダラと垂れ続けて止まらない場合、異常サインである可能性が高いです。胃拡張・胃捻転(いねんてん)といった消化器の急性疾患や、中毒、誤飲などの緊急事態でも、よだれが急に大量に出ることがあります。急性疾患の場合は短時間で急速に症状が悪化し、ショック症状や死亡に至るケースもあるため早期の対処が極めて重要です。

また、犬の歯周病や口内炎でも痛みによってよだれが慢性的に増えます。歯石や歯肉の炎症があると唾液の分泌が過剰になり、顎が濡れやすくなるのが特徴です。とくに中〜高齢の犬に多く見られるため、定期的なデンタルケアや歯科検診を行いましょう。

血が混じる、異常なにおい

よだれに血が混じっていたり悪臭がする場合は、口や消化器に深刻な異常がある可能性があります。

よく見られるのは歯周病や口内炎による出血です。特に悪化した歯周病では、歯と歯茎の隙間から出血し、それが唾液に混じることがよくあります。放置すれば炎症が顎の骨にまで広がることもあり危険です。

また、口腔内腫瘍(悪性メラノーマ、線維肉腫など)の場合にも、出血や強いにおいを伴うよだれが出ることがあります。痛みを伴い、食欲不振や偏った食べ方、頭を傾けるなどの行動が同時に見られることもあります。


さらに、消化器の疾患や中毒症状によっても、唾液の性質が変化し異臭を放つことがあります。明らかに異常なにおいや色をしている場合は、すぐに受診しましょう。

【関連記事】愛犬の口が臭い?犬の口臭の原因から病気、対策方法まで詳しく解説

よだれ以外の症状がある

よだれの異常だけでなく、他の症状が同時に現れている場合は、病気が全身に及んでいる可能性があります。ぐったりして動かない、痛み・かゆみが強い、呼吸が荒い、吐き気があるなどの症状と組み合わさっている場合には、内臓疾患や神経系の異常が疑われます。

特に熱中症やてんかん発作では、よだれとともにふらつきや意識混濁(いしきこんだく|意識障害のひとつ)などが見られ、命に関わる緊急症状であるため注意が必要です。

また、慢性の腎不全や肝機能不全、アレルギー性の皮膚炎などでも、吐き気や不快感によってよだれが増えるケースがあります。飼い主が「なんとなく元気がない」「様子がおかしい」と感じた時点で、すでに異常が進行している場合もあるため、違和感を見逃さないようにしましょう。

考えられる病気とその症状

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犬のよだれが異常に増えた場合、単なる一時的な反応ではなく、何らかの病気が隠れている可能性があります。ここでは、よだれが現れやすい主な疾患を紹介します。

口内の病気

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最も頻度が高いのが、口の中のトラブルです。歯周病や歯肉炎、口内炎は犬のよだれを増やす代表的な病気で、特にシニア期の愛犬でよく見られます。

歯の根元に炎症が起こると強い痛みがあり、食べ物を噛めなかったり、口臭の悪化の他に歯のぐらつき、クシャミなどの症状が見られます。

さらに、悪性メラノーマや扁平上皮癌(へんぺいじょうひがん)などの口腔内腫瘍(こうくうないしゅよう|口の中にできる腫瘍)が原因でよだれが出る場合は、出血や異臭、口の変形などが見られることがあります。進行が早いため早期発見が重要です。

【関連記事】犬の歯周病は放置すると危険!症状からリスク、対処法までを詳しく解説

消化器系の病気

胃や腸などの消化器の異常も、よだれの増加を引き起こす原因のひとつです。胃炎や腸炎、膵炎などでは、吐き気や不快感により唾液の分泌が増加し、よだれが増える場合があります。

特に、胃拡張・胃捻転症候群はよだれが増える病気の中でも非常に緊急度が高い疾患です。お腹が膨れる、吐きたそうにしても吐けない、苦しそうな症状が見られます。命に関わる可能性があるため即座の受診が必要です。

また、慢性的な胃腸障害の場合、よだれが断続的に増えることがありますが、同時に食欲低下や軟便、腹部の違和感などを伴う場合は病気のサインと考えるべきです。

【関連記事】犬の胃捻転に要注意!食後の散歩が危険な理由と正しい対処法

中毒や誤飲、熱中症など緊急疾患

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よだれが突然大量に出た場合、急性中毒や誤飲・熱中症といった緊急疾患の可能性を疑うべきです。チョコレートやネギ類、洗剤などの誤飲は、激しいよだれ・震え・嘔吐を伴い、処置が遅れると命に関わります。同様に、有毒植物(ツツジやキク)や薬物による中毒も、唾液の異常分泌を引き起こします。

また、高温多湿の環境で起こる熱中症では、体温調節のために過剰なパンティングが起き、それに伴ってよだれが大量に出ます。呼吸が荒い、舌の色が赤くなる、ふらつくなどの症状が同時に見られたら、すぐに身体を冷やしながら動物病院へ向かってください。

【関連記事】犬が中毒を起こす食べ物とは?危険な食材と誤食の対処方法を解説

神経系疾患

脳や神経に異常がある場合にも、よだれが止まらなくなることがあります。

代表的なのはてんかんで、発作の前兆として唇を舐め続けたり、落ち着きがなくなったりすると同時に、よだれがダラダラと流れ出すことがあります。てんかんの発作自体は数分で治まることが多いですが、「群発発作」や「重積発作」と呼ばれる状態では命に関わるため、発作後も要注意です。

また、脳腫瘍や神経伝達障害、脳炎などでも、嚥下障害(飲み込みにくさ)が起こり、唾液をうまく飲み込めずに垂れるようになります。このような場合には、頭の傾きや目の動きの異常、後ろ足のふらつきなども併発することが多いため、全身の行動変化にも注意を払いましょう。

【関連記事】愛犬がてんかん発作を起こしたらどうすればいい?症状・原因・対処法を解説

その他全身疾患

口や胃だけでなく、体の中で進行する全身性疾患もよだれの異常と関係しています。慢性腎不全では、体内に毒素がたまり、吐き気や食欲不振を伴ってよだれが増えることがあります。同様に、肝機能の低下や門脈シャント(肝臓に流れる血液の異常)も、神経症状と併せて唾液の分泌が増える要因となります。

こうした全身性疾患では、必ずしもよだれが最初の症状として現れるとは限りません。日頃から愛犬の様子を細かく観察し、些細な違和感でも動物病院に相談する姿勢が大切です。

【関連記事】犬の腎不全とは?急性と慢性の違い・治療・食事管理の基本

自宅でできるよだれの予防・ケア方法

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愛犬のよだれがトラブルにならないようにするためには、日常の中で小さな工夫を積み重ねることが大切です。ここからは、自宅でできるよだれの予防・ケア方法をみていきましょう。

デンタルケアを忘れずに

最も基本的で効果的なのが口腔内のケアです。毎日の歯磨きは理想ですが、難しい場合は犬用のデンタルガムや歯磨きシートなど、無理なく続けられるアイテムを活用してみるのもおすすめです。まずは週に1回でもいいのでデンタルケアの習慣をつけましょう。

よだれを拭き取り清潔に

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よだれが皮膚に長時間ついたままだと、足先や口元の皮膚炎、肉球のただれにつながることがあります。食後や暑い日の散歩後には濡れたガーゼやウェットティッシュで軽く口周りを拭き、必要に応じて乾いたタオルで水気を取ると炎症の予防になります。

特にシワのよりやすい短頭種(フレンチブルドッグ、パグ、ブルドッグなど)はよだれがシワに入り込み雑菌が繁殖しやすくなるため、顎周りのシワの間も忘れずに拭き取りましょう。

生活環境を整える

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誤飲や中毒の予防として、掃除の際に犬が届く場所に洗剤や観葉植物、小さなおもちゃを置かないよう注意しましょう。キッチンや洗面所などは特にリスクが高い場所なので、ドアを閉める、収納を使う、柵を設けるといった対策が有効です。

加えて、犬がリラックスできる生活環境を整えることも、よだれのコントロールに役立ちます。留守番が長い場合は、お気に入りのおもちゃや安心できる寝床を用意し、決まった時間に運動や遊びを取り入れて生活のリズムを作ることが、不安の軽減につながります。

よだれは早めの対処が重要

愛犬のよだれは、体の中で起きている異常を教えてくれる大切なサインです。早く気づいて行動すれば、それだけで命を守れることもあります。特に、毎日一緒に暮らしているからこそ、ちょっとした変化に気づけるのはご家族だけ。「変かな?」と思ったら迷わず病院に相談してみましょう。よだれの変化を見逃さず、少しだけ気を配って、健やかな日々を愛犬と一緒に楽しんでください。

【執筆・監修】
原田 瑠菜
獣医師、ライター。大学卒業後、畜産系組合に入職し乳牛の診療に携わる。その後は動物病院で犬や猫を中心とした診療業務に従事。現在は動物病院で働く傍ら、ライターとしてペット系記事を中心に執筆や監修をおこなっている。

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