2024年4月17日

犬がかかりやすい病気は?ワンコを迎えたら知っておきたい犬の病気のお話【獣医師監修】

犬の体の不調には、言葉が話せない犬の代わりに飼い主が気づいて動物病院に連れていくなどの対応をする 必要があります。しかし、病気のサインに気づかないうちにひどくなってしまったということも少なくありません。
 
この記事では、犬によく起こる病気とそれぞれの症状や治療法について、またすべての飼い主が知っておくべき犬フィラリア症とダニやノミの予防法、さらに飼い主ができる犬の健康のチェックポイントをご紹介します。愛犬の健康のために、ぜひ参考にしてみてください。
 

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動物病院で受診が多い犬の病気一覧

犬が動物病院にやってくる理由として比較的多いのが以下の5つの病気です。

■皮膚の病気
■外耳炎
■胃腸炎
■ケンネルコフ
■角膜潰瘍(かくまくかいよう)

なかでも「皮膚の病気」がもっとも多く、来院した理由の半数以上を占めます。それぞれの病気でどんな症状がみられるのか、詳しく解説していきましょう。

皮膚の病気

皮膚の異常には、かゆみやフケ、ポツポツとした湿疹(しっしん)、かさぶた、皮膚に赤みが出る発赤(ほっせき)、地図上に赤い部分が広がる蕁麻疹(じんましん)などがあります。最初の症状に気づかないと、ひどくなって出血したり、細菌が感染して膿(うみ)が出てしまうこともあります。犬の皮膚の病気で代表的なものをみていきましょう。

膿皮症(のうひしょう)

ブドウ球菌などの細菌の感染により皮膚にかさぶたや湿疹がみられます。強いかゆみを引き起こすことが多い皮膚の病気です。

アトピー性皮膚炎

特に3歳以下の若い犬に多く、最近増えてきている病気のひとつです。アトピーの発症には、ダニ、ノミといった寄生虫や花粉、食べ物など、いくつかの要因が関わっているため、原因を特定するのは難しいといわれています。そのため完治しにくく、一生涯に渡って症状をコントロールしていく必要があります。アトピー性皮膚炎では、顔面や指の間、わきの下などが赤くなったり、かゆくなったりします。

アレルギー性皮膚炎

ノミや食べ物など、特定の原因によって起こる皮膚炎です。食物アレルギーは、1歳未満の犬に発症することが多く、目、耳、鼻の周りや背中、足先にかゆみが出ます。動物病院でアレルギーを起こす食材を特定し、その食材を省いた食事(除去食)を与えます。食物アレルギーを疑ったら動物病院を受診し、自己流で食べ物の除去をしないようにしましょう。

脂漏症(しろうしょう)

犬の体全体にフケが付きます。白く細かい乾いたフケが付く場合と、黄色くて脂っぽいフケがつく場合があります。

皮膚糸状菌症(ひふしじょうきんしょう)

小胞子菌という細菌が感染して、円形の脱毛やフケ、赤いかさぶた状の模様ができます。皮膚糸状菌症は、一緒に住んでいる動物や人にもうつるので注意が必要です。人でもかゆみやフケ、かさぶたの形成といった症状が出ます。

皮膚の病気の治療法

犬の皮膚病は、まず検査で原因を特定して飲み薬や塗り薬、注射で治療し、かゆみは抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬でコントロールします。予防には、シャンプーや薬浴でのスキンケアなどが効果的です。

外耳炎(がいじえん)

外耳炎は、外耳(耳の穴から鼓膜まで)が腫れたり、かゆみを起こしたりする病気です。外耳炎の原因には、耳の中で細菌やマラセチア(カビの一種)が増えたり、アレルギー性皮膚炎で耳にかゆみがでているといったものがあります。

ミニチュアダックスフンドのように耳が垂れた犬種や、トイプードル、テリアのように細かい毛が密に生えている犬種では、耳の中に湿気がこもりやすいため、雑菌が増えて治りにくいといった特徴があります。

外耳炎の症状

●耳を気にして足でひっかく
●頭を何度も振る
●頭を斜めにしている
●地面に耳をこすりつける

マラセチアが原因の外耳炎では、耳の中が酸っぱい独特な匂いがして、茶色い耳垢がつきます

外耳炎の治療法

細菌やカビを殺す薬を耳に塗ったり、かゆみ止めを飲んだりして治療します。

胃腸炎(いちょうえん)

どの年齢の犬にも多い病気です。ウイルス感染やストレス、不適切な食事など原因がはっきりしていることもあれば、特に原因が見つからないこともあります。

胃腸炎の症状

●嘔吐
●下痢
●食欲不振

胃腸炎の治療法

軽度な胃腸炎では、胃腸を整える薬や食事量のコントロールで治していきます。何度も下痢や嘔吐を繰り返しているようなときは、抗生剤の投与や点滴をすることもあります。

▶参考:犬が嘔吐する原因は?自宅で様子見か病院を受診するべきか目安を解説【獣医師監修】

ケンネルコフ(伝染性気管支炎)

ケンネルコフは、ワクチン接種をする前の子犬やシニア犬など免疫力や抵抗力の弱い犬に発生します。細菌や、ウイルスなどに感染することが原因です。

ケンネルコフの症状

人の風邪のように、咳や発熱、鼻水といった症状が見られ、一緒に生まれた子犬が次々とかかってしまうこともあります。1つの細菌やウイルスが原因なら軽症ですみますが、複数の病原体に一緒に感染すると重症になり、肺炎を起こし死んでしまうこともあります。

ケンネルコフの治療法

症状に応じて咳止めや炎症を抑える薬を服用します。

角膜潰瘍(かくまくかいよう)

角膜潰瘍は、犬の目の病気のなかで比較的よく発生する病気です。 逆さまつげやドライアイなど、ほかの目の病気に続いて起こることもあれば、目のケガや、体質の影響で発症することもあります。シーズーやチワワなど、目が出ている犬に多いです。

角膜潰瘍の症状

●白目が充血している
●目を気にしてこする
●まぶしそうに目を細めている
●目をあけられなくなる

角膜潰瘍の治療法

目をひっかかないように、エリザベルカラーを付け、抗生剤や角膜保護の目薬をします。悪くなると黒目が濁ったり、黒目を覆っている角膜に穴があいてしまうこともあるので、できるだけ早く治療が必要です。

犬の異常に早く気づくための健康チェックポイント

今回紹介した、犬によく起こる病気に早く気づくため、皮膚、耳、目のチェックポイントをご紹介します。

皮膚の異常のチェック

犬は、毛のせいで皮膚の異常がなかなか見つけにくいかもしれません。そのため、普段から犬をよく観察し、スキンシップをたくさんとって、下にあげたようなトラブルがないか全身をくまなく定期的にチェックしてあげてください。

□体をかゆがっているそぶりはないか
□しこりやおできのような塊はないか
□皮膚のベタつきはないか
□かさぶたはないか
□フケはついていないか
□脱毛はないか

耳の異常のチェック

耳が垂れた犬は、耳をめくって耳垢が付いていないか覗いてみましょう。においも確認してみてください。

目の異常のチェック

目の異常は、両目が同時に起こることは少ないので、まずは両目を比べてみてください。

□白目の充血
□目やに
□涙が多く出てウルウルしている
□黒目が濁っている
□まぶたにできものがある

といったトラブルがないかを確認しましょう。

続いて、犬を迎えたら知っておかなくてはならない、予防が特に大切な病気についてみていきましょう。

【予防が大事な犬の病気①】犬フィラリア症について

ひとつめは、犬フィラリア症です。予防薬を確実に投与し、犬フィラリア症に感染させないことが重要です。

犬フィラリア症とは

犬フィラリア症は、犬の心臓や肺動脈にフィラリアという細長い虫の成虫が住みつくことで起こります。フィラリア成虫は大きいものは30cm以上になり、重症のケースでは1匹の犬に何百匹も寄生することがあり、死にいたってしまうこともある、おそろしい病気です。

蚊の吸血でうつっていく

犬フィラリア症は、蚊を介してうつっていきます。フィラリア症に感染した犬の血を吸った蚊が別の犬を吸血するときにフィラリアの子虫が体内に入ります。フィラリア子虫は成長しながら体内を移動し、犬の心臓や肺に住みついて血流を悪くしたり臓器の機能を弱めたりします。

犬フィラリア症の症状

最初は、咳が出ることが多いようです。軽いうちは、動きたがらない、痩せる、呼吸が早く浅くなるといった症状が見られます。ひどくなってくると、運動の後に気を失ったり、血尿が出たり、貧血になるといった症状が出てきます。

また、体の中のどこにフィラリアが住むかによって死亡率は変わります。フィラリアのせいで血流が悪くなって数日で死んでしまうこともあれば、フィラリアにかかっても長生きしている犬もいます。

犬フィラリア症の予防法

フィラリアの予防は、毎年、蚊が発生しはじめる初夏から冬にかけて毎月1回薬を飲ませるのが一般的です。しかし近年は、温暖化の影響で薬を飲み始める時期が少しずつ早くなっており、病院によっては春先からの投与を推奨しています。

薬は、動物病院で処方してもらいましょう。薬をもらう前には、犬が今の段階でフィラリア症に感染していないかを血液検査で調べます。もらった薬は、確実に最後の1錠まで飲ませてください。

犬フィラリア症の治療法

もしも犬がフィラリア症にかかっていると診断された場合、駆虫薬を飲ませると体内で死んだ虫が血管の中に詰まってしまい症状が悪くなったり、強いアレルギー症状を起こすことがあります。そのため、フィラリアがどこにどのくらい寄生しているかを検査したあと、手術で虫を取り出すこともあります。

【予防が大事な犬の病気②】ノミ・ダニなどの寄生虫

予防が大事なふたつめの犬の病気がノミやダニに関する病気です。ノミやダニは普段は屋外や草むらに生息しており、散歩中の犬の体にくっついたり、人の靴などにくっついて室内に運ばれます。

ノミは、成虫にならないと犬に寄生しないため、それまではカーペットやソファなどに隠れて成長していきます。一方、ダニは幼ダニのうちから犬に寄生して吸血します。

犬の体に寄生すると、かゆみやアレルギー症状を起こしたり、寄生虫の卵を体内に持つノミやダニが吸血することでほかの犬に広がっていく病気もあります。特に子犬や小型犬は、たくさん吸血されることで貧血になることもあるので注意が必要です。

ノミ・ダニの症状

下にあげるような症状がある場合は、ノミやダニが寄生していることが考えらるので、病院で先生にみてもらうとよいでしょう。

●しきりに体をかいている
●地面に体をこすりつける
●毛の根元のあたりに黒い砂粒のようなフンがたくさんついている
●脱毛やポツポツした赤い発疹がある

手でつぶすのはNG!

もしも犬にノミやダニがくっついているのを見つけても、手でつぶすのは絶対にやめてください。ノミやダニの体内にある卵が飛び散り、また犬にくっついてしまう可能性があるからです。

また、ダニは口にあるとげのようなもの(口器)を犬の皮膚に差し込んで血を吸うため、無理やりダニを取ろうとすると口器だけが犬の体の中に残ってアレルギー反応を起こすことがあります。マダニが犬についているのを見つけたら、そのまま動物病院に連れていきましょう。

ノミ・ダニ対策は家の中で増やさせないことが大切

ダニやノミを完全に家に入れないようにするのはなかなか難しいことです。そのため、持ち帰ってしまったとしても、家の中で増やさないこと、また犬に寄生させないことが重要です。

■家の中でダニやノミを増やさない
・室内の掃除をこまめに行う
・ソファーやクッションは手入れしやすい素材を選び、こまめに洗う
・燻煙材を使用する

■犬に寄生させない
・ブラッシングをして犬の体からノミやダニを落とす
・予防薬を使う

予防薬には、内服する錠剤やチュアブルタイプ、皮膚に垂らすスポットタイプ、スプレータイプがあります。動物病院で取り扱っているので、獣医師に相談しましょう。

ノミ取り首輪は皮膚炎を引き起こすケースも

市販されているノミ取り首輪は、首輪に含まれた成分によってかゆみや脱毛などの皮膚炎を引き起こす犬もいます。動物病院でもらった予防薬を使うようにしましょう。

まとめ

この記事では、犬によく見られる病気として、膿皮症を始めとした皮膚の病気、外耳炎、胃腸炎、角膜潰瘍を取り上げ、症状や治療方法について解説しました。特に犬フィラリア症とノミやダニの寄生は、予防が肝心です。獣医師に相談のうえ、愛犬に合った方法で確実に予防しましょう。

 

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【執筆・監修】
獣医師:安家 望美
大学卒業後、公務員の獣医師として家畜防疫関連の機関に入職。家畜の健康管理や伝染病の検査などの業務に従事。育児に専念するため退職し、現在はライターとしてペットや育児に関する記事を執筆する。

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