
愛犬が「グーグー」「フガッ」と苦しそうな呼吸…これって病気かなと不安に感じたことはありませんか?実はその症状、“逆くしゃみ”かもしれません。この記事では、逆くしゃみの正しい見分け方から原因、自宅でできるケア、病院へ行くべきサインまで詳しく解説します。
「逆くしゃみ」とは?くしゃみとの見分け方

犬の「逆くしゃみ」とは、通常のくしゃみとは異なり、息を激しく吸い込む反射の一種です。その名の通り「吸う」動作であり、吐く「くしゃみ」とは明確な違いがあります。特に小型犬や短頭種(パグ、フレンチブルドッグなど)に多く見られ、「グーグー」や「フガッ」といった音を出しながら頭を突き出すような動作がみられます。多くの場合は数秒から1分以内に自然と収まり、治療が必要なケースは少ないです。
逆くしゃみが起きる原因

犬の逆くしゃみの多くは、命に関わらない生理的な現象です。一般的には、鼻や喉の粘膜が刺激されることで吸気反射が起き、逆くしゃみが生じるとされています。ただしその原因は様々なため、背景を正しく理解することが大切です。
興奮や運動直後による刺激
逆くしゃみは、散歩や遊びなどで興奮状態になった直後によく見られます。これは呼吸が乱れたり、気道や喉に刺激が加わったりすることで起こりやすくなります。特に首輪を使用している場合は喉の圧迫により、逆くしゃみが生じやすいため注意が必要です。
アレルギー症状(花粉・ハウスダストなど)

空気中の花粉やハウスダスト、ダニ、カビ、強い香料なども、逆くしゃみの引き金になることがあります。これらが鼻や喉の粘膜に付着し、鼻咽頭(鼻の奥)で炎症や過敏反応が生じて逆くしゃみが起こります。アレルギー体質の犬は皮膚のかゆみ、涙目、鼻水なども伴うことがあり、全身の観察が重要です。
鼻や喉への異物の刺激
散歩中に草の種や枝、室内では埃や小さなゴミを鼻から吸い込み、逆くしゃみが起こる場合もあります。異物が排出されれば自然と治まりますが、取り切れずに残っている場合は粘膜に慢性的な刺激が加わり、逆くしゃみが頻発してしまいます。鼻を床に擦りつけるような仕草を見せたり、くしゃみも併発している場合は特に注意が必要です。
呼吸器・心疾患の場合も
逆くしゃみに見える症状の中には、実際には気管や鼻腔、あるいは心臓の疾患のケースも存在します。気管虚脱は、気管の軟骨が潰れることで空気の通り道が狭くなる病気です。
また、逆くしゃみだと思っていたら実は心疾患による「咳」の症状だったということも。特に中高齢犬で急にこのような症状が現れた場合は単なる逆くしゃみと考えず、病院での診察をおすすめします。
動物病院へ行くべき要注意サイン

逆くしゃみが一時的であれば心配はいりませんが、なかには病気のサインの場合もあります。以下のような症状が見られるときは、特に注意が必要です。
毎日/長時間続く
逆くしゃみを毎日のように繰り返したり、1回あたり1分以上続く場合は病院で詳しい検査が必要です。通常、逆くしゃみは数秒から1分以内に自然に収まるものです。それ以上続く場合は、鼻炎や気管支の炎症、異物の混入、アレルギー性疾患など病気が原因の可能性があります。
呼吸が荒い、歯茎が白い
逆くしゃみの後に呼吸が荒い・速い状態が続いたり、歯茎や舌が白く(または紫がかって)見える場合は、すぐに動物病院に連れて行ってください。これは体内の酸素不足を示す非常に危険な兆候です。特に重度の気管虚脱や心疾患では、呼吸がうまくできずこのような状態に陥ることがあります。命に関わる病気の可能性もあるため、緊急の対応が必要です。
鼻水・咳もある

逆くしゃみだけでなく、鼻水や咳も同時に見られる場合には、呼吸器・心疾患の可能性があります。放置すると悪化してしまう慢性疾患の場合は特に早期発見が重要なため、自己判断せず、速やかに診察を受けましょう。
高齢になって急にひどくなった
これまで逆くしゃみの頻度が少なかった愛犬が、高齢になってから急に繰り返すようになった場合は、加齢によるものだけでなく、重要な心臓・呼吸器疾患が関係している可能性があります。若い頃の逆くしゃみと同じだと自己判断せず、動物病院で検査を受けましょう。高齢犬では、単なる逆くしゃみと思い込むことが重大な疾患の見逃しにつながることもあるため、要注意です。
逆くしゃみが起きたときの対処法

逆くしゃみが起きたときは、まず飼い主が落ち着くことが大切です。慌てて過度に触ったり刺激を与えたりすると、犬がさらに興奮して症状が悪化することがあります。まずは優しく喉元を撫でてあげたり、鼻先を軽く覆って飲み込む動作を促すことで、発作が和らぐことがあります。
また、優しい声をかけて安心させるのも有効です。無理に口を開けたり強く押さえつけるのは絶対にNGです。逆くしゃみが長引いたり頻発する場合は、動画を撮ったり記録を取って早めに動物病院で相談しましょう。
自宅でできるケアと予防方法

軽度な逆くしゃみの多くは無害ですが、生活環境を見直すことで軽減できるケースもあります。試しやすい方法から実践してみましょう。
普段からハーネスを使用する
首輪を使っている方は、ハーネスに切り替えるのがおすすめです。首輪は散歩中の引っ張りや急な動きで気管を圧迫し、喉への刺激を引き起こす可能性があります。とくに小型犬や短頭種は気道が狭く、逆くしゃみだけでなく首を痛める原因にも。ハーネスを使えば、喉や首元への負担を軽減できるので、安心です。
空気清浄や湿度管理を行う

空気清浄機や加湿器を使って室内の空気環境を整えることも効果的です。花粉やハウスダストが舞いやすい環境では、鼻や喉の粘膜が刺激され、発作の頻度が増えやすくなります。
湿度は50〜60%を目安に保ち、粘膜の乾きを防ぐことで呼吸器への刺激も軽減されます。また、香水やアロマなどの強い香りも避けるとよいでしょう。
逆くしゃみの記録をとる
逆くしゃみが頻繁に起こる場合、症状の記録を取ることがとても重要です。日時、発生時の状況(散歩後・食後・室内での活動など)、時間、頻度をメモしておくことで、病院での診察に役立ちます。可能であれば動画を撮影しておき獣医師に見せると、生理的な逆くしゃみとほかの病気との区別がしやすくなるため、おすすめです。
定期的な健康チェックを欠かさずに
逆くしゃみに関わらず、普段から定期的な健康診断を受けることも大切です。呼吸音や心音の異常は一般の方では判断しにくく、早期の病気発見には専門機関による診察が必要です。
特に中高齢の犬や、心臓・呼吸器に持病を持つ犬は、半年〜1年ごとに健康診断を受けることが理想的です。日頃から健康状態をチェックしておくことで、異常があった際にすぐ対応できます。
逆くしゃみを正しく理解しよう
犬の逆くしゃみは、一見すると苦しそうに見えるため、不安になる飼い主は多いもの。多くの場合は過剰に心配する必要はありませんが、時には重大な病気の場合もあるため、様子をみてもよいものなのか、病的なものなのかを確認する必要があります。
逆くしゃみの原因を事前に把握しておき、迷ったときは迷わず動物病院を受診することが何よりも大切です。逆くしゃみを正しく理解し、愛犬との健やかな生活をサポートしてあげてくださいね。
【執筆・監修】
原田 瑠菜
獣医師、ライター。大学卒業後、畜産系組合に入職し乳牛の診療に携わる。その後は動物病院で犬や猫を中心とした診療業務に従事。現在は動物病院で働く傍ら、ライターとしてペット系記事を中心に執筆や監修をおこなっている。















