
愛犬のくるくる回る姿を「楽しいのかな?」「何か異常があるのでは…?」と疑問に思ったことはありませんか。犬が回る行動には嬉しさや興奮といった理由もあれば、病気やストレスといった注意すべきサインが隠れていることもあります。この記事では、犬がくるくる回る理由から注意するべきポイント、対処法までわかりやすく解説します。行動の意味を正しく理解し、愛犬にとって安全で快適な生活をサポートしてあげましょう。
犬がくるくる回る行動とは?

犬がくるくる回る行動として、しっぽを追いかける、同じ場所をぐるぐる歩き続ける、寝床の前で回転するなどの行動が挙げられます。一見かわいらしい仕草でも注意が必要な場合があるため、状況や頻度、体調の変化もあわせて判断することが大切です。
犬がくるくると回る理由

犬がくるくる回る行動には、さまざまな理由が考えられます。犬にとっては本能や感情の表れの場合も多く、必ずしも異常とは限りません。
嬉しい・遊び・寝床づくりなど
犬がくるくる回るのは、嬉しいときの感情表現のひとつです。飼い主の帰宅や散歩前など、興奮や喜びを感じたときによく見られます。また、寝床を整えるように回ることは野生時代の名残で、草を踏みならして安全な場所を確保していた習性の表れです。これらの行動が短時間で穏やかであれば、特に問題視する必要はありません。
トイレ前の習慣

トイレの前をくるくる回るのは、排泄時に安心できる場所や体勢を探しているためとされています。この場合も生理的な行動のため、頻度や回数が急激に変わらなければ基本的に心配はいりません。
ストレスによる異常行動
くるくる回る行動が長時間続いたり、日常的に頻繁に見られるようであれば、ストレスや不安による「常同行動(じょうどうこうどう)」の可能性が考えられます。常同行動とは、精神的に不安定な状態で現れる反復的な動きで、退屈、運動不足、環境の変化などが引き金になることがあります。特に、狭い場所で長時間過ごしている、刺激の少ない生活を送っている場合に見られやすいとされています。
不快感や病気の可能性も
くるくる回る行動には、身体に不快感が隠れていることもあります。皮膚炎や肛門腺のトラブルでお尻を気にしている場合や、耳の違和感、痛み、関節の異常などが原因になっている可能性もあります。このような場合は動きに違和感があったり、他の症状(掻く、鳴く、足を引きずるなど)を伴うことが多いため、思い当たる場合は早めの受診が大切です。
病気が原因でくるくる回る場合とは

くるくる回る行動を何度も繰り返したり、執拗な場合には、身体の不調や病気が隠れている可能性があるため注意が必要です。
肛門周りの不快感やかゆみ
しきりにお尻を地面にこすりつけたり、くるくる回る場合は、肛門腺がたまっていたり、炎症を起こしている可能性があります。肛門腺は犬の肛門付近にある分泌腺で、排泄時に匂いを出す器官ですが、分泌物がたまりすぎると違和感やかゆみを引き起こします。特に小型犬やシニア犬に多く見られ、放置すると肛門腺破裂や感染のリスクがあるため、定期的なケアが大切です。
脳疾患や前庭疾患などの神経疾患

くるくる回る行動が片方向に偏っていたり、バランスを崩してよろめくような場合、脳や神経の異常が疑われます。代表的なものに「前庭疾患」があり、平衡感覚をつかさどる神経が障害を受けることで生じます。シニア犬に多く見られ、急に片側に傾いたまま回る、目が左右に動く(眼振)といった症状を伴うことがあります。また、脳腫瘍や脳炎などでも同様の行動が見られるため、早期診断が重要です。
内臓疾患が原因の神経症状のことも
見落とされがちですが、肝臓や腎臓などの内臓疾患が神経症状を引き起こし、くるくる回る行動につながるケースもあります。たとえば、肝臓の機能不全でアンモニアが体内に蓄積し「肝性脳症」と呼ばれる状態になると、神経症状として旋回行動が現れることがあります。これは命に関わる状態で、食欲不振や元気消失などの他の体調不良と併せて現れることも多く、注意が必要です。
くるくる回った場合の対処法

くるくる回る行動が現れた際、生理的なものか病気によるものかを見極めることはとても重要です。また、安全面の配慮や病院を受診するポイントも押さえておく必要があります。
回る状況を観察・記録しておく
愛犬が回る様子を見たとき、まずは落ち着いて観察し、正確に記録することが重要です。回る時間、方向、回数、直前の行動、その他の体調変化(吐く、フラつく、食欲の有無など)をチェックしましょう。可能であればスマートフォンで動画を撮影しておくと、動物病院での診察時にとても役立ちます。症状が断続的に起こるケースでは、目の前で症状が確認できないことも多いため、記録しておくことで大きなヒントになります。
周囲の安全確保を行う

次に大切なのは、犬が回っている場所を安全に整えることです。くるくる回る行動は、勢いがついて家具や壁にぶつかる危険性があります。特にシニア犬や視力・バランス感覚が低下している犬では、重大なケガにつながる恐れがあるため、滑り止めマットの設置、家具の角の保護、広いスペースの確保を行い、物理的な危険を減らしましょう。
病院を受診すべきサインとは
くるくる回る行動が頻繁に起こる、あるいは明らかに異常な様子がある場合は、すぐに動物病院を受診しましょう。「片側に偏って回る」「バランスを崩す」「ふらつく」「目が揺れている(眼振)」などの神経症状を伴う場合は特に危険サインです。また、食欲低下、嘔吐、排泄異常、無反応といった他の体調不良とセットで見られるときも深刻な病気の可能性があります。記録や写真、動画を持参して診察を受けるとより安心です。
シニア犬がくるくる回るときに気をつけること

高齢の犬がくるくる回る場合、若い犬とは異なる原因が隠れていることがあります。とくに加齢によって起こる「認知機能の低下」は、徘徊や旋回行動として現れることが多く、適切なケアが求められます。
きつく叱るのはNG
シニア犬が回る行動は、認知症(認知機能不全症候群)の兆候の可能性があります。犬自身も自覚がなく、不安や混乱している可能性があるため、強く叱るのはNGです。大切なのは、叱るよりも安心できる環境と見守りです。獣医師に相談して、必要に応じて動物病院でのサポートを受けましょう。
マット・クッションで怪我防止
シニア犬は、筋力や関節の衰えにより、ちょっとした転倒でも骨折や捻挫を起こすリスクがあります。回り続ける中で、家具にぶつかる、足を滑らせるといった事故も少なくありません。そのため滑りにくいマットや柔らかいクッションを活用するなど、怪我しにくい環境づくりが大切です。段差にはスロープを設け、ベッド周辺にも衝撃吸収素材を配置するなど、生活環境の見直しが犬の安心感にもつながります。
行動範囲の制限で改善することも

夜間や無目的な旋回が続く場合は、行動範囲を適度に制限することで落ち着く場合もあります。特に認知症が進行している犬では、広い空間では方向感覚を失いやすく、迷いや混乱から同じ場所を回り続けるケースが見られます。サークルやベビーゲートなどを使って安全な行動スペースを確保することで犬も安心感が増し、徘徊や旋回が落ち着くことがあります。安心して過ごせるよう工夫することも有効です。
くるくる回る理由を理解して正しく対応を
犬がくるくる回るのは、決して一つの理由だけの行動ではありません。喜びや本能による正常な行動から、ストレス、病気、老化など、複数の要因が複雑に絡み合っている場合の行動が多いです。大切なのは、「うちの子はなぜ回っているのかな?」という視点を持ち、体と心のサインを正しく読み取ること。日常の小さな変化に気づき、必要なときには専門家に頼ることで、愛犬とのより良い関係を築いていくことができます。
【執筆・監修】
原田 瑠菜
獣医師、ライター。大学卒業後、畜産系組合に入職し乳牛の診療に携わる。その後は動物病院で犬や猫を中心とした診療業務に従事。現在は動物病院で働く傍ら、ライターとしてペット系記事を中心に執筆や監修をおこなっている。















