
愛犬との毎日の散歩、楽しんでいますか?しかし、天候が悪かったり、飼い主さんの体調がすぐれなかったり、忙しくてどうしても時間が取れなかったりすると、「今日くらいはいいかな…」と思ってしまうことがあるかもしれません。しかし、その「一日」が積み重なると、愛犬の心と体にさまざまな影響を及ぼす可能性があります。
この記事では、犬にとって散歩がいかに重要であるか、そして散歩をしないことでどのようなリスクがあるのかを解説します。どうしても散歩に行けない日のための対処法もご紹介しますので、愛犬との健やかな毎日のためにぜひ参考にしてください。
犬の散歩はなぜ重要?5つの役割

犬にとって散歩は、単なる運動や排泄の時間ではありません。心と体の健康を維持し、犬らしく生きるために不可欠な多くの役割を担っています。
運動不足の解消と健康維持
犬の祖先は広大な自然を駆け巡っていたオオカミであり、その血を引く犬たちには十分な運動量が必要です。散歩は最も手軽で効果的な運動であり、肥満の予防、筋力や関節の強化、心肺機能の向上につながります。定期的な運動は、糖尿病や心臓病などの生活習慣病のリスクを減らし、愛犬の健康寿命を延ばす鍵となるのです。
ストレスの発散と精神的な安定

一日中家の中で過ごすことは、犬にとって大きなストレスとなり得ます。散歩で外に出て、太陽の光を浴び、さまざまな景色を見ながら新しいにおいを嗅ぐことは、犬にとって最高の気分転換です。このような刺激は、ストレスを減少させ、精神的な安定をもたらします。ストレスが解消されることは、無駄吠えや破壊行動などの問題行動の予防にもつながります。
社会性を身につけるための貴重な機会
散歩は、ほかの犬や人、車やいろいろな音など、社会環境を学ぶための絶好の機会です。特に子犬の時期からさまざまな刺激に触れることで、外の環境に慣れ、過剰な警戒心や恐怖心を持つことなく、穏やかな性格を育むことができます。社会性が身につくことで、ほかの犬とのトラブルを避け、どこにでも安心して連れて行けるパートナーになるのです。
飼い主との絆を深めるコミュニケーション

散歩は、飼い主と愛犬が共有する特別な時間です。リードを通して互いの呼吸を感じ、時には立ち止まってにおいを嗅いだり、一緒に走ったりすることで、言葉を超えたコミュニケーションが生まれます。この時間は、犬にとって飼い主からの愛情を感じる大切なひとときであり、信頼関係をより一層深めることにつながります。
五感への刺激と脳の活性化
散歩道は、犬にとって情報の宝庫です。地面に残されたほかの犬のにおいを嗅ぐことは、犬にとって「SNS」のようなもので、さまざまな情報を得ています。視覚、聴覚、嗅覚といった五感をフルに使うことは、脳に良い刺激を与え、活性化させます。特にシニア犬にとっては、認知機能の低下を防ぐ効果も期待できます。
犬を散歩しないとどうなる?起こりうる心身の5つのリスク

散歩を怠ることは、私たちが思う以上に犬の心身に深刻な影響を与えます。ここでは、散歩不足によって引き起こされる具体的なリスクについて解説します。
リスク1:肥満や生活習慣病のリスクが高まる
散歩に行かないことによる最もわかりやすい影響は、運動不足による肥満です。消費カロリーが摂取カロリーを上回らない状態が続くと、体重は増加します。肥満は、関節への過度な負担による関節炎、心臓病、糖尿病、呼吸器疾患など、さまざまな生活習慣病の引き金となってしまいます。
| 犬種分類 | 1日に必要な散歩時間の目安 |
|---|---|
| 超小型犬・小型犬 | 1回30分を1日2回 |
| 中型犬 | 1回60分程度を1日2回 |
| 大型犬 | 1回80分~120分を1日2回 |
※上記はあくまで一般的な目安です。犬の年齢、犬種、健康状態によって適切な運動量は異なります。
リスク2:筋力や体力が著しく低下する
人間と同じように、犬も歩かなければ筋力はどんどん衰えていきます。筋肉は体を支え、関節を守る重要な役割を担っています。筋力が低下すると、膝蓋骨脱臼などの持病が悪化したり、わずかな段差でつまずいてケガをしやすくなったりします。一度落ちてしまった筋力を取り戻すには、多くの時間と努力が必要になります。
リスク3:ストレスから問題行動が増加する
有り余るエネルギーと外に出たい欲求が満たされないと、犬は大きなストレスを抱えます。このストレスは、さまざまな問題行動として現れます。たとえば、無駄吠えが増える、家具や物を破壊する、自分の手足を執拗に舐め続ける(肢端舐性皮膚炎)、飼い主に対して攻撃的になるといった行動です。これらは、犬からのSOSサインであり、決して無視してはいけません。
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リスク4:社会性が育たずほかの犬や人を怖がるようになる
外の世界のさまざまな刺激に触れる機会がないと、犬は社会性を身につけることができません。その結果、ほかの犬や見知らぬ人に対して過剰な恐怖心を抱き、威嚇したり、パニックになったりすることがあります。
また、車の音や雷などの大きな音に極度に怯えるようになることもあります。社会性が不足していると、犬自身が大きなストレスを感じながら生活することになってしまうのです。
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リスク5:寿命が短くなる可能性も指摘されている
散歩をしないことが犬の寿命に与える影響について、科学的研究により直接的な関係が確認されています。東京農工大学の疫学的解析によると、毎日散歩をする犬は散歩をしない犬に比べて長寿であるオッズ比が3.21と有意に高いことが判明しています。
参考:東京農工大学農学部獣医学科家畜衛生学研究室|犬と猫における長寿に関わる要因の疫学的解析
犬が散歩に行きたがらないときに考えられる理由

いつもは散歩が大好きな愛犬が散歩を嫌がる場合、そこには何らかの理由が隠れています。無理に連れて行くのではなく、まずはその原因を探ってあげることが大切です。
体調不良やどこかに痛みがある
散歩を嫌がる最も一般的な理由のひとつが、体の不調です。関節炎や椎間板ヘルニアなどで足腰に痛みがある、ケガをしている、あるいは内臓疾患によってだるさを感じているのかもしれません。
いつもと歩き方が違う、食欲がないなど、ほかに変わった様子がないか注意深く観察し、必要であれば動物病院を受診しましょう。
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過去の経験によるトラウマや恐怖心
たとえば、ほかの犬に吠えられた、大きな音に驚いた、交通事故に遭いそうになったなど散歩中に怖い経験をしたことがトラウマになっている可能性もあります。特定の場所や時間帯を嫌がる場合は、その時の記憶が蘇っているのかもしれません。まずは散歩コースを変えるなど、犬が安心できる環境を整えてあげることが重要です。
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首輪やハーネスへの不快感

首輪やハーネスのサイズが合っていなかったり、素材が擦れて痛みを感じたりしている場合も、散歩を嫌がる原因になります。装着する際に嫌がるそぶりを見せていないか確認し、愛犬の体に合った、負担の少ないものを選んであげましょう。初めて装着する場合は、室内で慣らす練習から始めるのがおすすめです。
老化による体力的な問題
シニア犬になると、若い頃と同じような長時間の散歩は体力的にきつくなります。疲れやすくなったり、関節に痛みを感じたりすることで、散歩に行きたがらなくなることがあります。1回の散歩時間を短くして回数を増やす、歩くペースをゆっくりにする、カートを利用するなど、愛犬の体力に合わせた散歩プランに見直してあげましょう。
毎日散歩に行けない時の運動不足解消法

悪天候や飼い主の都合でどうしても散歩に行けない日もあります。そんなときでも、工夫次第で愛犬の運動不足やストレスを解消してあげることは可能です。
室内での遊びで運動を補う
室内でも十分に楽しめる遊びはたくさんあります。ボールやおもちゃを使った遊びは、走る・持ってくるという動作を繰り返す良い運動になります。また、飼い主と犬が引っ張り合う綱引きも、全身の筋肉を使う遊びです。
ただし、犬を興奮させすぎないように、必ず飼い主の合図で遊びを終えるようにしましょう。
知育おもちゃで脳に刺激を与える

体を動かすだけでなく、頭を使わせることも大切です。おやつを隠して探させるノーズワークや、パズル型の知育トイは、犬の嗅覚や思考力を刺激し、集中力を高めます。これらは犬の本能的な欲求を満たし、大きな満足感を与えることができるため、ストレス解消に非常に効果的です。
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ベランダや庭で外気浴をさせる
たとえ歩き回れなくても、外の空気に触れ、日光を浴びることは良い気分転換になります。ベランダや庭に出て、外のにおいを嗅いだり、音を聞いたりするだけでも、犬にとっては良い刺激です。安全が確保できる範囲で、短い時間でも外に出してあげることをお勧めします。
ドッグランを有効活用する
週末など時間に余裕があるときには、ドッグランを利用するのもひとつの手です。リードを外して思い切り走り回れるドッグランは、運動不足の解消に最適です。ほかの犬と触れ合うことで、社会性を養う機会にもなります。
ただし、ほかの犬との相性やドッグランのルールには十分に注意しましょう。
犬の散歩に関するよくある質問

ここでは、犬の散歩について飼い主さんが抱く疑問にお答えします。
Q.散歩は1日に何回、何分が目安ですか?
犬種や年齢、体格によって必要な運動量は異なりますが、一般的には1日2回が理想とされています。時間の目安として、小型犬なら1回30分、中型犬は60分程度、大型犬は80~120分程度です。ただし、これはあくまで目安であり、愛犬の様子を見ながら調整してあげることが最も大切です。疲れているようなら短めに、まだまだ遊びたそうであれば長めにするなど、柔軟に対応しましょう。
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Q.雨の日や悪天候の日の散歩はどうすればいいですか?

小雨程度であれば、レインコートを着せるなどして短時間でも外に連れ出してあげると、排泄や気分転換ができてよいでしょう。
しかし、台風や雷、猛暑や極寒など、犬にとって危険が伴う天候の場合は無理に行く必要はありません。その分、室内での遊びを充実させてエネルギーを発散させてあげてください。
Q.散歩が特に必要ない犬種はいますか?
結論から言うと、散歩を全く必要としない犬はいません。チワワのような超小型犬や、愛玩犬として品種改良されてきた犬種は、ほかの犬種に比べて必要な運動量は少ない傾向にありますが、それでも心身の健康のためには散歩が不可欠です。運動量が少なくても、外の世界から受ける刺激は犬にとって重要です。
まとめ
犬にとって散歩は、健康な体を維持し、豊かな心を育むために欠かせない日課です。散歩をしない生活は、肥満や病気のリスクを高めるだけでなく、ストレスによる問題行動や社会性の欠如など、多くの問題を引き起こす可能性があります。
忙しい毎日のなかで散歩の時間を確保するのは大変なこともありますが、愛犬が心から満足し、健康で長生きするためには何よりも大切な時間です。どうしても行けない日は室内での遊びで補いながら、愛犬との散歩を日々の楽しみにしていきましょう。















